6) 陶芸では同じ物が二度と出来ない。
陶芸をやっている方ならば、「至極当然の事とだ」と感じているはずです。
但し、工業的に量産する場合や、専門職人による作品造りの場合は、これに当てはまりません。
同じ物を数多く作る事が、彼らに求められるからです。それ故、機械轆轤や型を使った成形、
鋳込み成形などの技法を使い同じ物を作り、転写紙を使って絵付けを行たりします。
手書きの場合でも、専門職の人が同じ文様を、描き続けています。
又、轆轤挽きの専門の職人は一日数百個~千個程度成形しています。この様な人は同寸、同形の
作品を作る技術を有しています。この様な人達には、同じ物を数多く作る事が可能です。
しかし一般に陶芸を楽しむ人や、陶芸作家と言われる人達の作品は、同じ物は作らない(作れない)
のが普通です。
① 個人の窯の場合には特に顕著です。
特に手捻りの場合、同じ土を使用して、同じ物を作る事は、轆轤で作るより困難です。
例え、寸法を測り型紙を当てて成形しても、微妙に変化し、その変化した部分は容易に確認
されてしまいます。「この事こそが陶芸の魅力である」と思っている方も多いでrす。
② 焼き物は「焼く事」によって完成となります。
同じ物が出来ない最大の原因が、焼成にあります。
) 同じ釉掛けした作品を、同じ窯で同時に焼成した場合であっても、全く同じ色で焼成する
事はありません。
電気窯の様に、炎の出ない焼成方法では、比較的揃った色に焼成する事になり易いですが、
炎の出る窯(薪、ガス、灯油など)では、先ず色が揃う事はありません。
) 同時に焼成した窯でさえ揃う事が稀である事は、次回に同じ窯で、同じ釉を掛けて焼成
しても、先ず前回と同じ色に出る事は稀で、全く異なる色と成る事もあります。
) 特に窯変と言われて珍重される作品は、先ず同じ物は二度と出来ないと思った方
正解です。いかにデータを揃えても、全く同じ作品にはなりません。
) 釉の濃淡や、作品の大きさと高さ、そして個数及び、窯詰めの仕方、窯の中での作品の
位置、隣との間隔、周囲の作品の大きさ、酸化還元の有無と、酸化還元のタイミング、
昇温スピード、最高焼成温度、寝らし時間、冷却スピード(窯の壁の厚みに関係)など
諸々の条件が関係してきます。
③ 何百回、本焼きしても、その度に窯出しは希望と不安が同居します。
所定の温度まで昇温していれば、窯焚きは失敗ではありませんが、望みの色彩や文様が
出ていなければ、失望感が広がります。
④ 市販されている釉でも、結果は同じです。
大抵の釉を販売している処では、焼成温度と伴に、色見本が表示されています。
しかし、これはあくまでも見本であり、この様に焼き上がる事を保障する物ではありません。
なぜなら、使用する土の種類が異なる場合も多く、窯も違えば、焼き方も違うからです。
更に、焼成する毎に、色が微妙に(又は大幅に)変化しているはずです。
以上の様に、その作品とは「一期一会」の運命にあると思われます。
次回の窯では、それ以上の物が焼き上がる可能性を信じながら、作品を作っているのが量産を意識
しない、一般的な陶芸愛好家や陶芸家ではないでしょうか。
・ 次回「土は縮んで、強くなる」をお話します。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます