my favorite things

絵本の話を中心に、好きなもの、想うことなど。

こどもの頃のお正月

2005-12-30 12:34:48 | 想うこと
 窓から外を見ているかぎりでは、真っ青な空に陽がきらきら
と輝いてとてもきれい。穏やかな日、という感じです。
(一歩外にでれば、風がものすごく冷たいですが)

 今年は、喪中なので、お正月の準備はいっさいなし。
そのせいか、街を歩いていても、喧噪が自分とは関係ないこと
のように思えます。

 
 子供の頃のお正月は、思えばたいへん特別な日でした。
朝、お風呂に入って(祖父、父の次が私と妹でした)、
母が用意してくれた新しい下着を着て、ウールのアンサンブルの
着物を着せてもらい、もう身支度がすんで、御祝のテーブルに
ついている祖父と父の前に「出て行って」新年の挨拶をします。
この時に必ず祖父か父が「お嬢さんたちの支度ができた」とか、
「お、今日はおしとやかだよ」とか言うので、私も妹も、
恥ずかしさ、照れくささでいっぱいでした。でも、きちんと
正座して、まず祖父に、そして父に「あけましておめでとう
ございます。今年もよろしくお願い致します」と言っていました。

 祖母は普段でも着物を着ていたので、新年の着物姿も珍しい
ものではなかったけれど、祖父、父の着物姿はお正月の2日間
だけでした。母は準備が大変なせいもあり、ほとんど着物は
着ていませんでした。
 私と妹のウールの着物、とても懐かしいです。絣模様とか、
格子模様で、色は紺やオレンジ、みどりの時もありました。
アンサンブルなので、羽織りがついているのです。
高校生の頃まで着ていたような記憶があります。

 朝、遅い御祝の食卓を囲んだ後の楽しみは、近くに
住んでいるいとこたちが遊びに来てくれることでした。年が
近かったこともあり、いとこ姉妹とは本当によく遊びました。
お正月らしい遊びは、かるた取りぐらいで、あとは何をしてたん
でしょう? ただ楽しかったという気持ちだけが、残っています。

 祖父も祖母も、そして父も亡くなり、あの頃のお正月は、
とっても遠いものになってしまいました。子供だった私も、
もうあの頃の母よりも「年上」に違いなく。今度は私や夫が、
娘の心にいつまでも残る「家族や親戚の思い出」を育んで
いかなければいけないときだと、思っています。
 子供の頃経験したことは、ほんとうに深く心に入り、
いつまでも支えとなってくれるものだと、何より私自身が
知っているのですから。



       ********


 お正月2日から7日まで、またまた三重県の方に帰省します
ので、ブログは(たぶん)お休みします。その間だけ、
テンプレートをブルーの犬に変更してみます。
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新しい年のカレンダー

2005-12-29 01:23:58 | 日々のこと
 全然実感がわかないままに、今年も残すところあとわずかに
なりました。まだまだ先のことと思っていましたが、もう
カレンダーを取り替える時期。時の経つのは、ほんとうに
早いです。

 使うのを楽しみにしているカレンダーは、買ったものではなく、
月刊クーヨン12月号増刊「クレヨンハウス絵本town」の特別付録
なんですが、とっても楽しいカレンダーです。

 たとえば、1月1日。元旦 角野栄子さん誕生日 とあり、
『魔女の宅急便』の紹介記事が載っています。翌日の2日は、
初夢の日 『ゆめ にこにこ』という柳原良平さんの本が紹介
されています。1月24日 給食の日 というのもありますよ。
そこには、いつまでも忘れない、給食 と書いてあり
『ますだくんの1ねんせい日記』武田美穂作 の紹介があります。

 作家さんの誕生日にはその方の絵本。何かの記念日には
それにちなんだ絵本。そう、絵本三昧の、その名も
「大判・絵本CALENDAR2006」です。
自分の誕生日は、どんな絵本なんだろう?と気になるところ
ですね。私のは、ヴァイオリンの日 で、『ヴァイオリニスト』
ガブリエル・バンサン作 今江祥智訳でした。

 あ、安西水丸さんの誕生日は、7月22日なんだ。
載っている絵本は『がたん ごとん がたん ごとん』ではなく
『クッキーのおべんとうやさん』とという絵本です。 ? 
どんな絵本なんでしょう? 早速さがして読んでみたい!

 こんな具合に、来年も絵本とともに忙しい年になりそうです。
おつきあいの程、よろしくお願いいたします。
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おくりものをめぐって

2005-12-26 16:40:57 | 日々のこと

 12月24日。うちにもサンタさんがやってきました。
サンタさん。今年は例年にもまして、大変だったことと、
思います。

 うちの娘(小3)は、「すぐに起きてしまう子供」で、
風の音、エアコンの室外機の音、もちろんドアがかちゃと
開く音にも、すぐに反応してしまうのです。それプラス、
「サンタさんはどうやって、カギが全部閉まっている家に
入ってくるのだろう?」という疑問を抱えているので、
ほんのちょっとのことでも、浅い眠りから覚めて話しかけて
きます。部屋の中は暗いのですが、枕もとや、足元あたりも
見渡して、「まだ来ていないね」・・・
欲しいもののリクエスト。今年はなくって「サンタさんに
まかせる」と言い切ったものの、その中味が心配だったせいも
あるかと思います。

