ワールドミュージック町十三番地

上海、香港、マカオと流れ、明日はチェニスかモロッコか。港々の歌謡曲をたずねる旅でございます。

君よ知るや南の国

2012-02-05 04:29:27 | ヨーロッパ

 ”Sale Di Sicilia”by Edoardo De Angelis

 夕食後にダラダラとテレビを見ていたら、そのまま居眠りしてしまい、夜中に目を覚ましたら風邪でも引いたのか、クシャミと鼻水が止まらない。もう、鬱陶しいなあ。いつまでも続くこの寒さ、なんとかならんのかね。などと呪詛の言葉を吐きつつ。
 こんな具合に冬に倦み、春の日差しが恋しくなったらイタリア物を聴くことにしている。これが赤道直下の音では、オノレが身を置く現実とかけ離れ過ぎてしまうし、イタリアレベルの”南度”が、遠くはるかにいる春を偲ぶにはちょうどいいんではないかって気がするんで。

 という次第で、今回の Edoardo De Angelis。イタリアのシンガー・ソングライター。ということぐらいしか、知らない。もちろん、この人の歌を聴くのも初めてだ。おそらく、長くイタリアの人々に愛されて来た歌い手なのだろう。いかにもそんなものを感じさせる悠揚迫らざるマイペースの低音ボーカルで、文字通りの気ままな歌を聴かせる。力まず、感情に走らず、思いをそのまま、「あ、そういえば、今思い出したんだけど」くらいの気軽さで歌にしてゆく。

 生ギターの弾き語り中心の隙間だらけのサウンドも、いかにも気さくなおっさんの世間話、みたいな気のおけない雰囲気を盛り上げる。
 その歌のうちには強い潮風の香りが吹き抜け、鋭い太陽の光が宿っていて、おそらくは南イタリア出身の人なのだろうなあ、あるいは島の。と思ったりしていると、バック・コーラスにナポリ民謡チックな女性ボーカルが入ってきたりで、やはりそうなのかなあと。

 ジャケも歌詞カードも、ほとんど真っ白けの装丁もまた、地中海の陽光に干しあげられた南イタリアの古い家々の壁みたいだ。
 なんだか朝の静かな海岸を散歩しながら、浜辺に打ち上げられている漂流物に、遠い昔の出来事に思いを馳せる初老の男の姿が浮かんでくる。
 とはいえ、彼がのんびりと歌い流すメロディに流れる濃厚なセンティメントのそのまた奥には、実はとんでもない頑固オヤジの鉄の意志がズド~ンと横たわっているのも、きっと忘れたらいけないことなのだろうね。
 ハードな生活と聞く、イタリアの南の土地の日々は。




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