my favorite things

絵本の話を中心に、好きなもの、想うことなど。

150年後

2020-08-11 16:04:14 | 好きな本

やっと順番がまわってきたマハさんの『風神雷神 上』を受け取りに
行った際、まかてさんの作品は何が今図書館にあるかなーと棚をのぞいたら、
この本1冊だけがあったので、なんとなく借りてしまいました。



まずは『風神雷神 上』を読みーこちらの舞台は安土桃山なので、
あたまの中は、信長の頃を思い浮かべたまま、明治時代のはなしを
読み始めました。

本当に、なんとなく借りてきたため、明治神宮を作るにあたって
尽力した人のはなし、くらいの認識しかなく、そういえば、
明治神宮」そのものも、私の中では漠然としているなあと
思っていました。

そんな情けない状態だったので、初めて知ることが多く、
安土桃山の南蛮寺や俵屋宗達の描いた絵のことを想像していた
あたまの中が、ぐるぐるしながらも、ご維新後の東京についていこうと
動き始めました。



題材そのものもとても興味深いものでしたが、それを、当事者
(明治神宮を東京の代々木に作ろうと言いだした人たち)を中心に
書くのでななくて、三流新聞社の記者を主人公にして、それを記事として
追わせる、といういう視点がとてもよかったと思いました。
(しかもそのネタを持ってきたのは、主人公亮一でななく、同僚の女性
記者だったところも)

さらに、この物語に深みを与えているのは、主人公の新聞記者が、
遷都の時に若干17歳だった明治天皇を、御簾の中の現人神ではなく、
一人の青年として、その心持ちを推察していることであり、そこから
明治という時代を生きた自分と、周りの人々にとっての「明治時代」を
わかろうとしている姿が等身大で描かれているところだと思いました。



新聞社というものも、時代が明治に変わった頃からたくさんでき始め、
初期の頃は、記者は記事にするネタを探してくるために「探索」と
呼ばれる人を(暗黙の公認?で)雇っていた、なんていうことも
初めて知りました。

中でも、市蔵という渋い「探索」が出てくるのですが、彼が、引退した
あとに、主人公の亮一が訪ねて行く場面があり、そこで市蔵がこう話すのです。

「何せ、公方様のことは身近に感じていても、帝についてはただ、
やんごとない、神のごときお方だという捉えようしか持ち合わせて
おりやせんでしたからね。学のある者は尊王を頭では理解して
いたでしょうが、それでも実感ってものがねぇんです。その尊いお方が
こうしてわざわざ下向してきてくだすったと思ったら、救われた心地に
なったじゃありませんかねえ」

当たり前のことですが、いつの時代も、その時その時を、まいにち毎日を
フツーに生きている私たちのような人たちがいるわけで、えーと、幕府が
なくなったら江戸はどうなの???と不安に思っていた人が大勢いたわけで、
市蔵の言葉は、いつの時でも、の「わたしたち」だなーと、すっと納得が
いったのでした。


タイトルの「150年後」は、神宮の森が本当に完成するのにはそれくらい
かかるということで‥創建が1920年なので、今でも森は途上にあると
いうことですね。

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(どこにいても)分かり合える VEVARASANA

2020-08-01 17:13:44 | 好きなもの・Tシャツ

(たしか)2年前の誕生日にこの本をもらいました。
 
世界には、本当にたくさんの言葉があって、それを話している
たくさんの人が居て。でも消えてしまう言葉もたくさんあって‥を
紹介している本なのですが。(アイヌ語のイヨマンテも入ってました)


その中で、アフリカのボツワナやナミビアなどで、約20万人のヘレロ人、
ヒンバ人、ンバンデル人らで話される「ヘレロ語」に、


VEVARASARA  ヴェヴァラサナ  という言葉がありました。

本来は、彼らは(あるいは人々は)尊敬しあうという意味の
動詞が転じて、「遠く離れていても気持ちはいつも通じ合っている



2020年。
会いたい人、行きたい場所に、思うように出かけられず、会うことも叶わない、
私たちのための言葉では?と、(うちの店長が勝手に)思い、それをTシャツの
新柄にデザインしました。



グレーボディに紺色でプリント。

 


こちらはネイビーボディに白色でプリント。
 

 

バックの衿元にはこんな帽子みたいな?絵が入っています。

 

これ、ヘレロの人たちがかぶっている帽子なんです。
VEVARASANA という言葉を教えてくれたヘレロの人たちへ敬意を込めて、ここに
入れることにしました。

サイトにはまだ載っていないので、ご注文はコメントやメールで承ります。
グレー+紺色 ネイビー+白色 以外の組み合わせも絶賛受付中です。
色々考えてご注文ください。

 

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バンクシー展@アソビル

2020-07-26 18:35:05 | 好きなもの・美術館や展覧会

名前はね、知っていたし、近頃もニュースになっていたし。
でも割と自分の興味からは遠いところにあったのですが、
夫が是非とも観たいと言いまして。
連休でもあることだしと、娘も含め家族3人で、横浜まで出かけました。