 そんな状況の中、サンタさんは、なんとキーボードを
持ってきてくれました。(風の便りによると、部屋に入れたのは
夜中3時過ぎとのこと)テーブルの上などに乗せて、弾くタイプ
のものとはいえ、箱はかなり大きく、朝になって、私が
リビングに運ぼうとしましたが、見かけより重く、持ちにくく
もあり。ああ、これは大変だったろうなあと、サンタさんの
苦労を察しました。


 「なんで、ピアノがあるのに、またキーボード???」

 以前使っていた「もっとおもちゃな感じ」のキーボードが
壊れてしまってからは、ピアノの練習は、ちゃんとピアノで
していた娘。(注釈・うちには私が使っていたピアノがある
のですが、簡単に音が出せるキーボードばかり使っていて、
あまりピアノそのものには、触れていませんでした)

 「でも、キーボードもあると、下に降りていって、練習
 できないときもすぐに弾けるし(注釈2・ピアノは1階の両親
 のスペースに置いてあります)お父さんも練習できるから、
 いいじゃない」と私。

 「えぇー? お父さん、まだ練習するつもりなの?」

 夫は、10月に行われた、娘の初めてのピアノ発表会で、
娘と連弾したのです。
(ちなみに曲は『ミッキーマウスマーチ』でした)

 「サンタさんは、また、お父さんと連弾してもらいたい
 なあと思って、ピアノがあっても、キーボードをくれたん
 じゃないの」と、再度私。

 「ま、いっか」と言いながら、娘は、DJモードのボタンを
早速押して、遊び始め、夫は、「よく見ると、大きいよね、
前のよりか」と、なんだか嬉しいそうでした。

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ゆうかんなアイリーン

2005-12-23 16:30:45 | ひらきよみ(読み聞かせ)

 先週の金曜日(12月16日)は、今年最後の読み聞かせ。4年生のクラスでした。
選んだ本は、『ゆうかんなアイリーン』という絵本です。


 作者のウィリアム・スタイグは、 
『ロバのシルベスターとまほうのこいし』『ピッツァぼうや』でのほうが、
知られているかもしれませんね。

 私がこの『ゆうかんなアイリーン』を知ったのは、
リストにこの絵本が載っていたからで、そのリストは
「読み聞かせに向く110冊の本」として、「読み聞かせ
ボランティア養成講座」受講の際に、頂いたものです。

 私の住んでいる埼玉県のK市は、ちょうど去年の今くらい
から、市の図書館主催で、養成講座を開催し始めました。
講師の先生方は、長年家庭文庫を開いている方や、児童文学
研究の分野で活躍されている方で、市民であれば、誰でも
参加できる(3回続けて受講できるが条件)というものでした。
 ボランティアの読み手を増やし、小学校などでの
「読み聞かせの時間」の充実と、さらには子供たちの本離れを
減らすことが、全体の目的なのだと思いますが。
私のように、新米の「読み手」には、実践に役立つ話がたくさん
あって、とても勉強になりましたし、何より、読み聞かせをして
いくための指針のようなものを与えて頂いたと感じています。

 リストに載っている110冊の本は、講師の先生方が、
講座開催の前に、ご自分たちの経験に基づいて、話し合われて
選んでくださったとのことです。とりあえずは、全部の本を
読んでみようと思ってはいますが、私は今のところ80冊ぐらい
までいったかなあというところです。

 さて、『ゆうかんなアイリーン』ですが。
お話はとてもシンプル。アイリーンという名前の女の子が、
猛吹雪の中、お母さんが作ったドレス(お母さんはお針子さん)
を、お屋敷の奥様のところへ届ける、というものです。
ストーリーのほとんどの部分は、アイリーンが悪戦苦闘して
いる一人芝居を見ているようです。

 本選びをする際に、あまり季節にとらわれることは
ありません、と講師の先生はおっしゃいましたが、やはり暑い
時期に雪のお話を読むのは、気持ち的に無理があります。
なので、この『アイリーン』は、やはり冬の間に読みたいです。
学年はどこで?と考えた時に、すべての学年でOKかな?
と思いますが・・・。途中、何度もアクシデントがアイリーンを
襲い、アイリーンはくじけそうになります。でも、決して
引き返そうとはしないのです。そこらへんの気持ちの
「いったりきたり」は、低学年よりも、高学年の子たちの
ほうが、察することができるかなあ、と思い、4年生のクラスで
読むことにしたわけです。組み合わせる本しだいでは
(私たちは15分の持ち時間で、大抵2冊の絵本を読みます)、
6年生のクラスでもいけるのではないかと、思っています。


 組み合わせといえば。
2学期になって、初めて私とペアで、読み聞かせに入った
メンバーのAさんは、とてもおもしろい「組み合わせ」をして
くれました。(ほとんど毎回、私が読みたい絵本を先に伝え、
後からAさんが合わせてくれたのです。)

①私が『はなのすきなうし』を読みたいと言った時→ 
            『はなのあなのはなし』
②私が『どれがぼくかわかる?』に決めたと言った時→
            『おおかみのチキンシチュー』
③私が『ハリーのセーター』がいいなあと言った時→ 
            『もったいないばあさん』
④私が『ゆうかんなアイリーン』を練習していると言った時→
            『まゆとおに』

①は花と鼻の「はな・繋がり」5年生のクラス
②は動物シリーズ  1年生のクラス
③はハリーにセーターを編んであげたおばあちゃんと、
 もったいばあちゃんの「ばあちゃん・繋がり」2年生のクラス
④はアイリーンとまゆ、どっちも
 「勇気のある女の子・繋がり」  4年生のクラス

