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絵本の話を中心に、好きなもの、想うことなど。

あいつはトラだ!~ベリゼールのはなし~

2010-11-30 16:29:40 | ひらきよみ(読み聞かせ)
19日(金)、26日(金)、2週続けて、小学校の読み聞かせで、この絵本を読んできました。
5年と、6年のクラスです。

あいつはトラだ!~ベリゼールのはなし~
   ガエタン・ドレムス  作   のさかえつこ 訳


夏前くらいの、「はじめましての絵本たち」で購入したと思います。
そのときから、小学校で、読んでみたいなあという気持ちがありました。


お話の舞台はフランスで、主人公はベリゼール(表紙のトラです)。
パン屋さんをやっていますが、1週間に1度、舞台にも出演し、遠い外国の
おもしろい話を、村の大人たちみんなに聞かせたりもしています。

ある晩のこと、ベリゼールは何の衣装も身につけずに舞台に立ちました。
お話はおもしろかったのですが、村人たちは楽しむことができず、急いで家へ帰ります。
ベリゼールが、自分たちと同じ人間ではなく、トラだということを、急に認識したのです。
翌朝、お店に行く人は誰もいず、子どもたちもパンを買いに行かせては貰えませんでした。
それまで、とても親しくしていたのに、大人たちの中には偏見がむくむくと頭をもたげます。
自分たちと見かけが違うものを恐れる気持ちは、排除したいという欲望に変り、
隣人だったベリゼールは、けものとして檻に入れられます。

なんと心が痛む光景でしょうか。

中身が問われる前に、まず外見で判断されてしまう世の中は、いつでも
すぐそこにあるのです。


ストーリーの奥にあるものは、とても難しいテーマですが、お話の後半は
ベリゼールと仲良くしていた子どもたちの活躍で、ほっと安心できる最後を迎えます。
ベリゼールがパン屋をしていた、という事実がとてもうまく生かされていて
思わずにやっとしてしまうエンディングなんです。


私は、読み聞かせの時間に、悲しい話や重いテーマのものを選ぶのは
あまり好きではありません。
(朝なんだから、楽しい気持ちで、一日を始めたいという単純な思いからですが‥)
でも、このベリゼールの話は、うまくまとまっているし、ユーモラスでおしゃれな絵が、
重い内容をうまくやわらげてくれていると思い、選んでみました。

5年生も6年生も、とても真剣に聴いてくれました。特に6年生の方が聴いている
その瞳に真剣さが感じられ、より深く心に届いているのかなあと思いましたが、
どうでしょう。


檻に入れられたベリゼールが叫ぶ場面があるんです。
こわいトラは、みなさんの ほうじゃ ないかあ!

今生きている私たちは、かつてそう叫んだすべての人の悲しみを、
すこしでも知る努力をし、忘れないでいなければなりません。






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12月くんがやってくる

2010-11-17 16:09:59 | 好きな絵本
11月も半ばを過ぎ、マフラーやストール、手袋は欠かせなくなりました。


12月くんも、そろそろぼくの出番だなと思っている頃でしょうか‥


12月くんの友だちめぐり
  ミーシャ・ダミヤン 文  ドゥシャン・カーライ 絵  矢川澄子 訳


12月くんは、ふだんは人里はなれたじぶんの城にすんでいて、まい年ひと月だけ、
国をおさめます。風をおこしたり、枯れ葉をふきはらったり、雪をふらせて、
草花にあたたかいふとんをかけてあげたりするのです。

自分以外の他の「月」のことなど、12月くんは考えてみたこともありませんでしたが、
大風のアドバイスで、3月くん、6月くん、10月くんを訪ねてみることにしました。
すこしだけ自分の役割がつまらなく思えていたことが、それぞれの「月」の
魅力を知ることで、自分の中にも、また新鮮な気持ちが戻ってくるのを
12月くんは感じるのでした。

「10月くん、きみの国も、ほんとにすてきだった。きをつけて、いつまでも
このままでね。みんなにも、そうつたえてくれよ」

友だちの「月」をあとにするとき、12月くんは、決まってこう言っていました。
言葉にすることは、自分(自分が納める12月)への、再確認にもなったのかなと思います。
同じことを同じように繰り返すのは、退屈に感じることもあるけれど、良い所を
良いままで残すには、「気をつけて」いなければならない些細なことがたくさん
あるのですから。


カーライはうっとりする色合いと繊細なタッチで、12月くんや、その他の月の
王子(?)たち、まわりの景色、動物、植物などを描きます。

なんといってもステキなのは、それぞれの「月」がかぶっている帽子です。
12月くんは、巣箱に入っている鳥の帽子、表紙で彼と向かいあっている3月くんは
ユキワリソウの帽子‥などなど。

絵本の中で、11月はいつものかさをさして、と書かれています。
11月には、今日みたいな小雨降る寒々とした日が合っているのかもしれません。
12月くんの鼻にだけついている、赤い「鼻あて」がとても印象的ですが、
鼻の頭の霜焼け防止なのかなー(笑)、と思っています。


