わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

新釉の話49 自分で釉を作る18 灰釉3(調合2)

2013-10-01 16:24:22 | 新釉(薬)の話

2) 灰系透明釉について。

  透明釉は単に下絵が現れる透明な釉と言う訳ではなく、素地との密着度や収縮度合い、釉肌の

  艶の有無、下絵の滲み具合などの諸条件を満足させる必要があります。更に、色釉の基礎釉と

  なりますので、金属類との相性の良いものが望まれます。      

 ① 透明釉の調合例: 透明性が強く、釉に泡もなく光沢のある釉。

  ) 正(カリ)長石 30%、 土灰60%、 藁灰10% (重量比)

  ) 正(カリ)長石 40%、 土灰60%、(重量比)

  ) 益子透明釉: 寺山土 10、至勢堂土 5、土灰 12 (容積比)

               寺山土 50、 土灰50 (容積比)

 ② 乳濁釉の調合: 白萩釉、卯の斑(鵜の糞、兎の斑)釉、藁白釉などの乳白釉です。

   藁灰や籾殻(もみがら)などの珪酸分の多い灰を使います。その際、炭素が残る方が良いと

   言われています。釉が熔けた際に炭素から多量の気泡が発生し、釉中に残り光が乱反射して

   乳白効果を高めるからです。

   ) 萩釉:山口県の萩焼で使われている釉で、代表的な釉が、白萩釉です。

           三雲長石 20、藁灰 50、土灰 30

           三雲長石 30、 土灰 40、 籾殻灰 30

   ) 卯の斑釉: 正長石(福島長石) 20、 土灰30、 籾殻灰50

 ③ 鉄釉の調合。 天目釉、瀬戸黒釉、黄瀬戸釉、伊羅保(いらぼ)釉、青磁釉など。

    多くの窯場で使われる、黒釉、飴釉、黄釉、茶褐色釉は、鉄分を含む天然土や石に、長石や

    灰を混ぜて作った釉を使っていました。それ故同じ名前の釉でも、産地の違いによって微妙な

    差があるものです。

   ) 天目釉: 天目釉と呼ばれる釉は古くから存在し、白天目、黒天目、禾目天目、油滴天目、

     曜変天目など種類も多いです。国宝や重要文化財級の作品も多く、多くの釉では再現されて

     います。但し、国宝の曜変天目は、かなり近い色艶や文様が再現されつつありますが、

     完全な再現では無いとの事です。ここでは天目釉の調合例は省略します。

     多くの釉の書籍で知る事が出来るはずです。

   ) 瀬戸黒釉: 長石 60、 土灰 40、 弁柄(酸化鉄) 10

              長石 30、 土灰 40、鬼板(粘土) 40、

   ) 黄瀬戸釉: 長石 25、 土灰 50 赤土 25

              長石 40、 土灰 50 藁灰 10、 弁柄 1

   ) 伊羅保釉: 長石 23、 土灰72、 藁灰 5、  弁柄 8

              長石 50、 土灰50、 黄土 20 (外割り)

              土灰 90、 蝋石(ロウセキ) 10、 弁柄 2

   ) 青磁釉:  砧青磁。天竜寺青磁など多くの種類があります。

              長石 60、 柞(いす)灰 20、 土灰10、 籾殻灰 10、 弁柄 2

              長石 40、 柞灰72、 籾殻灰 15、 石灰石 5、弁柄 2、 カオリン 10

  ④ 銅釉:青織部に代表される織部釉には、瀬戸黒に近い黒織部釉もあります。

     ) 青織部: 長石 50、 土灰 50 酸化銅 8 (外割り)

      尚、銅を使った釉には、辰砂釉、青銅釉などがあります。

  ⑤ 結晶釉の基礎釉: この釉に亜鉛華、酸化チタン、二酸化マンガン、酸化コバルトを加える事で

     乳白色の亜鉛結晶、淡黄結晶、金梨地結晶、ピンク結晶、藍色結晶、淡結晶釉等を作る事が

     出来ます。

      長石 30、 藁灰 40、 柞灰 30

      長石 50、 藁灰 、20 柞灰 20、 天草石 15、 亜鉛華 5

3) 最後に、灰を使う釉には、今までに無い新しい釉となる無限の可能性があると思われます。

   今まで釉に使われた灰の種類はほんの一部です。燃やした後に残る灰は燃やした物の種類に

   よって、千差万別だからです。微量な無機質(金属類)が、どの様に発色するかは、全て解明

   されている訳ではありません。但し、長い試行錯誤の試練がある事は確かですが・・・

以上で「新釉(薬)の話」を終わります。機会が有りましたら、別の立場で釉の話をしたいと思って

います。

次回より、別のテーマ「化粧土と色土」でお話します。

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