ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

ルーマニアのジプシー・ポップス

2009-12-14 02:10:21 | ヨーロッパ

 ”Pretul succesului” by Carmen Serban

 ”MANELE”と現地では呼ぶんだそうです、ルーマニアのジプシー・ポップス。そのベテランの歌い手、カルメン・セルバン女史の2004年度のアルバムであります。(この人、以前にも別のアルバムを取り上げたことがあるような気もする。まあいいけど)
 文化錯綜する地、バルカン半島のルーマニア、しかもジプシー系ですから当然、さまざまな文化が彼女の歌には入り乱れて、アルバムを通して聴いて行くとクルクル目くるめく万華鏡の世界でありますな。演奏面では特に、複雑に変化しつつパワフルにスイングするリズムの迫力が凄いです。

 地中海の潮の香りがするような南欧風のポップスだけど、カルメン女史の歌声には濃厚に泥臭いコブシがかかっていたり、アコーディオンの奏でるいかにもバルカン風のイスラミックなフレーズに導かれ始まるのが、意外にも昔の日本の戦意高揚歌謡みたいな時代錯誤気味な行進曲もどきだったり、何がどうなっているのやら予測がつきません。
 ともかく、さまざまに曲調は変わっても、すべては下世話な歌謡曲チックな泥臭さを濃厚に持っていて、芸術かましてやろうとか、変な上昇志向はかけらも窺えないところが偉いんじゃないかと思います。
 この庶民の猥雑なエネルギーと、音楽の上にさまざまに文化の混交するスリルなど、まさにワールドミュージックの楽しみの典型例といえましょう。

(それにしても下のYou-tubeの映像の中でダンサーたちがへんちくりんな踊りを踊ってますなあ。”セクシー健康体操”とでも呼ぶしかないだろ、みたいな奴。この種のものを見て背筋がゾワ、と来る、そんな楽しみもまたワールドミュージックならではのお楽しみと申せましょう)





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