うちの店長も書いているように、こんな感じの作品ばかりをイメージしてました。

会場入ってすぐのところにも、バンクシーが出現したこんなマップもあったし。


そしたら、それ以外にも、リトグラフ作品がとってもたくさんありました。
(立体作品や映像もありました)
 



 赤がとても印象に残ります。


大変見応えがありまして、これでもかこれでもか、と続きます。
事前にスマホにアプリを入れておくと、音声ガイドを持参のイヤホンで
無料で聴くこともでき、それがまたほぼ全ての作品に解説が付いているのです。
(こんな感じで使えます)


たくさん観たばかりで、何がなんだか状態ですが、この、レコードジャケットにも
なった作品が好きかな。



バンクシー。
なんたって、名前がいいですよね。なんかやりそうな人の名前です笑。

そして抗議や反戦のメッセージを、アートで表す、ってやっぱりso cool!
「今まで」を知ったことで、「これから」がとても楽しみになりました。

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ルイス・ミショー

2020-07-22 17:12:11 | 好きなもの・音楽や本

数か月ぶりに図書館へ行き、YAコーナーの棚で
こんな本を見つけたので借りてみました。



ルイス・ミショーは、1938年、43歳のときにニューヨークの
ハーレムに本屋を開きます。

ナショナル・メモリアル・アフリカン・ブックストア
黒人に関する本ばかりを扱う書店、通称「ミショーの店」、そして
訪れる人は彼のことを「プロフェッサー(教授)」と呼んでいたそうです。

マルコムXをはじめ、ミショーのことを慕い、店に通って来ていた
常連は私でも、あ、この人なら知ってる、という面々も多く‥。
ミショーの影響力が計り知れないものであったことは、容易に
想像ができます。

作者のヴォーンダ・ミショー・ネルソンは、ルイス・ミショーの
弟の、孫にあたる人だそうで。彼の入念なリサーチとインタビュー、
新聞に載った写真などからも、その時代の雰囲気を読み取ることが
でき、とても面白い構成の本だと思いました。
(訳者である原田勝さんのログがこちらに載ってます

:::   :::


なぜ彼が本屋を始めようと思ったのかー。
こんなふうに書かれているページがあります。

わたしは多くの黒人たちと接したが、残念ながら、自分たちの
歴史をちゃんと知っている者はごくわずかだった。
自分がどこから来たのか知らなければ、どこへ行こうとしているのか
わからない。自分にどれだけの価値があるのか知らなければ、働いた
対価をいくら受け取るべきなのかわからないはずだ。自分が何者なのか
知って初めて、現状を改善できる。
黒人は眠っている。いや、眠っているわけではない。目はさめている。
ベッドの端に腰かけて脇腹をかいているのだ。

今、自分の胸の中にある気持ちを、分析したり、書き表すことは
とてもできませんが、この引用した部分はどんな人にも当てはまる
とても大事でとても普遍的なことを言っているのだと感じます。

私は、ルイス・ミショーという名前を、この本を目にするまで、
一度も聞いたことがなかったし、彼の本屋のことも何も知りませんでした。
でも、今は知っているし、ずっとむかしに観た映画「マルコムX」
今だったらもっとよくわかると思うのです。

そして、本ってすごいと、また思うのです。

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愛すべき「すかたん」

2020-07-18 19:03:47 | 好きな本

こんな感じの、面白そうな表紙だし。
題名だって、すかたん=(見当違いな人、間が抜けたことをする人)
なので、しっかり力を抜いて読み始めたところ‥。


やはり、浅井まかて作品はすごいなあと、すっかりやられてしまいました。
「まかてさん、こんな本書かれたら、惚れてまうやろ」笑です。

時は江戸時代だけど、場所はお江戸ではなく、「天下の台所」の大阪です。
主人公の知里は饅頭屋の娘。藩士の夫に見初めまれてお武家へ嫁ぎ、
夫の任務に従い共に大阪暮らしが始まって間も無く、夫は不運にも病死。
嫁ぎ先には居られず、されど実家へも帰れず、子供に手習を教えて暮らしを
立てていましたが、仕事先はクビになり、空き巣にも入られ、途方に暮れて
いたところに、たまたま居合わせた「若旦那」。ちょっとした口喧嘩の
売り言葉に買い言葉が「縁」で、青物問屋のご寮人さん付きの上女中という
新たな就職口が見つかります。

何もかも目新しい大店での暮らし。ご僚人さんには叱られ続けですが、
次第に大阪の旨いものに知里が目覚めていく様子と、人は良いけどどこか抜けてる
「すかたん」の若旦那との、付かず離れずの気持ちが、とてもいい具合に
描かれ、あともう少し、あと1ページと、手が止まらず、気がつけば
あっという間に読み終わってしまいました。

