ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

東京タワー行きカントリー・トレイル

2012-10-23 16:01:27 | その他の日本の音楽

 23日放送の「NHKラジオ深夜便」の”日本人歌手で聞くカントリー&ウエスタン”を、ある種、揚げ足取りみたいな気分で聴いてみた。揚げ足取り気分とはどう言う意味かといえば。
 どうやら我が国でも戦後しばらくして、カントリー・ミュージックのブームのようなものがあったようだ。それはあのジャズの大ブームとは比べるべくもなかったろうが、それでもそれなりの流行を見せたはずだ。それはその後、歌謡界に少なからぬ数の”カントリー系”の歌手が排出されていることでもあきらかだろう。

 モロにそれとわかる小坂一也のような人から、ヒット曲、「骨まで愛して」で、カントリーの唱法を非常にエグい形で演歌のフィールドに応用してみせた城卓矢なんて人、そこまで行かずとも、妙に鼻にかかった発声法が強力にカントリー臭を放っていた北原謙二とか。あの辺の人々の、歌謡曲の歌い手としては非常に違和感があるような、それはそれでいいような不思議な魅力、あれはいったいなんだったのか。
 創成期の日本のカントリー・ミュージックの録音を聞いて、それらの人々の音楽的出自について何事か突っ込める部分に出会えるのではないかと、当方としては期待したわけである。

 とはいえ、そこまで面白いことには簡単には出会えない。そこで聞けたのは突っ込みようもない、何やら非常にさわやかな出来上がりの和風カントリーの世界だったのだ。
 日本語詞の、まるで講談みたいな大時代な言葉使いが強烈な印象を残す小坂一也版「ゴーストライダース・イン・ザ・スカイ」などという”逸品”もあることはあるのだが、多くの録音は、まるでディズニーランドの書き割のような汚れなきおとぎ話としての開拓期アメリカ西部への憧れを歌った清潔なホームソングばかり。

 とはいえ、今回の放送を聞く限り、当時はことのほかヨーデル唱法が好まれていたようで、いたるところにレイホ~レイホ~と裏声は響き渡る。その美しき高原幻想などは確かに、その後に続く清らかな青春歌謡の登場を予告するものと思えなくもないのだった。
 さらには、たとえば寺本圭一などという人の歌唱には、どこか演歌のコブシに通ずるナマな肉体性がほのめかされてもいるように感じられ、やはり戦後の日本におけるカントリーと歌謡曲の関係、探求してみたくなってしまうのである。




最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。