ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

行け行け、レッガーダ!

2007-12-11 04:00:34 | イスラム世界


 ”BNAT REGGADA avac CHABA WAFAE, LIVE ”

 今年もそろそろ”本年の年間ベスト”など選出してみようかな、などと書いてみて、毎年毎年、時の流れの素早さについて行けなくなっている自分に弱ってしまうのであります。「今年も余すところ」などと言われたって、こちらの感覚では「そろそろ秋かな」くらいのものなのであって。

 昨年の今頃は、ちょうどそんな事を言っている最中に北アフリカから飛び込んできた謎の音楽、”レガーダ”を紹介するコンピレーション・アルバムに一発でやられてしまい、そのままそのアルバムを年間第1位に押し立ててしまったのだが、今年もインパクトで行くとあれを超えるものはないような気がする。

 とは言えまだまだ得体の知れない代物であり、いや、訳の分からないうちが一番おいしいと言うべきか、ほんとに吹けば飛ぶようなローカル音楽、つかの間の仇花とも思え、明日の風の吹きようで消し飛ぶかも知れず、今聴いておかねば聞く時はないのかも知れないのである。

 で、このレガーダなる音楽なのだが。と始めようにも、この音楽について当方は何も知らないに等しいのであった。
 北アフリカはモロッコ、アトラス山系の懐に抱かれたあたり(何度も言うが、良く分からないまま書いているので、ご注意を)に住まいするベルベル人なる民族の伝統音楽が現代化したもの、といって良さそうなのだが、そもそもその伝統音楽なるものがどのようなものやら、その辺の知識からしてこちらは持ち合わせない。すまん。

 とりあえず現代化とは言うものの、基本的にはルーツ・ミュージック丸出しの泥臭い風体をしているので、現地の非常にドメスティックな環境で機能している音楽なのだろうと想像される。
 そしてその音楽の輪郭が非常にダンサブルなものなので、おそらく現地ではダンスミュージック、あるいはもう少し範囲を広げて祝祭音楽として機能しているのだろうなと想像するくらいがせいぜいのもの。

 雑に言えば電気楽器などを導入してもともと騒がしいものがますます騒がしくなった素朴なアラブの民謡、そのような感じの音楽である(ひどいね、どうも)
 基本は打ち鳴らされる民族打楽器であり、吹き鳴らされる民族管楽器。そもそもがサハラ砂漠からの風に吹かれて乾ききったような、ハードボイルドな手触りを持つモロッコ方面の音楽なのであって、そいつが強力なトランス系反復ビートで突っ込むだけ突っ込む。前のめり一本調子の、ただもう前進あるのみみたいな脳内カラッポ音楽(あ、これ、全部褒め言葉ですからね、念のため)

 もっとも特徴的というか当方が魅力的に感じているのが、そのボーカルにかけられたヴォコーダーの効果。
 イスラム世界の音楽であるから当然、イスラミックなコブシというものが歌声にはかかるのだけれど、ええい面倒くさいや、普通に歌った歌声を電子的に変調させてキカイでコブシをかけてしまおう。と考えたのかどうか知らないが、ともかくレガーダの多くには、このイスラム系ヴォコーダー・コブシがギンギンに効いているのである。

 その結果、なんだかロボットが砂漠の真ん中でコーランを読み上げているようなみょうちきりんな風景が、レッガーダを聴く者の目の前に広がることとなる。しかもその歌声にエコーかなんかかけられていた日には。
 歌声は、サハラ砂漠からの風を受けてヒラヒラと舞い上がり、屹立するアトラス山脈の彼方へ飛んでいってしまう。

 狂騒の反復リズムと、その上を舞うロボット系コブシ・ヴォーカル。めちゃくちゃ泥臭くてアホらしい。この卑近美に溢れた音楽の手触りは、ヨーロッパの白人の息のかかったオシャレなワールドミュージック工房からは生まれようのないものだ。

 レッガーダはまだまだメインストリームの音楽界では無名の存在。なんとかこのまま西欧音楽等のつまらない影響など受けず、ムチャクチャで下品な生命力を堅持しつつ、大きく伸びていって欲しいと願うものである。

 冒頭に掲げたジャケは、何枚か聞いたレッガーダのうち、初の女性ボーカルもの。いかにもマグレブ女らしいタフな歌声(もちろん、ヴォコーダーによる工業コブシ付き)で、聴衆を煽る煽る。ほんとのライブか怪しい気もするが、そんなのはどうでもいいやね、確かに。


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