美しい絵本、手元に置いておきたい絵本がまた1冊増えました。




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クリスマスのしたく@galleryらふと

2010-11-13 19:58:49 | 好きなもの・美術館や展覧会

とても気持ちのよい秋の週末。
久しぶりに家族3人でのお出かけ先は、galleryらふと
タイトルからして魅力的な「クリスマスのしたく」5人展の初日です。

出展作家さんは、今年の「工房からの風」でオブザーバーをされた方々‥

小原聖子さん  金属
垣本圭子さん  木工
長南芳子さん  金属
森友見子さん  再生紙
JUNIOさん   ガラス

なんという豪華メンバーでしょうねえ‥。


まずは、らふとのHP内の小屋の音ブログを見てみてください。
「クリスマスのしたく」というキーワードから広がった、各作家さんのアイデアが
自由で、豊かで、とてもおもしろいことにわくわくドキドキしてきます。



小原さんの「金属」は、DM写真の、キャンドルホルダー・メリーゴーランドヴァージョンや
真鍮でできたピアス、ブローチ、ネックレスなどなど。
もうひとつピアスが欲しい気持ちを抑えて、明後日がバースデーの
さそり座の母のために、ピンバッチを選びました。
(誕生日を待たずに、帰宅後すぐに渡してしまいましたが、とても喜んでくれました。
今度私が借りたときに写真を撮らせてもらうことにします)

垣本さんの「木工」は、木の肌が美しくて、普段ブローチというものをほとんど
つけないのですが、垣本さんの木のブローチの色合いには心惹かれます。

JUNIOさんとの、コラボ作品もとてもよい感じでした。
在廊されていたJUNIOさんにお聞きしたのですが‥出来上がったガラス作品を
垣本さんに渡して、あとはすべて垣本さんにお任せというか‥どんなふうに
仕上がっているのかはわからず、出来上がりを見て新鮮な驚きがあったそうです。
ガラスボトルの木の栓、とてもユニークな形でした。ガラスドームの下の、木の台の
薄さとか、ガラスポットの蓋の厚みというか‥そこが薄いところに、
垣本さんのセンスを感じました。

センスといえば、ガラスポットの底の内側が、平らではなくって、あえて歪ませているというか
うまく言えないんですけど、外からみると、ポットの中に最初からガラスのビー玉か
大きいおはじきが入っているように見えるのです。
シンプルな形なので、そうしてみたというようなことをJUNIOさんに伺いましたが
とてもおもしろいし、心にくいアイデアだなあと感心しました。
だって、空っぽのガラスポットの中に、特別なおまけを入れてもらったみたいですもの。
そうそう、もうひとつJUNIOさんで忘れてならないのが、しずくの花器です。
うちの出窓に飾るのなら、2つは欲しいなあと思いました。いつの日かぜひ。

森さんの再生紙は、ゆらゆら揺れるモビールがメインです。
らふとの空間にモビールはほんとに似合いますね。

そしてそして、めずらしく家族3人すぐに意見が一致したのが、長南さんの家モチーフの
壁飾りです。ブログでその製作過程などを読み、とてもとても気になっていたのです。
(なんたって、小さな家好きですから・笑)

 パッケージからこんなに素敵です♪

  添えられていたクリップだって家のかたちです。

はい、開けてみます。

       ね、すごくいいでしょう。

こんな感じで、早速飾っています。

(でも1枚だとやはりさびしい感じもあるので‥毎年1枚づつ増やしていくのが
よいかなあなんて思ったり。長南さん、どうか来年も作ってくださーい)

長南さんの「金属」は、この作品の他にも、新作のきのこや、ピアスがあり
特に「蔓花ひらく道」という名前がついたものに、クラっときています。
Hoop と Short の2種類あり、素材も10Kと14Kから選べます。
あーどっちにしようかなあと、ぐるぐる妄想中です。


会期は21日、日曜日までです。
見どころ満載ですが、お出かけの際には、長南さんと小原さんの「箱」も、
忘れずに見ることをお薦めします。
どちらの方の箱も、とても作品にあっていて、箱だけでも欲しいと、つい思ってしまいます。



コメント (2)
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見えているもの、いないもの

2010-11-09 15:01:47 | 好きな本
この物語の中心に居る、ゼンダー夫人(かつては、アイーダ・リリー・タル
という名でヨーロッパでオペラ歌手をしていた)は、主人公の少年、アメディオ・カプランに
向かってこう言います。

 「わたしがいいたかったのは、人の九十パーセントは目に見えないということなの。〈中略〉
人間というのはもっと見えているつもりかもしれないけど、やはり十パーセントしか
見えていないの」