 こんな具合なのですが。
たぶん誰にもこんな繋がりがあること、わからないと思います。
でも、やっている自分たちが楽しいのです、とっても。

 
 読み聞かせに向く絵本と、自分が好きな絵本。
気持ちの中でごっちゃになってしまった時期もありましたが、
「みんなちがって、みんないい」的に、その時、その時で、
選んでいけばいいのだと、今は思っています。




 

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クリスマスの絵本・その6(夢と元気)

2005-12-20 15:58:41 | 好きな絵本

 すぐそこまで、クリスマスが来てますね。日本各地の大雪に、
北の国から遥々やってくるサンタクロース&トナカイたちも、
びっくりするでしょね。関東地方へ来る際は、深夜の強風で
橇ごと飛ばされないようにと、心配しています。

 さて、今年のクリスマス絵本の最後は、↓ 
 この絵本にしました。


マドレーヌのクリスマス

『マドレーヌのクリスマス』






  クリスマスといえばの・・・サンクロースもトナカイも、
ひみつのおもちゃ工場も出てきません。でも、この季節に
かかせない「夢見る気持ち」と、主人公マドレーヌの「元気」が
縦長のページのどこからも伝わってきて、とても温かい心で居ること
ができる絵本です。

 マドレーヌシリーズでは、もうおなじみのフレーズ。

     パリの、つたのからまる ふるいやしきに、
       12にんの おんなのこたちが、
      2れつにならんで くらしていました。

 
そのなかの いちばんのおちびさんが、マドレーヌ。
マドレーヌは、とても勇敢な女の子であるだけでなく、今回は、
病気にも強く、11人の女の子たち、先生のミス・クラベル、屋敷に
住むねずみまでもが風邪で寝込んでしまった中、ただ一人 
てきぱきと はたらき げんきなのでした。

 
玄関を叩く音が聞こえると、「サンタクロースかしら?」と思って、
ドアを開ける。でも、それはサンタクロースではなくって、
じゅうたん商人。12枚の赤いじゅうたんを持っていることを見るや
いなや、12人の女の子のベッドの下に敷くマットにするために、
速攻まとめ買い。先生からは 
 「いいかいものだと おもいますよ」
 と褒められます。 

 マドレーヌならではの明るさで、読んでるこちらが「えっ???」と
思っている間に、お話はどんどん進んでいき・・・。その後、じゅうたん
全部を売ってしまった商人が、寒さで凍りついても(ほんとにカチカチ
に凍っている絵です)、その商人が実は魔術師でもあったと言われ
ても、まったくマドレーヌは動じません。魔術師に皿洗いの手伝いを
させて、その「空いた時間」を使って、クリスマスツリーを買いに
いったりもしてしまいます。

 おそるべし、マドレーヌ。  愛しのマドレーヌ。

 お話の最後は、魔術師の「おおいなる じゅもん」によって、
女の子たちみんなへ、素敵なプレゼントが贈られます。

 パリの、つたのからまる古い屋敷には、もしかしたら、
サンタクロースよりも、魔術師。トナカイがひく橇よりも、魔法の
かかった真っ赤なじゅうたん、の方が似合っているかもしれません。

 全ページがカラーで、とてもきれいではありますが、私は、表紙の
裏に使われている「抑えた赤色」が、いちばん印象に残りました。
その色を見返し部分に選んだことで、この絵本全体が、数段
よくなったと言ってもいいと思います。


   *******     *******


 いろんな形のいろんなクリスマスの「解釈」があって、
いろんな家族の、いろんな過ごし方があって。 そして、数々の
「クリスマス絵本」があって。
絵本なのだから、絵があって、お話が
あるのは、あたりまえのことなのですが。それでも、絵とお話の
両方を楽しむことができるって、ほんとうに素晴らしく素敵なことだと、
思わずにはいられない、この頃なのでした。  


 
 

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今年最後のラズベリー

2005-12-19 09:41:01 | 日々のこと
 厳しい寒さがやってきてますね。
ここらへんは、さいわい雪は降っていないものの、土曜日の深夜から、日曜日にかけて、冷たい風が吹き荒れました。

 その強風で、プランター植えのラズベリーの木に、
少しだけ残っていた枯葉が、吹き飛ばされ
まだ残っていた実を発見しました。
今年最後のラズベリーです。
とりあえず、枝のまま飾っておくことにしました。
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穏やかな気持ち(ますみせんせいの話)

2005-12-16 15:05:18 | 思い出の絵本

 今日は『ぐりとぐらのいちねんかん』についての、思い出の話です。
ぐりとぐらの1ねんかん 
← 写真では実際の大きさはわかりませんが、
  縦26cm・横32cmくらいある、大きい絵本です。






 
 お話は、題名のとおり、ぐりとぐらの1月から12月までの「暮らしぶり」を、
見開き1ページ(左側が絵、右側にリズミカルな文)で綴っていったもの。  
 ぐりとぐらの他に、うさぎのギックやりすたちも登場します。  

 丁寧に描き込まれた、季節ごとの、ぐりとぐらの部屋の中を見るだけでも
楽しい本です。(もちろん、外の景色も素敵です)
 