若旦那がただの「すかたん」ではなく、青物馬鹿で、品種改良を試みて、
新しい「蕪」を作ろうとしたり、農家と問屋と小売店の関係を考え直して見たりと
いうあたりもとても話を魅力的にしているし、色街の芸妓が、知里と若旦那の
関係に関わっているだけでなく、旦那様とご僚人さんの長らくこじれた糸の
発端もそうであったことが下地にあったり、と、とにかく上手いんですよね、
この度のまかてさんも。


::: :    ::: :


つかえていた胸の中の何かが、読んでいるうちに溶けてきて、流れていくのが
わかるようで、小説ってこういう効用もあったのだなーというか、まあ、
効用なんかなくたって、面白ければそれで良いのですが。

ああ、面白かった。
生きていれば何か新しく、何か面白いことが起こるかも、ってまた思いました。


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ピーター・ドイグ展@国立近代美術館

2020-07-13 17:50:50 | 好きなもの・美術館や展覧会

2月に東京国立近代美術館工芸館へ行ったときに、次の
東京国立近代美術館の展示が「ピーター・ドイグ」という画家で
日本ではお初の方だと知りました。

飾ってあったポスターの絵はたしかこの絵。

美しく幻想的な絵を観てみたい気持ちと、自分より少しだけ年上の画家の作品って新鮮な
気がして(笑)、前売りペアチケットを購入し、会期を楽しみに待っていました。

一時は外出自粛期間に会期が終了してしまうのでは?と諦めていましたが、その後
会期も10月まで延長され、「新しい日常習慣」のもと、無事昨日観ることができました。

一日早く観に行った娘情報で、館内の作品は撮影自由だと知り、↑の画像も
館内で撮影したものです。
そして、娘曰く(3つに分かれている展示の中で)最初のところが一番よかった。


なるほど~と、行ってすぐにわかりました。

「第1章 森の奥へ1986年~2002年」では、ポスターになった↑のような
幻想的だったり、抒情的だったり、あるいは色使いがとても美しい作品ばかりなのです。

たとえば、「天の川」


「ブロッター」


中でも私のお気に入りは、この2枚と‥その下の三分割されたような絵。





どの絵もとても大きいのです。2メートル×3メートルとか。
なので、少し離れたところから観ていると、美しいだけではなく、分割されている
構成がとても不思議な感じで見えてきて‥。
解説にもありましたが、水面に写っているのならば、そっくり同じ風景が水面に
写し取られているはずなのに、それは微妙に違っていて。
合わせ鏡の中に別のものが写っているような怖さがあり、そのちょっと怖いところが
違和感となり、怖いけど見たい、というような気持ちに繋がっていくのかなと
思いました。

「スキージャケット」
この作品の解説でも、真ん中であえてキャンバスを繋ぐことで、合わせ鏡のような
効果を生んでいると‥そうやって観ると別のセカイが同時進行しているようで
怖くて不思議な気持ちになります。(元のモチーフはニセコの広告だったようですが)




「第2章 海辺で2002年~」

ロンドンからトリニダード・トバコへ、活動の拠点を移してからの作品です。
 
いいなあと思ったのは、こちらの絵かな。
「ポート・オブ・スペインの雨(ホワイトオーク)」というタイトルです。

色使いは明るくてきれいだけど、壁があまりにもきっぱりしているのに、描かれている
人は影のような、幽霊のような感じで、かなり不穏ですよね。黄色い壁によって
分断されているこちら側とあちら側のようにも見えるし、ライオンが自由に歩き回って
いることが人間の不自由さを強調しているようにも見えますね。


とても興味深かったのは、カヌーのモチーフがこのエリアの絵の中にもあり‥。

こんな大きく描かれているものから、言われなければわからない程、
小さなものまで。
(カヌーのモチーフのもとは、映画13日の金曜日のシーンからだそうです。
が、私は映画を知らないのでそうなんだーと思うのみ)

1枚の絵の中の構成として観るのではなく、カヌーに主体を置いて観ると
あらゆる画面の中に、「カヌーが入りこんでいる」ようにも見え、もはや
画面は自由に行き来するカヌーの「舞台」とも言えるのではないかーと
最後の方に書かれていたのがとても面白いと思いました。なるほどねー。

そうなると、今後「灯台」も気が付くとあらゆる絵の中に?!となるかも
しれず、それを新たに発見していくという楽しみ方もできるかもしれません。
  


「第3章 スタジオの中でーコミュニティとしてのスタジオフィルムクラブ2003年~」

タイトル通りのクラブを画家は主催していて、今日はこの映画ですよ、と
知らせるためのポスターがたくさんありました。

たとえば気狂いピエロとか、

ストレンジャーザンパラダイスとか。



会期は10月11日まで。公式サイトには3DVR画像があって、
ぐいーんと近づいて絵を観ることもできます。

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推し(または最近買った絵本)

2020-06-27 12:38:50 | 好きな絵本

少し前から?だいぶ前から?「推し」って言葉よく
聞きますよねー。
推しのメンバー→推しメン→推しになったらしいですけど。
箱推し」っていうのを最近知って、面白いなあと思い
なかなか気にいってます。(対義語は単推しだって)

