わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

陶芸の心得6(同じ物は二度と作れない)

2012-07-14 21:50:25 | 陶芸の心得

6) 陶芸では同じ物が二度と出来ない。

   陶芸をやっている方ならば、「至極当然の事とだ」と感じているはずです。

   但し、工業的に量産する場合や、専門職人による作品造りの場合は、これに当てはまりません。

   同じ物を数多く作る事が、彼らに求められるからです。それ故、機械轆轤や型を使った成形、

   鋳込み成形などの技法を使い同じ物を作り、転写紙を使って絵付けを行たりします。

   手書きの場合でも、専門職の人が同じ文様を、描き続けています。  

   又、轆轤挽きの専門の職人は一日数百個~千個程度成形しています。この様な人は同寸、同形の

   作品を作る技術を有しています。この様な人達には、同じ物を数多く作る事が可能です。

   しかし一般に陶芸を楽しむ人や、陶芸作家と言われる人達の作品は、同じ物は作らない(作れない)

   のが普通です。

  ① 個人の窯の場合には特に顕著です。

     特に手捻りの場合、同じ土を使用して、同じ物を作る事は、轆轤で作るより困難です。

     例え、寸法を測り型紙を当てて成形しても、微妙に変化し、その変化した部分は容易に確認

     されてしまいます。「この事こそが陶芸の魅力である」と思っている方も多いでrす。

  ② 焼き物は「焼く事」によって完成となります。

     同じ物が出来ない最大の原因が、焼成にあります。

   ) 同じ釉掛けした作品を、同じ窯で同時に焼成した場合であっても、全く同じ色で焼成する

      事はありません。

      電気窯の様に、炎の出ない焼成方法では、比較的揃った色に焼成する事になり易いですが、

      炎の出る窯(薪、ガス、灯油など)では、先ず色が揃う事はありません。

   ) 同時に焼成した窯でさえ揃う事が稀である事は、次回に同じ窯で、同じ釉を掛けて焼成

       しても、先ず前回と同じ色に出る事は稀で、全く異なる色と成る事もあります。

    ) 特に窯変と言われて珍重される作品は、先ず同じ物は二度と出来ないと思った方

       正解です。いかにデータを揃えても、全く同じ作品にはなりません。

    ) 釉の濃淡や、作品の大きさと高さ、そして個数及び、窯詰めの仕方、窯の中での作品の

       位置、隣との間隔、周囲の作品の大きさ、酸化還元の有無と、酸化還元のタイミング、

       昇温スピード、最高焼成温度、寝らし時間、冷却スピード(窯の壁の厚みに関係)など

       諸々の条件が関係してきます。   

  ③ 何百回、本焼きしても、その度に窯出しは希望と不安が同居します。

     所定の温度まで昇温していれば、窯焚きは失敗ではありませんが、望みの色彩や文様が

     出ていなければ、失望感が広がります。

  ④ 市販されている釉でも、結果は同じです。

     大抵の釉を販売している処では、焼成温度と伴に、色見本が表示されています。

     しかし、これはあくまでも見本であり、この様に焼き上がる事を保障する物ではありません。

     なぜなら、使用する土の種類が異なる場合も多く、窯も違えば、焼き方も違うからです。

     更に、焼成する毎に、色が微妙に(又は大幅に)変化しているはずです。

 以上の様に、その作品とは「一期一会」の運命にあると思われます。

 次回の窯では、それ以上の物が焼き上がる可能性を信じながら、作品を作っているのが量産を意識

  しない、一般的な陶芸愛好家や陶芸家ではないでしょうか。

・ 次回「土は縮んで、強くなる」をお話します。   

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 陶芸の心得5(力を有効に使う) | トップ | 陶芸の心得7(土は縮んで強... »

コメントを投稿

陶芸の心得」カテゴリの最新記事