まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

理想の離婚

2020-01-05 | 北米映画 15~21
 「マリッジ・ストーリー」
 ニューヨークで活動する舞台演出家の夫チャーリーと別れ、息子を連れてロスの実家に戻り女優として再起を目指すニコールだったが、息子の親権をめぐってチャーリーと争うことになり…
 評判通りの秀作でした!結婚はパっとサっとできちゃうけど、離婚となるとそうはいかないんですね~。離婚するために必要かつ消耗する時間や気力を想像しただけで、やっぱ独りがいい!なんて寂しく気楽な我が身をかえりみてしまいます

 夫婦が傷ついて悩むだけでなく、子どもの親権という難題が重すぎます。この映画を観ていて思ったけど、子どもにとってはほんといい迷惑。チャーリーもニコールも息子のことを本当に愛していてるのはわかるのだけど、自分たちの都合やエゴで息子を振り回してもいて、勝手だな~と憤りを覚えました。どんな事情があるにせよ、子どもを傷つけることは許されません。でも、息子があまりナイーブではなく、両親の間を行ったり来たりしながら、しょーがないな~みたいな感じで根気よく付き合ってあげてる風が微笑ましく救いになりました。涙を誘うけなげ系じゃなかったのが返って好感。息子があまりにも恬淡としているので、ちょっと発達障害なのかな?とも。LD(学習障害)っぽかったし。

 離婚、親権争いだけでなく、家庭や社会における女性の立場や自立についても考えさせられました。チャーリーの言動や思考回路には、ニコールじゃなくても妻って?母親って?と疑問に思っちゃいますわ。基本的にはチャーリーって仕事熱心で妻にも優しくて子煩悩で、悪いところなんか全然ない、文句言ったらバチが当たる、すご~くいい夫、いいパパなんですよ。でもでも、ん?は?なことをふと言ったりしたりして、ナンダカンダでやっぱり彼も世の亭主と同じだなと暗澹とさせるのです。結局は女が我慢し譲歩して諦める。妻だから母だから。女は結婚したらこうあるべきという社会通念を当たり前のように守ろうとしていて、根底では女を見下してる。私が最も不快だったのは、ニコールの稼いだ金を自分の仕事に使って何が悪い?みたいな考え方。そういうのが女性を傷つけるなんて気づきもせず、とことん無邪気に鈍感。これがいちばんタチが悪いんですよね~。

 ニコールのように自立心や自尊心が高い女性にとっては、確かに一緒に暮らすには辛い相手かもしれませんが、愛する男性に尽くしたい、黙ってついていきたいタイプの女性にとっては、チャーリーは理想の夫かもしれません。とにかく男と女の間には、どんなに愛し合っていても埋められない溝があるんですね~。でも、何でも理解し合える、わかち合える話の映画なんて、ウソくさいし面白くありません。ギスギスドロドロしがちな下世話な話を、クスっと笑えるユーモアや、ほのぼのしたぬくもりで包んでいるところが、この映画の特徴と魅力です。あからさまに男が悪い!な糾弾や偏重はなく、さりげなく女性寄りなところも、キツいフェミニズム映画が苦手な人向けなのでは。
 納得できずに気疲れはしつつも、互いを尊重し合っていがみ合ったり顔も見たくない!と憎しみ合うこともなく、友好的な関係を構築するニコールとチャーリーですが、あれって二人に才能とお金があったおかげだよな~とも。凡庸で貧乏な底辺男女だったら、目も当てられぬ醜悪で悲惨な修羅場になってますよ。しょせんセレブの世界の話、庶民感覚とのズレも感じました。爽やかで優しいラストは後味よく、離婚しなくても別居婚でよかったんじゃない?と思いました。
 主演のアダム・ドライバーとスカーレット・ヨハンソンが、今までの出演作中ベストかもしれない好演!

 アダムさん、ヌオ~っとした巨体と、イケメンなのかブサイクなのか判然とせぬ顔が、ほんと独特すぎる。いろんなことに戸惑ってる様子が可愛い。演技してるとは思えぬ自然な感じは、いかにも熱演してます!な演技よりも難度が高いはず。奇抜な役でも演技でもなく、特殊なメイクもせず、観客の心に刺さる演技に感嘆。印象に残るシーンいっぱいありましたが、特に好きなのは悲しい歌をカラオケするシーン。淡々としつつ痛みが伝わってくる名演でした。スカーレット・ヨハンソンも、いい女優になりましたね~。可憐に生意気な少女から、酸いも甘いも知った立派なおばさんに成長。二人ともすごい長い台詞を自然かつエモーショナルにこなし、役者の真髄を見せつけてくれました。二人にオスカーあげたい!
 対照的なニューヨークとロサンゼルスの風景や生活の描写も興味深かったです。どっちも魅力的。どちらかに住めるなら、私はニューヨークのほうがいいかも。開放的な明るさより、活気と憂いが混じりあった大都会に心惹かれます。チャーリー率いるNYの劇団の舞台裏と、ニコールが復帰するLAのTVドラマ撮影裏も、対照的に描かれていて面白かったです。

↑ 近日発表のゴールデングローブ賞、アダムの主演男優賞受賞をI wish!スターウォーズも大ヒット中、オスカー候補も確実視されてるなど、いま最もイケイケな役者!
 
 
 

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2 コメント

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新年快楽! (くうこ)
2020-01-05 19:07:15
たけ子さん!ご挨拶が遅れてしまいましたが・・・

あけましておめでとうございます~☆

今年もどうぞよろしくお願いいたします!

この『マリッジ・ストーリー』予告編で泣いてしまったんですけど本編でも泣いてしまいました。

ほんとですね。たけ子さんのおっしゃる通り、別居婚でも良かったような気がしますね。
距離感さえ合えば、な感じありましたものね。

そして、そうそう、笑える部分もあったりでおもしろかったですよねー
私、調査員ナンシー・カッツの訪問シーンがすごく好きで、最後、チャーリーがカバンをかけてあげるシーンのナンシーに「わかるー!」と笑ってしまいました!!
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大金持ちと離婚したい (松たけ子)
2020-01-06 20:40:12
くうこさん、あけましておめでとうございます!🎍こちらこそ何卒よろしゅうお頼み申し上げまする~(^^♪
新年早々佳作が観られて幸先よし!私は冷血人間なので涙は全然出ませんでした💦けど、感動押し売りな内容じゃないところが好きです。
別居婚じゃダメだったのかな~。私がもし結婚できたら、別居婚がいいな~。距離感って大事ですよね~。
調査員の訪問、あれ笑えましたよね~。チャーリー、テンパって血だらけになったり、おいおい~wwwでした。GG賞、アダムじゃなくてホアキンだったのでちょっと残念。
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