わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

素朴な疑問 312 陶芸の手順とは29(本焼きの手順9)

2017-11-04 13:30:57 | 素朴な疑問
陶芸に限らず、何事にも手順があります。手順を忘れたり、手順前後の誤りにより、思いも拠らない

結果を招く事は多いです。

6) 窯の温度を下げる(窯を冷やす)。

  窯の温度を下げる行為も、窯焚きと見なされます。即ち、どの様に温度を下げるかによって、

  釉の発色に大きな違いが出るからです。又、窯の冷え方は窯の大きさや壁の厚みにも関係します

  ので、単に消火や炙りだけの問題では無く、窯毎に違いがあります。

 ⅰ) 窯の冷やし方には、急冷と徐冷があります。(以上が前回までの話です。)

 ⅱ) 還元冷却(還元落し)に付いて。

   釉の表面や無釉の焼き締め陶の表面に炭素を混入させ、黒褐色の色に仕上げる方法です。

   炭化焼成とも呼ばれています。電気窯の場合には外部より還元用のガスを注入します。

   a) 炭素成分が素地や釉に入り込む温度は、1100~800℃の冷却時です。温度が高過ぎると

    炭素が燃えてしまい、低過ぎると釉が固まり炭素を吸収しなくなります。この間還元雰囲気

    をを保持していなければ成りません。窯の冷却が進むと、窯中の炎の対流が弱くなり、

    部分的に還元が強くなり、炭素と釉が過剰反応を起こし、釉の表面が「かさつく」場合や、

    「ブク」(表面が泡立こと)が発生する事もあります。緩やかな対流にするには、窯詰の際

    ある程度隙間を設けて置く事です。

   b) 還元用ガスバーナーを使用する場合、バーナー口や色見孔から出てくる炎の色で還元状態

    を判断する事になります。バーナー口より炎が僅かに吹き出る程度が良く、強く吹き出る

    場合には、強過ぎる事になり燃料の無駄になりますし、炎が吸い込まれ状態では、還元作用

    が弱い事になります。空気量を調節し適度の炎にします。

  ⅲ) 冷め割れに注意。

   窯を冷やす時間が急な場合、作品が割れる事があります。特に600~500℃の間に起こり易い

   です。原因は素地中の肉厚の石英が、この温度周辺で結晶構造が変わり、急激に縮むからと

   言われえいます。冷め割れた断面には、釉が掛かっていません。更に、割れた断面の角が鋭く

   尖っていますので、冷却中に割れた事が判ります。

   a) 窯出し出来るまでの冷却時間は、窯を焚いた時間と同等又はそれ以上が必要であると言う

    のが一般的です。但し窯の大きさや壁の厚み、作品の量、釉の種類、素地の種類などの要素が

    関係しますので、必ずしも全ての窯に当てはまる訳ではありません。

   b) 窯の扉を開けて良い温度に付いて。

    一般的には100℃以下に成れば窯の扉を開けても、冷め割れは発生せず安心です。

    耐急冷性の素地であれば、300℃でも安全であると言う人もいます。当然窯出しには、

    窯中を扇風機等で強制的に冷やす必要があります。但し50℃以上では、軍手などの手袋を

    使用しないと、火傷(やけど)をしてしまいますので、注意が必要です。

  ⅳ) 窯の冷えと貫入との関係。

   急冷すると、釉に貫入(小さなヒビ)が入り易くなります。貫入が欲しい場合には、速めに

   窯を開け、貫入を望まない場合には、じっくり冷えるのを待つ事です。貫入は窯出し直後が

   多く発生しますが、窯出し数日たってから発生する事もあります。

   原因は、釉と素地の収縮差によるものです。即ち釉の表面が急激に冷やされ、素地よりも大き

   く縮む為です。「チンチン」又は「ピンピン」と乾いた澄んだ音がします。

   勿論釉の種類によって貫入の大きさや、網目模様も千差万別です。

   尚、貫入は必ずしも欠点とは言えません。「ヒビ」の入った釉を好む人もいます。

7) 窯出しに付いて。

 
以下次回に続きます。

  
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