真っ赤な実

ずっと、気になっていたのです。

７年前の秋、いつも歩くお散歩コースの道沿いのイチイの木に、
赤くて可愛い実がなっているのを見つけました。
透き通るようなその実を、私はどこかで見たことがあるような気がしたのです。

その道を歩くたびに、１ｃｍにも満たない実を見ながら思い出そうとしましたが、
思い出すことができないまま、季節が変わっていきました。
翌年も、その翌年も、さらにその次の年も…、同じように色付いた実を見ながら
思い出すことができないまま、季節を過ごしてきました。

昨日の事、「はね品をいただいたので、お裾分けですが…。」と
お知り合いからプチトマトをいただきました。
実が小さくて売り物にならないらしく、お店で見たことがないほど小さいのです。

ところが、その実を見た途端、私はあのイチイの木の実を思い出しました。
『同じだわ。』
赤くて可愛い…それは、私の記憶に少し深く入り込んでくれました。

飴…、そうだわ。
子供の頃に食べた飴と同じだわ。

小学生の頃だったでしょうか、おやつに食べたことがありました。
透明感のある、真っ赤で小さな飴は、噛むことなく舐めていました。
噛んでしまうと、おやつはあっという間になくなってしまいますから、
頬の右や左に動かしながら、無くなるまで舐め続けていたことを思い出します。

最近では、スーパーマーケットなどで、『昔懐かしいお菓子』というコーナーを
見ることがありますが、その飴を見かけたことはありません。
ガムやチョコレート、キャラメル、おせんべいなど、
懐かしのお菓子を見ることもありますが、あの飴はありません。

いつかどこかで、あの飴と再会できる時がくるのでしょうか…


　真っ赤なイチイの実です。


　可愛いプチトマトです。