 山猫編集長が12月7日付の記事で、「この絵本が、どうして大判でなければ
いけないのか?」について、非常に興味深い考察を書いてらっしゃいました。
私は、なるほどと思いながらも、大判であるのは、こういうわけにちがいない、と
納得していた理由=『エピソード』をコメント欄に残しました。
その『エピソード』はコメント欄だけではもったいないなぁ、と返事に書いてくれた、
編集長の言葉に気をよくして(?)、自分のブログでUPしようかなあと思いながら、
でも、なんとなくそれだけでは、動機的に「弱い」気がして、迷っていたのでした。  

 さて、絵本関係のブログではないのですが、とても心の残る記事に出会いました。
ライ麦クラッカーを焼く家族 というタイトルで、hinataさん が、
デンマークで、ある工場を訪れた際のことを書いた記事です。その内容と、
コメント欄でのやり取りを通して、私は肩の力がすっと抜けていくのを感じ、
自分の気持ちが安定していくのがわかりました。(このところの嫌な事件の
連続で、気持ちが尖ってきていたのだと思います) 

 私が、『エピソード』をここに書くことで、誰かの気持ちがほっとしたり、
誰かがにやっとしてくれたり、『ぐりとぐらのいちねんかん』、そういう
「使いみち」もあったんだあと、思ってくれたらいいなあ、と思い、
「すこし弱かった動機」が【書こう!】という気持ちに変わっていきました。 

 長い前置きになってしまいましたが、2つの(お二方の)コメントに
後押しされて、ここからの本文を書き出すことができるのだ、ということを、
まず記しておきたかったのでした。  

 その『エピソード』とは、娘が保育園の年長組だった時の、担任の先生の
お話なんですが。20代の若い先生で、年長組を受け持つのは初めてだったようです。
仮にますみ先生と呼ぶことにします。ますみ先生が他の先生と違っていたのは、
家から、先生自身の絵本を持って来て、お部屋に置いてくれたこと。
(もちろん、保育園にも年長組さんの教室のすぐ隣に、絵本の棚があり、
好きに読むことができましたが。) 
 ますみ先生の持ってきた絵本は、エリック・カールあり、飯野和好さんの
「あさたろう」シリーズあり、和田誠さんの「これはのみのぴこ」や
「ことばのこばこ」もありました。そんな中の1冊に、『ぐりとぐらの
いちねんかん』もあったのです。  

 先生はみんなにその絵本を読んだあとに、棚の上の「絵本の場所」には
戻さずに、子供たちがノートに、出席のシールを貼ったりするためのテーブルに、
その月のページを開いて、立てかけておいてくれました。1ヶ月間ずっと同じ
ページがそこに開かれているわけで、日にちのないカレンダーのような役目
でもあったわけです。そして、月が変われば、絵本のページも1枚繰られて、
また、クリップで留められます。同じ絵本を、その時すでに持っていましたが、
保育園の教室で、みんなが使うテーブルに飾られているその絵本は、
なんだか「別のもの」のように見えました。

「あ、こういう使い方、楽しみ方もあるんだ」

 送り迎えで、教室に入るたびに、見慣れたぐりとぐらが、そこに居ることを
毎回確かめては、そう思っていたのです。だから、私は、『ぐりとぐらの
いちねんかん』があんなに大きい本なのは広い場所に飾って、1年中、
みんなで楽しむことが(も)、できるためなんだと思っていたのです。

 ついでに、ですが。 
 ますみ先生は、折り紙もとても上手でした。小さい頃から大好きだった
のでしょうね。使い古された、折り紙の本の裏表紙に、明らかに子供の字で、
「〇〇〇〇ますみ」と名前が記されていました。子供たちのリクエストに応えて、
本を見ながら、どんなものも軽々折っていました。 
 月ごとのテーマにそって、(3月だったらひなまつりとか)折り紙で
作品を作り、その下には、翌年の3月のカレンダーをつけて・・・。
そうやって1年間かけて、1年生になった時から使えるカレンダー作りも
させてくれました。娘が入学した時から、翌年の3月まで、年長組の時に
自分で作ったカレンダーを壁にかけておくことができたわけです。 
 
 素敵な試みだと、思いました。 
 ますみ先生は、素敵な先生でした。

 保育園の送り迎えの、ちょっとした時間で「先生のお仕事ぶり」を見るにつけ、
保育園の先生って、「まるでアーティスト」だなあと、感心させられっぱなしでした。
(歌にピアノ、折り紙、工作なんでも、簡単そうに、そしてとても楽しそうに
やってのけるのです) 

 これが『ぐりとぐらのいちねんかん』についての、『エピソード』であり、
ますみ先生の思い出まで全部ひっくるめて、『ぐりとぐらのいちねんかん』に
対する思い出となっています。   



 ゆうべ、久しぶりに、家でこの絵本を娘と一緒に読んでみました。
どのページを開いても、そこにはその月、その季節を存分に楽しんでいる、
ぐりとぐらとお友だちがいて、はつらつとした、伸びやかな空気を感じる
ことができます。 
 季節は動いているし、植物は育ち、子供たちは日に日に、成長を続けて
いるんだよと、あらためて教えられているようでした。 

 「1年が終わると、また次の1年がすぐに来るから、この本はどこまで
いっても終わらないよね。ぐりとぐらの終わらないいちねんかん、に
すればいいのに」と言った数分後に、娘はもう眠っていました。
穏やかな気持ちが、エアコンで暖められた室内に溶けていって、
私も気持ちよく眠ってしまいました。