そういう変遷を知ると、この使い方はちょっと違いますね。

絵本界における私の「推し」笑‥そして最近買った絵本。

 今月号の「こどものとも」

 こちらの方も早く買わねば。




とても美しい水彩画。りすが、とにかく可愛い。
昨年の6月は西荻のウレシカさんで植田さんに会えました。
6月は、植田さん月間だなー)

あと最近買ってはいないけど、ささめやゆきさんも推し。

八生さんの絵本も2冊買ったので、載せておこう。

 


そしてさらに、ぜんぜん絵本ではないけど。




こうやって並べてみると、好きな絵本や読みたい本が色々あって、
私のまいにち楽しいじゃん、って感じです(笑)。

わりと強引な締め方ですが、本日6月27日ブログ誕生記念日でした。

始めなければなにも始まらなかったわけなので、
ほんとうに(もう何年前かわからないけど)ブログ始めて、
よかったです。ありがとうございます。
これからも‥


望み叶うパラレルな世界へ
明日はちょこっと違う景色書き加えていこう 

スピッツ新曲猫ちぐら」より。


の気持ちで、続けていきます。

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外出自粛中に買った本

2020-06-26 16:55:59 | 好きなもの・音楽や本

絵本は1ヵ月に1冊くらいは購入するのですが、
ものすごく読みたいか、手元に置いておきたい本以外、
基本的に最新刊本は買わないきまりが、なんとなく
自分の中でできていました。
(単行本の)本棚がいっぱいで、置くところがないのと
図書館で予約すればいずれ順番がまわってきて読めるから。

でも。
図書館が閉館していたので、(家に読んでない本があるけれど)
新しい本を久しぶりに購入しました。


  『蜜蜂と遠雷』のスピンオフ。
6つの短編が入っています。

映画を観てしまったあとなので、表紙の帯にもあるように、
どうしても演じた役者の方のイメージに引っ張られてしまいますが、
それでも、巨匠ホフマンが初めて塵と会った時のはなしとか、
カレッジ時代のマサルの話とか、なかなか面白かったです。
(桃李さんが演じた高島明石さんの話がなかったのは少し残念でした)

もう一度『蜜蜂と遠雷』を読み返してみたくなりましたが、
なにしろ長いので、躊躇したままになってます(笑)。




『祝祭と予感』を本屋さんで買った時に、この本を見かけて、
こっちも買っておこうかな、でも読みきれるかな、と迷い、でも結局は
翌週にまた買いにいきました。

 表紙がステキじゃないですか。

春樹氏が翻訳した本も、むかしはすべて買って読んでいたのですが、
チャンドラーあたりからは、図書館のお世話になっています。
この本も、いつも通りの日常だったら、きっとそうしていたと思いますが、
たまには買うのもいいよね、という気持ちになったのは、表紙が気に
いったからかな。

ジョン・チーヴァーの作品を読むのは初めてで、しかも中は2段組みに
なっているので、躊躇したのですが、冒頭の春樹氏の解説と、巻末の
柴田さんと春樹氏の対談も交互に読んだりしつつ、なんとか読み終える
ことができました。

短編小説の名手。都会派。雑誌ニューヨーカーの常連作家。
ピューリッツァ賞受賞‥こちらは紹介文の最初に書かれている光の当たって
いる側で‥。かなりの量のアルコールを摂取。同性愛的嗜好との折り合いに
苦悩‥光の反対側あり。


表題作の『巨大なラジオ』は、1947年に雑誌ニューヨーカーに掲載
された作品だそうで‥大きなアパートメント(日本的に言えば高級
マンション)に住む夫がある日「巨大な」ラジオを買ってきて、その
姿かたちに嫌悪していたはずの妻の耳に、なぜか同じアパートメントに
住む人たちの暮らしぶりが(ラジオから)聴こえるようになり、妻は
嫌悪しながらも、聴くことをやめられなくなるというはなし。

不条理ではあるけれど、ストーリーの着陸地点よりも、私は、
2020年に突然現れたウイルスによって、世界中のあらゆる場所の人たちが
家の中でのステイを求められている私たちの方がよっぽどシュールな
セカイに住んでいると思え、そんな中で、なぜ1947年の古き良きアメリカの
はなしを読み、その中の人たちを理解しようとしているのか、と思って
いました。

もう一つの表題作『泳ぐ人』。
私はこのはなしが、一番面白く、また一番感じ入るところがありました。

郊外の大きな住宅‥どこの家にもプールがあるような‥に住む主人公が
パーティに呼ばれていった先の家のプールから、点在する家の、プールで
泳ぐことを続けながら自宅へ帰ってみようと思い立つはなしです。
主人公は家には帰り着きましたが、スカッとした気分にもならず、
ココロ温まるようなことも起こりません。

