まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

愛して別れる理論

2015-05-13 | イギリス、アイルランド映画
 「博士の彼女のセオリー」
 オックスフォード大学で物理学を研究する大学院生スティーヴン・ホーキングは、パーティで出会ったジェーンと恋に落ちる。しかし、突然の病魔が彼に襲いかかり…
 エディ・レッドメインが今年のアカデミー賞で主演男優賞を受賞した話題作。
 大ヒット作「レ・ミゼラブル」で、舞台仕込みの高い演技力と美声を遺憾なく発揮し、世界的に名を馳せたエディくんですが、ワタシ的にはマリウスよりもアンジョルラス萌え~だったんですよ。エディくん、イケメンだけど地味すぎて。でも、雑誌などのインタビューやグラビアの彼は、いま人気の英国俳優の中でも屈指の上品さ、優しさ、知的さ、そしてコンサバなファッションセンスの良さで、好感度はかなり高かった。早くもオスカーに初ノミネート、そして受賞と、何だかトントン拍子に頂点に昇ってしまったエディくん。オスカー授賞式の壇上での初々しく大感激してた彼、めっちゃ可愛かったですよね~。ますます好感度がアップしました。

 難病のALS(筋萎縮性側索硬化症)患者となりながらも、精力的に前向きに研究を続けたホーキング博士を演じたエディくん。難病とか障害といえば、役作りで壮絶なダイエットとか、まさに入魂!な熱演と相場が決まってるけど、エディくんの演技はそれとはまたちょっと違ってたように思われました。確かに、痛ましいほど痩せた身体や、不自由な動きや表情などは、生半可な演技力や準備、覚悟がないとできない圧巻のパフォーマンス。それでも、演技派気取りが陥りやすい鬱陶しいまでの熱演にならなかったのは、エディの備えている天性の美質である上品さ、優しさゆえでしょう。苦難と絶望に満ちた状況ながらも、あまり深刻に苦悩したり悲劇調にならず、常に明るく爽やかに天真爛漫なんですよ。天使系笑顔に、頬が緩んでしまいました。体が不自由なのに、だらしない格好は絶対にせず、フォーマルで上品な服を常に着こなし身だしなみを整えているところなどは、さすが英国紳士。ジェーンは毎日の博士の更衣だけでもキツかったことでしょう。私だったら、もう昼夜問わず寝巻きかジャージ着せときますよ。

 ホーキング博士、脳みそと男の機能だけは誰よりも冴えてて元気なのが微笑ましかった。赤ちゃんを次々つくってたのが驚異。いったいどうやって…なんて、下世話な想像や興味を抱いてしまったのは、私だけではないはず。子作りシーンもありませんでしたが、介護シーンもほとんどなし。奥さん、子育てしながら夫も介護だなんて、ほんと大変だっただろうな~。

 それにしても。ホーキング博士って、結構な亭主関白で怖かったです。感情的に声を荒げたり、暴力振るったり命令したりするわけではありません。でも、天真爛漫すぎるというか天上天下唯我独尊というか、自分のやりたいことをやりたいように、自分流を貫くんですよ。そのために、周囲をいいように動かすというか操るというか。フワフワと夢みがちなキャラで、周囲の苦労や犠牲もどこ吹く風。天然?それとも狡猾?天使のように無邪気なのか、鬼のように自己中心的なのか。つかめないところがあって、そこが怖かった。みんな博士のために我慢したり奔走したり、そうせずにはいられない姿が何だか痛ましかったです。博士が天才だからこそ、それが許されたとも言えるのではないでしょうか。あれがもし凡人だったら、即介護施設送りですよ。

 あんなに情熱的に結ばれ、長い間苦楽を共にした博士とジェーンが、なぜ別れてしまったのか…映画の二人を見ていて、それが解かるような、それでいて不可解なような。どんなに愛し合っていても、つなぎとめられない、保てないものってあるんだな~と、しんみりしてしまいました。自分を犠牲にしなかったジェーンは、強い女性だなと感嘆しましたが、もし夫が高名でもなくお金もなく後釜の女性もいなかったら、間男を選んだ介護放棄の悪女と誹謗されてたんでしょうね

 ジェーン役でオスカーにノミネートされたフェリシティ・ジョーンズは、若いのに思慮深そうな、静かに決然とした意志的な風情があって、日本のチャラチャラしたブリッコ女優を見慣れた目には新鮮です。夫婦を助けてくれる音楽教師が、めっちゃいい人!ホーキング夫妻、確実に彼の善意、そしてジェーンへの恋心につけこんでましたよね。あくどい夫婦だな~と笑えた。
 結婚生活の破綻や介護など、ほんとはもっと醜悪な修羅場映画になってもよかったのに、そんなゲンナリするようなリアルな内容にせず、ロマンティックに、どこかファンタジックな恋愛映画に仕上げていたのも良かったです。メリーゴーランドや花火などのデートや結婚式など、胸キュンなシーンもいっぱいありました。流麗な音楽と踊るようなカメラワークも秀逸。オックスフォード大学のキャンパスライフや、イギリスの田舎の風景も美しく撮られていました。学問に関する話や台詞は、まるで宇宙語を聞いてるみたいに意味不明でした~
 ちなみに。ホーキング博士は今もご健在で、しかもジェーンと別れた後に再婚した看護婦とも離婚してた!

 ↑オスカー受賞、おめでと性転換した画家を演じてる最新作も楽しみですね!
コメント (4)
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