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クリスマスの絵本・その5(サンタクロースと工場)

2005-12-13 16:50:25 | 思い出の絵本

 今となってはなぜだったのか、そのときの気持ちが
思い出せないのですが。私が、娘のために買った最初の
クリスマスの絵本は、『ぐりとぐらのおきゃくさま』では
なく、この絵本だったのです。たしか、娘が3歳になる前の
クリスマスだったと思います。


サンタのおもちゃ工場

『サンタのおもちゃ工場』

  たむらしげる作




 私の「絵本歴」は、娘の誕生後から始まっているので、
その時点で3年未満、知っている絵本もまだまだ少なかったし、
ゆっくり一人で、書店や図書館に居られる時間もあまり
なかった頃でした。なので、毎月購読していた福音館書店の
雑誌が、ほんとうに楽しみでした。
 『こどものとも0.1.2』を購読しはじめてから、
ちょうど1年くらいたっていて、年齢的にはすこし早かった
けれど、『かたつむりタクシー』(1998年7月号)という作品
から、『年少版こどものとも』を買うようになりました。その
『かたつむりタクシー』の作者が、たむらしげるさんで、
その年少版を、親子ともども愛読していたので、そういう
「刷り込み」が『サンタのおもちゃ工場』に繋がったのかも
しれません。

 
 お話は、ルネくんという男の子が、ロボットの運転する、
お迎えのロケットに乗って、サンタクロースの住む
「ほっきょく」へ行き、そこに「おもちゃ工場」を作る
お手伝いをするというものです。なぜ、ルネくんが
「選ばれて」手伝いに行くのかというと、とても雪だるま
づくりが上手だから。
 
 ロボットと、しろくまと、ルネくんとで、たくさんの
雪だるまをつくり、それにサンタさんが呪文を唱えると、
その雪だるまたちは動き始めます。なぜそんなにたくさんの
雪だるまが必要かというと、彼らが「工場」を作り、そして、
その「工場」の中で、子供たちのためのプレゼントを作って
くれるからです。

 雪だるまたちはみんな、黄色いマフラーに、黒い帽子を
かぶり、茶色のブーツ姿です。あるものは、設計図を書き、
あるグループはぬいぐるみを作り、DJとなって、雰囲気を
盛り上げるために「ジングルベル」のレコードをかける人
(雪だるま)もいます。

 
 そっか、知らなかったけど、「ほっきょく」には期間限定
のそんな「工場」があったんだあ。サンタさんひとりだけでは
準備が大変だけど、お手伝いの人(雪だるまたち)がいれば、
だいじょうぶだよね。

 素直に、そう思ってしまっていけない理由は、
どこにもありません。

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花育ての楽しみ

2005-12-12 16:16:52 | 日々のこと

 冬晴れの、乾いた日が続いています。

 さて、10月29日に植えたクロッカス。
気がついたら、土の上に5㎜くらい、もう芽が
出ていました。
今この時期に芽が出始めていて、いいのでしょうか?
開花期が1,2月ごろからとなっていたので、そうか、もう
12月半ばだから、いいのかあ。でも、私の中では、春浅い頃に
咲く、というイメージが出来上がっていたので、芽が出るのも、
年明けくらいからと思っていました。なんとなく不安ではあり
ますが、これから、どんなふうに育っていくのかがとても
楽しみです。

 もうひとつの「育ての楽しみ」は・・・
『手間と時間のかかることがしたい気分』になっていたその頃
に蒔いたビオラの種。去年、花が終った後に、一応取って保管
したのですが、そのあまりの小ささに、たぶん蒔くことはない
だろう、とも思っていたものでした。

 本の通りに、お菓子の空き缶の底に穴をあけ(正確には夫に
あけてもらい)、手のひらから、ぱらぱらと、なるたけ均一に
なるようにと、蒔きました。その後ラップをかけて、どの
くらいたったかなあ。やっぱりだめかなと思った頃に、
ほんとに、ほんとに小さい芽が出てきて、今はやっと4枚目の
葉が出揃いはじめました。
いつになったら、ポットや
プランターに植え替えできるのか、全然見通しは立ちません。
けれどこれは『手間と時間』の産物なので、これでいいのです。

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クリスマスの絵本・その4(サンタクロースと乗り物)

2005-12-11 01:50:49 | 好きな絵本

 クリスマス絵本その3で、サンタクロースに「こんなものはいかがですか」と、数々のユニークな道具を紹介する絵本のことを書きました。 今度は、サンタクロースが相棒のトナカイたちではなく、別の乗り物を使って、プレゼントを渡しにいくお話です。
 

『クリスマスのおくりもの』 ジョン・バーニンガム作 

ここに登場するサンタさんは、乗り物が大好きで、毎年何に
乗ってプレゼントをくばろうか、と考えているわけでは
ありません。やっと自分の家に帰り着き、トナカイたちをベッド
で休ませ、やれやれこれで眠れるぞと思ったそのときに、
袋の中に、ひとつだけ残っていたプレゼントを見つけてしまった
のです。できれば、もうぐっすりと眠りたい。パジャマに着替えて
しまったし、疲れて眠っているトナカイたちを起こすことは
できないし。 

