まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

野良娘

2019-11-08 | フランス、ベルギー映画
 インフルエンザが早くも猛威をふるってますね!私の職場でもバタバタとインフル欠勤者続出。私も微熱が!キター!!病院に駆け込みましたが、インフルではないと診断され安堵。でもでも、ものすごく体がダルいわ頭痛がするわ息苦しいわ、フラフラな状態で仕事どころじゃないんですよ何度測っても平熱だし、鼻水も咳もクシャミもほとんど出ないので、いったい何なんだろうと不安です。週末はじっと引きこもって養生します…皆さま、どうぞ御身おいといくださいませ~
 
「冬の旅」
 真冬の南フランス。農村の畑で行き倒れとなった少女モナの死体が発見される。モナの流浪生活が、彼女と関わった人々の証言によって明らかにされる…
 今年亡くなったアニエス・ヴァルダ監督作品。ドキュメンタリータッチのロードムービーです。
 現代人の多くが、いろんなものにがんじがらめとなり、窒息しそうな毎日を送っています。私もその一人です。わずらわしい社会生活、人間関係のしがらみをスッパリ断ち切って、いっそモナのように自由な浮浪者になりたい、と思いつつ、やっぱ無理かな、とも。モナのようなホームレス生活、いくら何でもハードすぎるわ。飢え、寒さ、不衛生、病気、孤独と危険、どれか一つ耐えるだけでも心身共に超人的な強さが必要ですし。私なら2日ともたんわ。完全に自由になるための代償は、あまりにも大きい。少々息苦しくても、健康で文化的な最低限度の生活のほうがいいです。

 それにしても。なぜモナなあんな過酷な浮浪生活を選んだのでしょうか。その理由や彼女の素性など、映画の中ではまったく説明されていません。あのド根性、忍耐力、社会で有益に活かせただろうにな~。でも、私たちが重要だと信じてることは、モナにとって取るに足らないこと、捨て去ってもいい無益なもの。まるで修行僧のようなモナでしたが、宗教的なストイックさ、決死の覚悟でやってるみたいな悲壮感とかは全然なし。淡々と気楽そうな様子。助けてもらっても施しを受けても、そんなん当然!と言わんばかりな厚かましさ、ふてぶてしさ。何だか小気味いいまでの野放図な不良娘なんですよ。なので悲惨さとか哀れさを感じない。食べ物や寝る場所のためにズルいこともしたり不道徳なこともするモナは、ちょっと家なき子の安達祐実を思い出させました。同情するならタバコくれ!みたいな。

 流浪中にモナが出会うのは、悪い奴もいたけど、おおむね親切な人たちばかり。でも、未成年の少女ホームレスに対してみんな無関心すぎる。私ならすぐに警察か児相に通報するけどな~。でも、助けてあげて!なんて思わせないモナ。むしろ保護されそうになると捕まる!逃げて!と思ってしまう。人情も愛情も拒んで独りで生きることって、モナのようにホームレスにならなくても、寒く険しい真冬の旅。モナがさすらう冬の荒涼とした景色が、その厳しさをよくあらわしていました。行き倒れ、野垂れ死になんて壮絶すぎる最期ですが、モナのことを愚かとか不幸とかとは思えなかったのはなぜ。不本意なことだらけな人生を、黙々と長々と生きるよりもむしろ…?
 モナ役のサンドリーヌ・ボネールは、この映画でセザール賞の主演女優賞を史上最年少で受賞しました。とにかく彼女、ほんとリアルで生々しいです。とても女優の演技とは思えません。ナチュラル演技なんてキレイキレイなものではない。きれいに見せたい、可愛く見られないなんて気配や意図などいっさいなし。少女なのにニヒル。スパスパとかったるげにタバコを吸う姿など、堂に入りすぎ。日本のNHK朝ドラとかに出てる女優なんか、絶対に出せないヤサグレ感と野生です。ちょっとトンがった複雑な女の子役が多かったサンドリーヌですが、キャリアを重ねるうちに角がとれ、素敵なマドモアゼルやマダム役が似合う女優に。その理想的な年齢の重ね方は、フランス女優ならではです。
コメント (4)
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