でも、小説って、読むことによって、知らないセカイを知り、知らない
物事に思いを馳せることなので、そういう意味でとても面白いはなしでした。

どんな物語のなかにも存在する普遍性。そんな言葉が読んでいる間中
あたまの中にありました。





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神田日勝 大地への筆触@東京ステーションギャラリー

2020-06-24 17:34:38 | 好きなもの・美術館や展覧会

少し前から美術館などが再開され始めました。
2月中に前売り券を買っていたものが2つあるのですが、
自粛開け最初の展覧会は(なぜか)こちらになりました。



神田日勝さん。

昨年の朝ドラ『なつぞら』で、吉沢亮さんが演じた山田天陽くんの
モデルとなった画家で、もしも、そのドラマを観ていなければ
知ることがなかったかもしれません。

熱心な『なつぞら』ファンだった私と娘、一緒に観ていた夫の
3人で久しぶりに出かけた美術館‥東京ステーションギャラリー
私は3度目でしたが、他の二人は初めてで、ね、いい美術館だよねーと
いう紹介の気持ちも含めて(ちょうどいい規模だし、レンガの壁も
私はとても気に入っているので)、楽しいお出かけになりました。


日勝さんは、ドラマで描かれていたように、7歳の時に東京の練馬から
家族とともに北海道へ入植者としてわたってきます。
後に東京芸大へ進む兄の影響で(ここもドラマ通り)、絵を描き始め
農業を続けながら絵を描く道を選びます。
道内の展覧会や独立展で入賞、入選を重ねるも、1970年に体調を壊し、
未完の作品を残したまま亡くなってしまいます。32歳の若さでした。

ドラマの中で天陽くんも描いていたように、農耕馬の絵とか、
十勝平野の絵とかを思っていたのですが、会場に入ってわりとすぐに、
日勝さんが、昭和12年生まれだということに気が付いてからは、
その時代や年齢と、描かれた作品を意識して観るようになりました。
というのも、私の母が昭和11年生まれでして、昨年お亡くなりになった
和田誠さんもそうだったと思うのです。
ということは、日勝さんも、まだご存命でしたら、ずっとずっと
絵を描き続けていたかもしれないのだと思ったり。
この絵を描いた年に、私が生まれたんだなーとか思ったり。
60年代のポップアートのこととか、大阪万博の太陽の塔のこととか、
気になっただろうなあとかも思いました。

会場は、プロローグ、エピローグのあいだを、

壁と人 牛馬を見つめる 室内/室内風景 アンフォルメルの試み
十勝の風景  の5つに分けていました。

ベニヤ板にパレットナイフやこて等を使って毛並みの1本1本まで、
丹念に描いた馬や牛。
あふれんばかりの食べものを並べた「静物画」や、画家の室内。
壁、天井、床すべて新聞紙で埋め尽くされた部屋に、正面向いて
座る男‥。どこからが家の壁でどこからが空なのか大地なのか
わからないほどにセピア色で塗りつくされた「家」という作品‥。

どの作品にも作者の情熱が感じられるのはもちろんのことですが、
自分の中の「葛藤」を、絵の中で「作品」に昇華させているように
私には思え、絵を描く喜びや楽しさとともに、描かずには生きて
いかれない己のサガを、誰よりも自分自身がわかっている方
だったのでは、と感じました。


そして。
チラシにも使われ、もはやシンボルとなっているような、印象的な
絶筆で未完の作品ですが。(こちらで見ることができます)

ドラマを観ていなかったら日勝さんを知ることはなかったかも、と
冒頭で書きましたが、この未完の作品をどこかで目にしたら、まったく
知らなかったとしてもとても興味を惹かれ展覧会に足を運んだだろうな
と思っています。

一頭の馬を描こうとするときに、すくなくとも全体の下描きをしてから、
(あるいは背景をまず塗ってから)塗り始めると思うのです。
でも、日勝さんの馬は半分だけが仕上がっていて、特に顔や目は丁寧に
描かれているのに、腰のあたりから後ろ足は鉛筆の下描きすらないのです。

彼の描き方がそれによってわかった的な注釈が加えられていましたが、
どの馬もそんなふうな描き方だったのでしょうか。
作者には、もう自分には時間がないことがわかり、あえて半分だけを
力をこめて描いたのでは、という見方もできると思うのです。

もしもこの絵が鉛筆の下描きの段階で絶筆となっていたら、それはそれで
大変貴重な作品だったでしょうが、でも、これほどのインパクトを
観る側に与えることはなかったかもしれません。
真実はご本人のみ知ることだし、作品から受ける感銘だけを私たちは
胸に抱けばよいのでしょうが、それでも私は、あえて謎を残した画家として
神田日勝さんのことを覚えていようと思いました。