けれども、サンタさんには見て見ぬふりなんかはできません。
まして、ひとつ残った贈り物の宛名は、「ハービー・
スラムヘンバーガー」。彼の家はとっても貧しくて、今までに
もらった贈り物はたったひとつだけ、それもサンタクロースから
のものでした。サンタさんは、パジャマのうえに 
サンタクロースのあかいコートをきて ながぐつをはき 

ハービー・スラムヘンバーガーの家がある、遠く離れた
ロリー・ポリー山のてっぺんへとつめたいふゆのよるのなかを
とことこあるきはじめました。 


ここからが、この絵本の「みせどころ」というか、
「よませどころ」というか・・・。

そんなにとおくまでいかないうちに 
じぶんのひこうきをもっているひこうきのり 
に出会います。そして、「もうしわけないが、
てつだってもらえまいか」
と切り出し、
事情を説明します。もちろん、ひこうきのりは快諾し、
飛行機で行けるところまでいってくれることになりますが、
雪が激しく降り、地面にぶつかってしまいます。
サンタさんは、また雪の中を歩きはじめ、ひこうきのりが
教えてくれたジープを持っているおとこを尋ねます。
そこでまた、「もうしわけないが~」と事情を話し、おとこと
一緒にジープに乗り込みます。 

飛行機・ジープ・の次は何でしょう? バイクです。
バイクの二人乗りで思いっきり投げ出されてしまった後は、
女の子のスキーの後ろに乗るんです。もちろん、話し掛ける
時の最初の言葉は、「もうしわけないが~」。
女の子も行けるところまで行ってくれようとするのですが、
スキーにひびがはいってしまいます。


 このように、心よくサンタさんを自分の「乗り物」に
乗せた人たちは、最終目的地まで行くことはできません。
でも、次の乗り物を持っている人を教えてくれたあとに、
こう言います。
「だいじょうぶ クリスマスには きっとまにあいます」

 
 繰り返しの会話が、予想できるおもしろさだとすると、
絵のほうは、予測できない大胆な構図や、工夫に満ちています。
 
 ジョン・バーニンガムさんの絵本‥。
そんなにたくさん読んだわけではないのですが。この
『クリスマスのおくりもの』に限って言えば、とっても
「映画的な絵本」だなあと思いました。
 たとえば絵コンテの中から、印象的なコマを選んで、それを
絵本の場面として効果的に表すためには、どんな手法を使おうか
って思っているのではないかなあ、なんて。絵だけを何度も
見ていうちに、そんなことを思いました。

そして、描いている本人が、一番この絵本を楽しんでいる
のだろうなあとも。


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クリスマスの絵本・その3(サンタクロースと道具)

2005-12-09 15:21:55 | 好きな絵本

 図書館で、ちょっと素敵な絵本を見つけました。
『サンタクロースのすてきな道具の絵本』
という長い題名です。
作者は奥井ゆみ子さんという方で、1990年度の「ニッサン童話と絵本のグランプリ」
絵本部門の、大賞受賞作品だそうです。

 お話は、こんなふうに始まります。

      サンタクロースさん
     今年もまたクリスマスがやってきます。
     あなたにとってはまい年まい年
     さぞかしたいへんなことでしょう。
     これからすてきな道具たちを
     ごしょうかいします。
     これで今年も大かつやくしてください。


 最初の道具は クリスマスにかかせない「星と雪の噴射機」
まずはムード作りのお手伝いからです。

 次の道具は、サンタクロースさん本人も、「サンタさんっていったいどうやって
世界中の子供たちにプレゼントをくばりにいくの?」という疑問を持った子供たちにも、
その子供たちから、ねえねえ、と執拗に質問されるお母さん、お父さんたちにも、
「!」 と思ってもらえるでしょう。 「サンタがふえる鏡」 です。
呪文を唱えるだけで、サンタクロースがいっぺんに100人になるそうです。
100人もいれば、とりあえず日本国内はカバーできそうですよね。見開きのページいっぱいに
書かれている、いろんなサンタさんを見ているだけでも、とっても楽しい気持ちになれます。
(お料理していたり、タバコをふかしていたり、サーフボードを持っていたり、大工仕事や
ペンキ塗りをしていたり、ぞうきんがけの途中のサンタさんもいます)

 3番目、4番目の道具と次々紹介していくと、せっかくこれから読もうとしている方の楽しみが
少なくなってしまうので、全部で道具は8つあったとだけ、書いておきます。

 そして最後に、道具ではないけれど、とても素敵なものが待っています。
「そうか、サンタさんって、プレゼントを配り終わったあとに、こんなこともしてくれていたんだ!」と、
大人の私は嬉しくなりました。が、小3の娘にとっては?」
 
あまり感動・感激しませんでした。こういう喜びは年を経ないとわからないものなのかも
しれません。

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クリスマスの絵本・その2(ぐりとぐら)

2005-12-07 17:48:53 | 思い出の絵本

 題名にクリスマスとか、サンタクロースとか、贈り物とかついていないのに、
すでに多くの、とっても多くの人が、この絵本が、日本のクリスマス絵本の代表だと
思っているのではないでしょうか‥。
ぐりとぐらのおきゃくさま


『ぐりとぐらのおきゃくさま』
 







 いつかも、どこかで書いたかもしれませんが、私は子供の頃にあまり絵本を
読んだ記憶も、読んでもらった記憶もありません。けれど、母親になってから
本屋さんで、『ぐりとぐら』を見つけた時と、この『ぐりとぐらのおきゃくさま』を
見つけた時だけは、じんわりとしたなつかしさで、胸がいっぱいになったのでした。
(シリーズの他の本は題名さえ、聞いたこともありませんでした)
だからこの絵本は、娘と読んだ「思い出の絵本」になる前に、私にとっての
数少ない、自分自身の思い出の絵本なのです。

