徒然なるままに ~ Mikako Husselのブログ

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書評:辻村深月著、『光待つ場所へ』(講談社文庫)

2018年05月16日 | 書評ー小説:作者サ・タ・ナ行

『光待つ場所へ』は、「冷たい光の通学路 I」、「しあわせのこみち」、「アスファルト」、「チハラトーコの物語」、「樹氷の街」、「冷たい光の通学路 II」6作品を収録した短編集。

「冷たい光の通学路 I」と「冷たい光の通学路 II」、「しあわせのこみち」および「アスファルト」は、『冷たい校舎の時は止まる』のスピンオフで、I は誰の話かいまいち不明ですが、II は榊先生が登場します。「しあわせのこみち」は清水あやめの大学2年の時の絵を描くことに関する悩みを描いたもので、高校の時の同級生として鷹野博嗣(たかの ひろし)も登場します。「アスファルト」は藤本昭彦が大学の卒業旅行としてベルリンに行きながら大学時代を回想する話ですが、『冷たい校舎~』に登場する青南学院高校時代も若干言及されます。

「チハラトーコの物語」は『スロウハイツの神様』のスピンオフで、赤羽環が脚本を担当する映画のオーディションを受けたことがあるモデルの千原冬子が主人公の物語です。30歳を目前にして自分の目指すところはどこか、虚構の世界に生き続けるのか、現実との関りを持とうとするのか思い悩みながら過ごす日々が描かれています。

「樹氷の街」は『凍りのクジラ』のスピンオフで、芹沢理帆子(せりざわ りほこ)が亡き父親の縁で一緒に住むことになるピアノの神童・松永郁也が中学生になり、合唱コンクールで伴奏をするお話です。郁也は主人公ではありませんが、主要登場人物です。指揮者の天木、最初にピアノ伴奏者に立候補した倉田梢、彼女の友達、そして倉田を目の敵にする筒井美貴など、数人の合唱コンクールを巡る青春ドラマです。

どの作品も悩み多き青春の一コマを描いており、ほろ苦い共感を想起するようなストーリーです。

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