東京での会期は残りわずかですが、機会があればぜひ。
向き出しのベニヤ板と、かわいい馬の目がとても印象に残ります。

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ものすごーく久しぶりに

2020-06-22 11:51:08 | 好きなもの・ちくちく

好きなもの・ちくちく

というカテゴリーがあることをふと思い出し(笑)。
開けてみたら、2015年のお正月に投稿したきりでした。

でもわたし、がま口作ったりしたよね?と思い
調べてみたら、別のカテゴリーに入れてましたよ。

2018年9月に参加したワークショップ

リフ編みのオーナメント っていうのも見つかりました。
こちらは2017年12月。


ちくちく ってこういうもののことを言うんだよねー的な
体験を久しぶりにしたので、その記念と記録のために。






お手本にさせていただいのたのはこちらやこちら。
 

カード入れのままでももちろんステキだったのですが、
小さな横型の印鑑を入れる袋をずっと作りたいと思っていたので
巾着仕様にアレンジ(ってほどでもないけど)してみました。



初めての巻きかがり縫いにてこずりましたが、
色合わせを考えたりすることで、脳が活性化された感じで、
楽しかったです。

いただいた生地がまだあるので、また何か作ってみたい
ような、すこしお休みしたいような(笑)。

S子さん、どうもありがとうございましたーーー。


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ありがとうございました・現品販売終了

2020-06-21 19:36:57 | 好きなもの・Tシャツ

4月20日から始めたTシャツの現品販売、
本日をもちまして終了いたします。

たくさんの方にご購入いただき、
大変ありがたく思っています。

どうもありがとうございました。


少しづつ明るい方向に、そして今までとは
別の方へ向かって、歩み出しているのかも
しれませんが、鬱々とした気持ちは多かれ少なかれ
今後も残っていくと思います。

が、そんな時は、幾らかでも気持ちが軽くなる
ような、鼻歌混じりで散歩に出掛けたくなるような、
そんな日々のお供にしていただけるようなTシャツで
あるように、と思っています。

通常オーダー絶賛承り中です、ブーツ&スティックス

どうぞよろしくお願いいたします。





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もうすぐ終了・現品販売

2020-06-14 12:00:22 | 好きなもの・Tシャツ

ブーツ&スティックスからのお知らせです。

と、下記のように載せたのは、4月20日のことでした。
(先が見えない不安と苛立ちでぐるぐるしてました)


「思うようなお出かけが叶わない今、せめて頭の中での
お出かけや、近くの公園へのお散歩、フツーの家事や、
庭仕事、あるいは在宅ワークの時などに、せめて気持ち
だけでもなんとなく楽しくしていただければ、と、
昨日急に思い立ち、24枚のTシャツをいつもとは違う
値段設定で、販売することにしました。」

私たちのモットーは、 着ているだけで、フツーの毎日が
なんとなく楽しく
なるような、足取り軽く散歩に出たく
なるような、そんなTシャツ 
だから。


その後たくさんの方に見ていただき、ご購入いただき、
6月9日現在、スタンバイTシャツは5枚になりました。
6月14日現在、スタンバイTシャツは4枚になりました。

ほんとうにありがとうございます。

6月20日(日曜日)の父の日に間に合うお送りまで、と
決めたので、あと1週間くらいでしょうかー。
(それ以前に4枚のTシャツが旅立っていけば終了です)

通常2800円(税込)→ 2500円(税込)送料無料
レターパックライトでお送り致します。

 


リンク先に詳しい説明載ってます。

№2 デリバリーTシャツ
№20 FEEL Tシャツ
№9 レーシング・バイクTシャツ
№8 モーターサイクルTシャツ
№13 ラジオハバナスTシャツ


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現品販売のお知らせ‥内容更新しました(緑字部分)

2020-05-15 17:38:44 | 好きなもの・Tシャツ


久しぶりに、ブーツ&スティックスからのお知らせです。

超家内制手工業のブーツ&スティックスでは、お客様の
ご注文をいただいてから、1枚1枚、そのオーダーに
合わせたTシャツをシルクスクリーンでプリントしています。
そのため、普段でしたら、翌日すぐに配送、というわけ
にはいきません。

ですが、ここに、プリント済で、すぐに送れますよ~
というTシャツが6月14日現在4枚になりました。
ありがとうございます。(イベントでの当日
販売用だったのですが、この春の出店は見合わせと
なったので、新品のTシャツだけが残りました。)

私たちのモットーは、 着ているだけで、フツーの毎日が
なんとなく楽しく
なるような、足取り軽く散歩に出たく
なるような、そんなTシャツ 
です。

思うようなお出かけが叶わない今、せめて頭の中での
お出かけや、近くの公園へのお散歩、フツーの家事や、
庭仕事、あるいは在宅ワークの時などに、せめて気持ち
だけでもなんとなく楽しくしていただければ、と、
昨日急に思い立ち、24枚のTシャツをいつもとは違う
値段設定で、販売することにしました。

通常1枚2800円(TAX込)ですが、この24枚限り、
6月14日現在4
1枚2500円(TAXと配送料込み)でお送りします

絵柄、色、サイズ等に限りがあるためと、この機会に、
ブーツ&スティックスのTシャツを着たことなかった
方にもぜひお試しいただければ、という気持ちからです。
(もちろん、リピーターの方も大歓迎です)

