ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

マラケッシュ超特急

2012-12-05 23:08:44 | イスラム世界

 ”Yed El Henna”by Fnaire

 とりあえず、ラップ嫌いでは人後に落ちない当方にとって、このようなジャケのCDを話題に取り上げるのは、まさに慚愧に耐えない、という気分なのであって。はい、お定まりの帽子にシャツ、せっかくの砂漠(?)をバックに、見飽きたポーズの三人衆であります。
 でもまあ、こいつらの風体を知る先に音を聴いて気に入っちゃったんで仕方ないな。こいつら、モロッコのヒップホップのグループだそうです。

 あれはいつだったかなあ、ワールド物に関して雑誌なんかでいろいろ発言している人たちがツイッターで、コンゴというかキンシャサの街のラップ状況に関するYou-tubeの画像をいくつも挙げ合って、「これ、カッコイイ!」とか盛り上がっているのに出会い、なんとも嫌な暗澹たる気分になったものだった。
 そこに挙げられた画像は、サウンドからファッションまでアメリカの黒人の猿真似のコンゴ人ラッパーが入れ替わり立ち代り持ち芸を演ずる、という代物だったのですな。もはやザイール川流域の風俗はニューヨークの下町と変わりませんてか。そりゃあ、めでたいこって。

 かってのアフリカ音楽の総本山キンシャサ。あの”都”の栄光を知るものとしては、情けなくて情けなくてねえ。当時、夢中になって聴いたものだったけどねえ。ルンバ・ロックとか、かっこよかったよねえ。
 ついでに言えば、そんなアフリカのラップで盛り上がっている人たち。某音楽雑誌のベスト・アルバム選にディランとかが十年一日の如く選ばれているのは納得できない!と異議を唱えている、その気持ちは支持したいけど、その一方、持ち上げるのがアフリカ人によるアメリカ音楽の愚劣な猿真似じゃ、どもならんだろうが。

 で、ここに挙げる連中は、そんな情けない猿真似ラップなんかじゃなく、ヒップホップの手法を創造のヒントとして、そのツールをモロッコの伝統音楽の構成要素できっちり埋め尽くしたもので、これは痛快なシロモノだったのだ。
 アラーの名が連呼される曲なんかはコンパクト版のカッワーリーみたいに聴こえなんでもないし(?)、日本の村祭りを彷彿とさせるサウンドが結果として出来上がってしまっている曲なんかも相当なファンタスティック。
 猿真似どころか、ここに新しい音楽ジャンルが出来つつあるんじゃないか。そんな期待さえ見えてくるような気がする。

 ヒップホップなる表現形態を、モロッコの土の伝統に、父祖より受け継がれる血の流れに帰還するよすがとして使い、ヒップホップより出てて、それよりもはるかに高みに至る。最高だね、こいつら。こんな連中ばかりなら、私もいちいちラップ小僧に腹立てずとも済むんだけどねえ。




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