 最初に「こどもとも」として発売されたのが、1966年! です。
若いママたちは、まったく生まれていない年ですよね。ぐりとぐらは、
「ケーキ」を焼く匂いとは言わず、ここでも、「カステラ」と言っているし、
サンタクロースのおじいさんも「メリークリスマス」ではなく、
「クリスマスおめでとう」と言っています。来年でもう40年!もたつというのに、
それでもこの絵本は、古さなんてどこにも感じさせず、1966年頃生まれた人も、
それ以前に生まれた人も、つい2、3年前に生まれた人も魅了させてしまう力を持っています。  

 どこなのでしょうね、その魅力。  
 
 お話が始まって、たったの2行目で、お話の中にすんなりと溶け込む
ことができるからかもしれません。誰もがぐりかぐらのどちらかになって、
「おかしな あな」を見つけ、その跡を辿っていくことができるのです。
そして、辿っていった先は、なんと見慣れた我が家。でも、そこかしこに、
明らかに自分たちのものではない数々の「大きなもの」。  

 私は、ぐりとぐらがマント、えりまき、ぼうしと次々に脱いでいくたびに、
「すでにそこにあるもの」を発見するところと、からのベッド、誰もいない
おふろばの場面が大好きです。そしてなぜかそこを読むたびに、
『3びきのくま』の絵本を思い出してしまいます。(からっぽの家の、
ベッドのイメージが重なるからかも)  

 『ぐりとぐら』で、すっかり二人(二匹?)のことが好きになった人たちが、
ぐりとぐらの家や部屋の中を見る事ができて、さらに二人のことを好きに
なったことでしょう。暖炉はあるし、ピアノはあるし、大きなみどりのソファだって、
揺り椅子だってあるのです。(緑色のバスタブのあるおふろば、当時としては
かなりおしゃれですよねえ)

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クリスマスの絵本・その1(誇りと勇気)

2005-12-06 16:14:10 | 好きな絵本

 クリスマスの絵本として、最初に載せたかったのは、バーバラ・クーニーが絵を描いている
この本、『おもいでのクリスマスツリー』 です。


 お話の舞台になっているのは、北アメリカのアパラチア山脈(ノースカロライナ)の
おくにある
小さな村、第1次世界大戦が行われていた頃の話です。

 クリスマスのお祝いは国や地方、また時代によっても様々ですが、
主人公の女の子、
ルーシーが住むこの村〈松ガ森〉の習慣は、毎年教会に立てるクリスマスツリーを、
村に住む人が順番で、選んでくるというものでした。ある人は、丸くて太いゲッケイジュ選び、
またある人はよい香りのヒマラヤスギ、という具合に。そして、ツリーを持ってきた家の子供が、
教会で行われるクリスマスの劇の中で、天使の役をすることも決っていました。
 
 当番になったルーシーのパパは、ごつごつの岩にそだ
つけれど、天にとどくほど高くのびて、
クリスマスツリーにはぴったりの木
としてバルサミモミを立てようと考えます。
そして、ルーシーと二人で、もうしぶんのない木を見つけ、ルーシーの髪に結んであった
赤いリボンをとって、しるしとして木に結び付けておくことにしました。
(表紙に描かれている赤いリボンをつけた木がそれです)
 
 夏になり、ルーシーのパパが兵士となって戦場へ行ってしまってからが、このお話の
「本当の物語」の始まりと言えるかもしれません。男手がなくなり経済的にも厳しくなった
生活をルーシーのママは、知恵と手先を上手に使ってやりくりしていきます。
(コーヒーのかわりにハッカ茶にはちみつを入れて飲んだり、新しい服が作れないので
つぎ目をきれいな花のししゅうでかくしたり)
 秋が来てもパパは帰らず、とうとう教会にツリーを立てる日がやってきます。
心配した牧師さんが、来年のために用意してあるヒマラヤスギを、今年切ってもいいと、
来年の当番が言ってくれた話をしにきます。明日にはどうしても、教会にツリーが
なくてはならないのです。

 ルーシーのママはどうしたでしょう? 悲しい顔で牧師さんに詫びるわけでも、
妥協案に応じるわけでもなく、こういうのです。

 「トムはやくそくをきちんとまもる人です。今年は、
  うちでツリーをたてさせていただきます。」
  ママはゆずりませんでした。


 毅然としてそう牧師さんに告げたママこそ、このお話の本当の主人公ということが
できるかもしれません。このあとの、夜更けから朝陽が昇るまでの、5ページにわたって
描かれている風景の美しさと、ママの誇りに満ちた表情、ルーシーの満ち足りた顔は数ある
クーニーの描く「素晴らしい場面」の中の1か2に位置するものだと、私は思います。
ほんとうに美しく、ほんとうに素敵です。
 
 ルーシーがようやくベッドに入った頃、牧師さんがやってきて、高い岩山にはえていた
バルサミモミが、教会の鐘楼のところにあったと言いにきます。ルーシーのママは、
だから言ったでしょ、トムはやくそくをまもる人だって。なんてことは言いません。

 「まさか! ほんとうですか! なんてふしぎな。」

 
 