レターパックライトなので、配送の日時指定はできま
せんが、ポストへのお届けなので、配送関係の方への
ご負担がいくらかは軽いかなーということと、対面受け
取りのことを考えました。(もしも、Tシャツは欲しい
けど、送るのはすぐでなくてもOKという方がいましたら
お取り置きも可能です。)


★販売期間★ 4月20日月曜日 12時~ 
       6月の父の日に間に合うまで
       もしくは売り切れたら  


★販売価格★ どのサイズも1枚2500円。  
       ※配送料込み


★販売方法★ メールでのお申し込み 
       → bootsandsticks@gmail.com


       このブログのコメント欄でのお申込み

       フェイスブックのコメント及び
       メッセンジャー


       インスタグラムへのコメント及び
       ダイレクトメール


★販売手順★ 上記いずれかの方法で①~④を教えて
       ください。

       ①欲しいTシャツの番号 
       ②お名前

       ③配送先ご住所 
       ④宛先欄に記入する電話番号


返信に振込先を記入致します。ご入金の確認ができ
ましたら、レターパックライトにて発送します。
その際に追跡番号記したメールを送ります。


※もしも欲しいTシャツが重なってしまった場合には、
お申し込み時間の早い方とさせていただきます。

※この↓のログより、24枚のTシャツを紹介します。
 その番号でお申し込みください。
 6月14日更新しました。現品販売は4枚です。
   


新しいTシャツの着心地のよさと、
BOOTS&STICKSのオリジナルデザインTで、
もやもやとした気持ちがいくらかでも和らぎますように‥
そんな気持ちです。


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外出自粛のあいだ私なにやってたんだっけ 2

2020-05-15 17:35:05 | 日々のこと

今度はおもにこの1ヵ月半の本のはなしです。

読む本が手元にないわけではないのに、地元の図書館が休館!
というのが、じわじわ自分の中でダメージ?というか、負の感情の
芽生えになってきていることに気づきました。
ここの冒頭にも書きましたが、図書館が休みだとつまんない!!のです。

でも気を取り直して、娘が買って自分では読んでいなかった本を
読んでみることにしました。最初はこちら。

 

江國さんの本はずいぶん読んだつもりでしたが。
娘が買ってきた時に「こんなのもあったんだ」ノーマークだったな
という気持ちと、「へえ、エクニカオリ選んだんだー」大きくなった
なー(笑)という気持ちがしました。

2007年出版ですが、納められている短編の中には、ずいぶんむかし、
デビュー後すぐくらいに書かれたものもありましたし、
あの『きらきらひかる』の十年後が書かれたものもありました。
(図書館がやっていればここで『きらきらひかる』を借りて
読みなおすところだったのにー)

透明で傷つきやすかったり、ちょっと風変わりに思えたり、
一見そうみえるけど、でもすごくまともだよね、という人たちも居る、
江國作品の片りんがすでに見え隠れしている作品集っていう感じでしょうか。

私は前述の『きらきらひかる』から『落下する夕方』『神様のボート』とへと
読み進め、家族が描かれている『流しのしたの骨』とか、『抱擁、あるいは
ライスには塩を
』とか、『彼女たちの場合は』が好きですが、娘の読書は
次はこれを、と進んでいかないところが逆にすごいなと思ってしまします笑。


次はこちらの3冊をいっきに。
  

前々から読みたいなあとは思っていて、でも家にあるからいつでも
読める、と思っていた本だったので、こういう機会に読むことが
できてよかったです。

高校で初めて短距離を始めた男子が主人公で、1年生から3年生の最後の
大会までが描かれています。

予想通り?こういう話は、自分の好きな種類のはなしでしたし、
高校の同級生の陸上部の人たちが、なんで男女の中があんなに良いのか
やっとわかりました(笑)。
練習の仕方が、他の運動部と違いますもんね、陸部は。


高校2年の時の体育祭で、100m走の選手として出たことがあり、
隣を走っていたのが、何部の人だったか、忘れてしまいましたが、
きれいで足が速くて、たぶん3年生で、運動部の誰もが名前を知っている
ような先輩だったのです。
わたしはその時すごくスタートがよくて、その先輩にもしかして
勝てる?と思ったことを覚えています。
100mという距離がとても長く感じたこととともに。

『一瞬の風になれ』で、何度も何度も100mを走る描写が出てくるのですが
そのたびに、その時の気持ちが思い出されて、ああ、短距離ランナーって
すごいなあと思ったのでした。


そのあとには、近所の読書仲間(かな?)から「好きそうな本だから」と
手渡されたこちらを読みました。
 

はい、その通り。好きな種類の本でした。

江戸時代の参勤交代のはなしですが、前述の『一瞬の風になれ』に
通じるような「走り」に関するエピソードもあったりして、
面白かったです。ちょうどゴールデンウィークの頃に読んでました。


