一緒に借りた『嘘つき娘』と、どちらを先に読もうか迷いましたが、知ってる名前が
たくさんあったことと、表紙の絵に惹かれて(絵は作者が描いたようです)、
『ノエルカ』を選びました。
『ノエルカ』
1991年のクリスマスイヴの一日を、主人公のエルカを中心に描いた話しです。
読みだしてしばらくしてから、『金曜日うまれの子』よりも、ちょっとだけ「前」の
ことが書かれているのだということに気がつき、調べてみたら、金曜日~は
1993年が舞台で、こちらは1991年‥。あー2年前にガブリシャは、今の夫を
初めて家族に紹介したのかとか、このときクレスカのお腹にいた赤ちゃんが
生まれたんだなあとか。順序的には「逆」になってしまいましたが、それはそれで
楽しめました。
1991年12月24日イヴの日。
ポーランドのポズナニの一画にあるイエジツェ町にはずっとずっと雨が
降っていました。時にざあざあと、時にはしとしとと。
その中を、エンジェルに扮したエルカは、その日、出会ったばかりのトメク
(サンタクロースに扮してます)と、家々を回ることになってしまいます。
自分の気持ちを強い言葉で吐き出し、家を飛び出してしまったエルカが、
トメクと一緒にいろんな家庭を見たり、彼との会話から、すこしだけ前とは
違った自分になって、イヴの夜を迎えられる結末は、とても心が温まります。
中でも、ガブリシャを長女とするボレイコ家の場面や、テレサが絵を売る
地下道の場面はとても好きでした。
「たったの一日」といっても、ひとりひとり、一軒一軒、どの街角にだって、
様々なドラマは潜んでいるわけで、それが微妙に絡み合ったり、結びついていたり
するのを、ドキドキしたり、困惑したり、自分だったらどうするだろう、と考えさせられたり
しながらの読書は、本当に楽しい時間でした。
私が感動して手帳に書き写した文は‥213ページ
「でも、何でわたしたちは幸せを願うの?」
「幸せが生まれた時からそばにあることを思い出さなければ
ならないからかな。ただ‥幸せを持っていることを感じるためには、
何か捨てなければならない。幻想、そしてレッテルを。ここの家族は‥
それができる」
そして‥258ページ
「許すも許さないもないじゃない!」
そしてエルカの袖を軽く、せわしなく撫でた。
エルカの胸から大きい石が落ちた。
それがいかに重い石であったか、落ちてから初めてわかった。
あ、それから、SONYのテープレコーダーとカセットテープが出てくるところもよかったなあ。
1991年といえば、日本ではほぼCDにとって変わった頃だと思うのですが‥
ポーランドでは、まだカセットテープが主流だったのかなと思ってみたり。
読み終わったのは1月23日の夜で、クリスマスイブから1ヶ月後だったことに
なんとなく意味を持たせたくなるような、そんな本でもありました。
この日、Tシャツを買ってくださったお客様から、とても心に沁み入るメールを貰い、
ただ漠然と過ぎていっている日や時間などというものはどこにもなく、
今すぐにはわからなくても、いろんなことはいろんなところに結びついて
いるのかもしれないと、しみじみした気持ちを抱えて眠りにつきました。