ツリーはきれいに飾られ、クリスマスの劇も無事終わります。望みとおりのプレゼントを
手に教会を出ようとするルーシーに、もうひとつとてもよいことが待っています。


 「おもいでのクリスマスツリー」という題名を決してわるいとは思いませんが、
英語のタイトル『THE YEAR OF THE PERFECT CHRISTMAS TREE』を意識して読み返すと、
物語の力強さが違ってくるような気がして、あらためて、題名の大切さを知らされたようでした。
このクリスマスツリーは、ルーシーという女の子の思い出の木であると同時に、
〈松ガ森〉全体の特別な年の、思い出でもあるのです。

 裏表紙を見ると、すっかりきれいに飾られたツリーのてっぺんに、金色の星ではなく、
天使の衣装を着たルーシーそっくりの人形がのっています。これも、この年以来の
〈松ガ森〉の慣わしとなったそうです。今でも、変わらず続いているのでしょうか・・・


 

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たくさんの思い出(あるいはひみつ)

2005-12-01 16:40:37 | 思い出の絵本

 今日から12月。寒いと感じる日が増えてきて、いよいよ冬なんだなあと
思います。
 12月といえば、クリスマス。クリスマス絵本の紹介も増えてきて、
私もなにか載せたいなあと思いつつも、11月の終わりから気になっている
絵本のことを、まず書こうと思います。 

 すこし前にRAMAママさんの「えほんのおと」で紹介されているのをみて、
とても懐かしくなりました。娘と、何度も何度も何度も読んだ本だったから。
そういえば、しばらくうちでは読んでなかったなあと思っていたら、
何日か前に「寝るときにこれ読んで」と、娘が棚からさがして持ってきました。


ひみつのひきだしあけた?

 

ひみつのひきだし あけた?

 あまんきみこ作 やまわきゆりこ絵

 

 

 お話の主人公は、チイばあちゃんと、とらねこのとらた。 2人暮らしのおうちです。

 ある木曜日、さくら色の毛糸が押入れの隅から出てきたので、チイばあちゃんは、
ベレー帽を編むことを思いつきます。とってもいいアイデアと思いながら、次にかぎ針を
探し始めますが、なかなか見つかりません。お昼寝中のとらたも、物音で起きてしまいます。

 ここまでのチイばあちゃんの行動、私はとても笑えません。毎回、私も色々「いいこと」を
思いついては、でも、あれがない、これが見当たらないと似たようなことしていますから。

 とらたがはなをぴくぴくさせて、古机の一番下の引き出しが怪しいと、かぎつけます。
ちゃんと見たけど、あそこにはなかったというチイばあちゃん。(こういうやり取りも身に覚えが)

   「おくの おくまで みたの?」
ととらたに念をおされ、
   「おくの おくが あるのかあ。 もう いちど みてみよう」
   とチイばあちゃんがひきだしをあけると・・・

   ひきだしは、ひっぱるだけ あいていく。
   するするする。するするする。      

そう、とても不思議な引き出しなんです。引き出しはどこまでもどこまでも、のびていきます。
壁に行き当たっても、まだその先があるみたい。チイばあちゃんは、大工道具を取り出して
「引き出しの通り道」を作ります。(とっても行動力があるおばあちゃんなんです)
小さな庭に出ても、まだ引き出しは
のび続け、その隣の広場でやっととまります。

 長く、長くのびた引き出しの中味ーそれはもうありとあらゆるものが、たくさん!
こんなに引き出してしまって、いったいどうやって机におさまるのだろう?
 その疑問は、広場で遊んでいた子供たちが、引き出しの中味に興味を持って集まって
きたことで、すべてがまるくおさまり、解決されます。「引き出しの通り道」も、無駄ではなく、
とてもよい利用方法が見つかるのです。


 
 机の引き出しだけでなく、たんすの中や食器棚、押入れや下駄箱などなど、いつでも
取り出しやすく、きちんど片付いているのは気持ちのいいものだし、使い易い。
実際の生活では常にそうでありたいと、思います。

 でも、それとは、ちがうところ・・・心の中のどこか一部分に、捨てられないたくさんの
思い出(あるいは、たくさんのひみつ)をごちゃごちゃでいいから、持っていたいなあと、
思います。
 ある日、ある時の思い出の品物、言葉のかけら、染み付いてはなれないメロディ、
覚えているぬくもり。そんなものや、ものとも呼べないもろもろがあまりにもきれいに
整理されているのも、それはそれでなんだかさびしい。
探しても、探しても見つからなくって、でも、この中にはきっと入っているって確信できる、
そんな引き出しを、持っていたいのです。

 さて、小3の私の娘。
最近、念願の「自分の机」を手に入れました。たいていの場合、小学校入学と同時に、
学習机を購入すると思いますが、ちょっとした理由で(家庭の事情?)購入を見合わせて
いました。「自分の机」が来てからの娘の様子、なんだか変わってきたのです。宿題や、
その他なにやらやっている時の後姿が、気のせいかしっかりして見えるんです。
 自分の持ち物を、自分だけが知っている場所に収めていく。自分の持ち物を自分自身で
管理していく。そういうことは、やはりとても大切なことなんだと、わかりました。

 彼女も、しだいに、自分だけの思い出、自分だけのひみつを、心の引き出しの中に
持ちはじめていくのでしょうね。(母と読んだ、数々の絵本の思い出も入っていると
いいなあ)

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