ウィンザー通信

アメリカ東海岸の小さな町で、米国人鍼灸師の夫&空ちゃん海ちゃんと暮らすピアノ弾き&教師の、日々の思いをつづります。

あんこう鍋

2011年02月11日 | 家族とわたし
拓人が久しぶりに、ゆっくりの里帰り。月曜日の朝までいられるらしい。
三人で鍋をつつきたかったけれど、電車に乗り遅れた彼を待つわけにもいかず(だって1時間に1本しかないので)、旦那とふたりで食べた。
今夜は骨付きの鶏肉とあんこうがメイン。
あとは菊菜やきのこ、大根と白菜。マロニーちゃんは買ってきたのに入れ忘れた。

久々だけに、いつもより話が弾む。
しかも、旦那と話す時はほとんど英語になってるし……これはすごい変化。
うちの中でこんなふうな風景を見られるようになろうとは、ほんと、10年前には、いや、15年前でも全く想像もできなかった。
人生、待ってみるもんだなあ……。

彼の仕事は順調。
今、苦境の真っただ中にいて、かなり喘いでいる旦那は、そんな息子が眩しそう。
でも、それもまた親としてはありがたい。
せめて子供の心配をしなくてもいいだけでも、本当にありがたい。


さて、恭平は、いつもと変わらず週末を楽しんでいる。
けれども彼も、一緒に夕飯を食べられる時には、とても面白い話を聞かせてくれる。
たいていは大学の心理学のクラスで学んだことだ。
今は脳の機能について学んでいるらしく、目が見ていることを脳がどういうふうに取り入れ、それを感覚として我々に伝えているのか、そのことを実証するための実験の話なんかをしてくれる。

見ていると思い込んでいること。
見ている物が、見えているままの色形だと信じ込んでいること。
実はそれが真実ではないということを、小さな実験を交えて説明してくれるのを聞くのは、思いの外楽しい。

ビルもわたしも、内容は違うものの、親との会話が極端に少ない環境で育った。
だからよけいに、こんなふうに、お互いの、別にどうということもない、生活や仕事、学んでいることや趣味の話を、食べながら、飲みながら、延々と話せる関係が嬉しいしありがたい。


ありがとね、拓人、恭平。

米国気功トリートメント事情

2011年02月11日 | 米国○○事情
わたくし、本日、気功トリートメントなどというものを受けてまいりました。
毎週月曜日に気功を教えてくれているミリアムに、今度はプライベートで気功を使った治療をお願いしたのです。
旦那の鍼も、自分でするお灸も、それなりに効果を見せてくれているのだけど、また別の考え方や方法で診てもらうのもいいなあと思ったわけです。

今日は彼女の自宅の、三階にある屋根裏のほかほかと暖かい部屋で、前半はわたしという人間の歴史を話し、後半は気功のエネルギーを使った治療を受けました。

話している間中、ミリアムはずっと、わたしの左手の小指を愛おしそうに包んでくれていて、はじめはとても冷たかった彼女のてのひらが、子犬のお腹ぐらいの温かさに変わり、しまいには湯たんぽのような心地良い温かさになりました。
怪我や手術、それから疾患の質問に答えたり、育った環境の話などを短くかいつまんで話していると、よくもまあ生き長らえることができたもんだ、としみじみ言ってくれたミリアム。
「まうみ、ひとつ聞いてもいいかしら」
「もちろん」
「あなたは、もしあの時あの事故が無かったらとか、もし別の両親のもとに生まれていたらとか、そんなことを考えたことはある?」
「う~ん……」
「そうやって、事故や災難が起こらなかったら、自分はどんな人生を送ることができたか、そんなことを想像したことはある?」
「無かったと思う」
「え?一度として?」
「うん、一度もそういうふうに考えへんかった」
なんでやろう?と、思い出しながら考え込むわたしの横で、どうして?と、少し驚いたような顔をしてやっぱり考え込むミリアム。
しばらく経って、これしか思い浮かばなかったので、こう言った。
「多分、起こったことはすべて、起こるべくして起こったことやとしか思えへんから、そこには恨みとか後悔とかの感情が芽生えへんのやと思う。恨んでも後悔してもしゃあないし、っていうか、まずそんなことする余裕も無かったし。とにかく生きなあかんかったから。
もちろん、その真っただ中で生きてた時は、へこんだり、泣いたり、困り果てたりしたし、どないせえっちゅうねん!て神さんに突っかかったりしたよ。
心の中で、◯◯なんかもう死んでくれたらええのに、と思たりしたこともあったけど、事が終わったり過ぎたりしたらもうそれで終わり。すっかり忘れるねん。忘れたらもうそれは、ひとつの思い出になって、おもしろ可笑しく話すトピックでしかないのよね。
それになによりも、わたしの今までの人生を振り返るたんびに、ほんまに、なんてわたしはこうもついてる人間なんやろうと思うねん」

しばらく、ふたりともが黙ったままの時間が過ぎました。

「まうみ、あなたをもっと知りたいと思う人はいっぱいいるでしょうね」
「さあ……」
「そういうチャンスと時間がいつか手に入るといいね」
「う~ん、わたしはミリアムの話をいつか聞きたいと思てるの。イスラエルから移住してきて、どうして気功と出会ったのか。気功はミリアムの人生にどんなふうに息づいているのか」

ほんとうだなあ。もっとこの人のことを知りたいと思う人はこの世にいっぱいいるということに気がつきました。それも身近な所に。

マッサージテーブルに仰向けに寝て、気功のエネルギーを使った全身治療を受けました。
小窓の外から、いろんな種類の鳥の鳴き声が聞こえてきます。
まだまだとても寒いけれど、春はやっぱり少しずつ近づいているようです。
とてもリラックスして、彼女から送り込まれてくる温かなエネルギーを感じていました。

「今度の治療までに、これを試してみて」と、彼女はふたつ、宿題をくれました。

*丹田からのエネルギーを左右両側の腕を通して指先まで流す。
 その際の指先は、第一関節(先に一番近い関節)で切り取られていて、その穴から外にエネルギーが放出されている様子を想像する。
*ピアノを弾かないことが一番なのだけど、それを願うことは不可能なので、痛みのある指が鍵盤を押す時に、その痛みが指先から鍵盤に、鍵盤からハンマーに、ハンマーから弦を伝って消えていくことをイメージする。

早速家に戻ってやってみました。
一番おもしろかったのはやはり、痛みをピアノの方に移す、ということでした。
そう強くイメージして打鍵すると、瞬間になにかが作用するのか、いつもより指がリラックスしているのがわかります。
痛みもいつもよりは減っています。

ミリアムは、「痛みをもらったピアノだって、そのままじゃ困るでしょ?だからまうみは、さらにイメージを進めて、ピアノから舞台上の空間に、そして客席の人達に伝わるようにしてみて。そうやって、皆でまうみの心の動きのすべてを受け取ってもらったらいいの。音楽で感じるのはなにも、きれいなことや楽しいことばかりではないはずでしょう?」


明日はふたりの歌手(テノールのマイケルとソプラノのポーレット)の伴奏で5曲演奏します。
ついさっき録音してみたら、あらあら、下手くそ!な部分が山盛り見つかりました。
明日の午前中にそこを修正して、本番に臨みます。