そのころ、FBで「7日間ブックカバーチャレンジ」というのがあって、
下記7冊をあげました。なぜその本なのか、を思い出すよい機会でした。

1冊目 オキーフの家
2冊目 遠い太鼓
3冊目 クレーの絵本
4冊目 サイダーハウス・ルール
5冊目 ベンジャミン・バトン
6冊目 アメリカの61の風景
7冊目 巨大なラジオ/泳ぐ人



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外出自粛のあいだ私なにやってたんだっけ 1

2020-05-14 16:11:07 | 日々のこと

3月30日(月)に、電車に乗って新宿伊勢丹へ行って以来
1ヵ月半くらいの間、駅までは何度か散歩しましたが、電車には
一度も乗っていません。
「電車に乗ってお出かけ」がいつ解禁されるのか、わかりませんが、
いつかこの春のことを思い出した時に、じゃあ私何してたんだろう?
と、なるに違いないので笑、その日のための覚書を。

土日の午前中にほぼ休まず行っていたスポーツクラブでのヨガの
レッスン。お休みになっているので、日曜日だけ少し長めのストレッチを。
土曜日までは、平日と同じストレッチと足裏マッサージを。

朝9時半からのレッスンに間に合わせるために、日曜日もそれなりに
起きて、慌てて家を出ることが多かったので、レッスンがお休みになった
はじめの頃は、なんか余裕ができて休日らしいなあと、一息ついて
いた感もあったのですが、でもやはり、いつも会う常連の方々と
挨拶をしたり、今日のあのポーズはちょっときつかったですよねーとか
話したりすることがよい息抜きになっていたのだなあと懐かしく
思っています。どうしているのかなー、あの方やあの方やあの方‥。
早くレッスン再開されないかな。また元気でお会いできるといいなあ。


4月になって最初にしたことは、マスク作りでした。
それまでは、外出の際にもノーマスクでして‥世間の雰囲気も今ほどには
マスクマスクマスクでなかったし、何より使い捨てマスクが苦手なのです。

何気なく、押入れの中に「あれ、何このガーゼ?」というのを見つけ、
頭の中であれこれ考え、ネットで簡単そうな作り方を調べ、ずっと昔に
集めていたパッチワーク用の布の残りで、合計8枚プリーツマスクを
作りました。(そして毎日交代で稼働中。)

毎日していたことは、フツーにシゴトと、近所への散歩。
それに加え、土日は、娘との散歩の時間が増えました。
川沿いの遊歩道とか、駅の反対側まで歩いてみるとか‥。
それまでも、よく話はしている方だと思っていたけど、日々の断片の中と、
ゆっくり歩きながらとではどこか違っているようで‥あ、こんなこと(まで)
はなしてる‥と感じる自分もいたりして(笑)。
「ママとの散歩たのしい」と言ってくれるので、それだけでも嬉しいことです。

自粛中のせいなのか、単に食べたかったからか笑、不明ですが、煮豆を
何度か作っていたら、ヒナタノオトさんのログに「まめまめ日報」というのを
見つけ嬉しくなり、おたよりしちゃいました。(記念に最後に掲載・笑)

そして、4月20日からはTシャツの現品販売をしてみることに。
迷いもありましたが、何か動いてみることはやはりよいことだと感じました。
体が動くから気持ちが動くのか、気持ちが動くことによって体を動かそうと
思うのかーいずれにしても、やってみてよかったです。
まだまだ販売は継続中ですが、お買い上げいただきどうもありがとうございます。
新しいTシャツの着心地、いいですよね?
なんでもっと早く、新しいの着なかったのかなーとか思ってしまいますよね(笑)。



タイトルの『まめまめ日報』を目にした瞬間、おっ、と思った。
わたしも時々煮豆を作るのだ。 
作り方のおさらいをして、豆を洗い、十分な量の水に浸す。
レシピに書かれた火加減に従順に、鍋の番人に徹しているとやがて
よい音と匂いがやってくる。 
そんな情景を頭に描いていたら、ふと、ビオラの種まきをしたことを
思い出した。 
 
ゴマ粒よりも小さい種を紙袋に入れてとっておき、翌年の春、
四角いクッキー缶の蓋に土を薄く敷いて、そこに蒔いてみたのだ。
何日くらい経ったときだろう。小さく細い芽がたくさん出てきて、
それを間引いて、いくつもの鉢に移した。
はかなげな芽は記憶の中では張りつめた糸のようだったが、
どんな色の花だったのか、そもそも花は咲いたのかはまるで
思い出すことができない。それは父が亡くなった翌春のことだった。 
 
ココロの整理には、何かとても手間(時間)がかかる作業が
よいのだ、きっと。 
 
 
ビオラの種まきは後にも先にも一度きりだが、煮豆はこれかも作る、
何度も作る。 
思うように出かけられない休日、時間はたっぷりと用意されている。
大好きな花豆にしようか、白インゲン豆にも挑んでみたい。
いやいやまずはホンマさんの真似をして、黒大豆を煮てみよう。 
 
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