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絵本の話を中心に、好きなもの、想うことなど。

「まかて」まつり・続く

2020-02-13 11:29:01 | 好きな本

グッドバイ』を読んだ後で、まだまだまかてさんの作品を読みたくて、
本の紹介文から2冊選んで、図書館で借りてきました。

  

恋歌』の方は、樋口一葉の師であった、中島歌子という人の話だということで。
残り者』の方は、江戸城明け渡しの前夜に、城内に残っていた「残り者」が
居たという設定が面白いなーと思って。


どちらを先に読もうか迷ったすえ、なんとなく『恋歌』を先に読みましたが、
それは正解でした。
町人の娘が水戸藩士の家に嫁ぎ、幕末に何もかも失い、歌ひとつで身をたてていくー。
中島歌子という人の名をこの本で初めて知りましたが、中ほどを過ぎた頃から、
時代の大波に飲みこまれ、読み始めた時には思ってもみなかった壮絶な場面が
主人公を待っていたので‥。

大老井伊直弼が襲われた「桜田門外の変」のことは知っていても、襲った方が
水戸の藩士であり、当時の水戸藩はどのような状況であったのか等々、思っても
みたことがなかったので、たいそう歴史の勉強にもなりました。

それにしても、やるせないです。自分の意思ではなく主君に仕えるために
むかしながらの鎧兜のいでたちで、大砲や鉄砲を備えた軍に立ち向かって
行かなければならない夫を見送るのはー。

印象的だったのは、囚われの身になってもまだ、自分の子供たちに学問を
授ける母の姿。
死んでいく身に学など必要ないと揶揄されても、明日御沙汰が解かれるかも
しれず、自由の身になったときに、学がなければ生きていけぬから、と毅然と
言ってのけるのです‥。

潔いという言葉は、時にものすごく残酷だと思いました。


残り者』は、江戸城の大奥勤めをしていた、役職も生い立ちも身分も
違う5人の女の、明け渡し前夜から当日朝にかけての話でした。

天璋院様のお着物を縫う「呉服之間」勤めのりつ
お食事の用意をする「御膳所」で働くお蛸
諸々の用事を言いつかる「御三之間」の、ちか
静寛院様の「呉服之間」の、もみぢ
そして、他4人よりも格段に身分が上の「御中臈」ふき

皆事情はそれぞれでも、自らの職場であった大奥を去り難い想いは
同じで、時代や場所はまるで違っても、働く女性としての誇りは
共感できるものが多く、胸が熱くなりました。

物語の終わり方もよく、こちらを後から読んで(やはり)正解、と
また思った次第です。
そして、2冊読み終わってから知ったのですが、この2冊は「対をなす」
作品として知られているようでした。偶然とはいえ、それを選んで借りた
なんて!とちょっと嬉しいような気持ちになりました。


まかてさんまつり、まだ続きます、たぶん。


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