父親が芸術家で、名付け親はアートセンターの館長をしている、アメディオは
その環境ゆえ、同年代の子どもの中では飛びぬけてアートに詳しい。
だから、モディリアーニが誰かも知っているし、ゼンダー夫人の家財処分品の中から
モディリアーニのサインが入った「裸の女の人」の絵が出てきた時も、親友のウィリアムに
裸とヌードは違うと、父親はいつも言っているといい、さらにガラスをふきながら、
アメディオはゼンダーさんの九十パーセントと十パーセントの話を思い出していた。
とつぜん、裸とヌードのちがいがわかった。裸は十パーセントを見せている。
だけどヌードは裸以外の九十パーセントが見えている。アメディオは半分
独り言のようにつぶやいた。「裸とヌードは断然ちがう」


ムーンレディの記憶
  E・L・カニグズバーグ 作  金原 瑞人 訳


引用した箇所は、↑の本の中で、とくに印象深かったところです。
一度読んだだけではわからないところがいくつかあったので、もう一度
図書館で借り直して読みました。

元オペラ歌手だったゼンダー夫人の家財処分品の中に、退廃芸術だと、かつて
ナチスから弾圧を受けたモディリアーニの作品があって、それが、ある家族の
歴史と結びついていたなんて、よくそんなストーリーを思いついたものだと
感心しながら、展開を追いました。

なぜ、その絵が、ゼンダー家にあるのかということだけでも歴史的なおもしろさは
ありますが、それを、アメディオとウィリアムという二人の少年が、ゼンダー夫人に
関わっていく中で「発見」したところが、物語を何重にも読み応えのあるものにしています。


冒頭に記した、90パーセントと10パーセント。

何人に生まれたか、どんな肌の色をしているかなど、目に見えるわかりやすい
10パーセントで、人間が人間を「分け」、レッテルを貼ったナチスの歴史的事実を、
作者はゼンダー夫人を通して、指摘していたのでしょかー。

見えていない残り90パーセントがあることを、「想像」する前に「認識」するようにと
言われているような気が、私はしています。



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いつもちこくのおとこのこ・再び

2010-11-04 15:20:09 | ひらきよみ(読み聞かせ)
先週の金曜日は、4年生のクラスでの読み聞かせでした。
10月最後の金曜日だったので、ハロウィンの絵本とか、それがらみで
魔女のはなしとかもいいかなあと思いましたが、結局、バーニンガムにしました。

4年生は、中学年ともいわれますが、大きく二つに分けたときは、小学校では高学年。
見た目はまだまだかわいいですが、本を聞いているときの様子を観察していると、
たしかに「高学年」の仲間入りをしてきたかなあと感じることが度々あります。

もちろん個人差が大ですが、おもしろいと思っても、素直に笑えなかったり、
「ちょっとかわいい話(※)」のときは、男子なんか、下を向いてしまったり、
友だちとつっつきあったり。(※たとえば、森の動物たちが仲良くするとか、
お母さんに甘えるこどもが出てくるとかー)

ペアの方が読んでいるときに、自分も子どもたちと同じ、教室の床に座って、
後ろから見ていると、どんな絵本には集中して、どんな話だと、すこし動きが出てくるか
(集中していないと、体が揺れたり、下を向いたり、咳をしてみたり、しますから)
が、わかりとてもおもしろいです。

で。

4年生ぐらいから、バーニンガムの絵本はなかなか重宝するなあというのが
私の感想です。

 この絵本は、
話がおもしろいし、舞台が学校で、登場人物ふたりのうちの一人は
日頃慣れ親しんでいる「先生」ですものね。



主人公ジョンが、「ありえない」トラブルに巻き込まれていきますが‥(最後には先生も‥)
一体どんな場所で、どんだけひどい町? と、思いながらひとりで読んでみるのも
おもしろいです。


バーニンガムの絵本は、この他にも、何冊か読んだことがありますが、
次は、 こちらに挑戦してみようかなと思っています。


コメント (6)
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じんわりと

2010-11-01 17:46:02 | 日々のこと
嬉しいこと、おもしろいこと、楽しいことは、目や耳から、突然に届くことが多いですが、
そういう「よろこびの波」がひいたあとからやってくる、しみじみ感は、心の深い所から
ゆっくり顔を出し、じんわりといつまでも、温め係をやってくれます。
それを、私たちは、しあわせと呼んでいるのではないかな。

今朝、ご飯を食べながら、そんなことを漠然と考えたのは、お尻の下から
まさにその「じんわり」がやってきたからなんです。


昨日、ヒナタノオトでもとめた、藤原みどりさんの椅子敷き。



びっくりするほど、うちの椅子に合ってました。(昨日お店で、私と一緒に3枚の
組み合わせてを見てくださった方々、ありがとうございました)

 ね、ぴったりですよね? 

2脚並んでいる手前が私ので、奥が娘の。1枚で撮った写真のが、私の向かい側の
夫の椅子です。

父と娘は、しま柄で色違い。(二人はなんたって血縁関係ですから・笑)
私と夫は、柄は違うタイプだけど、色みの感じは同じです。(写真では、夫のは
グレーに写っていますが、実物はもっとブラウンがかってます。)
そして、私と娘のは、柄も色も違うけれど、並べてみたときに、違っていることが
逆に自然で、とてもよい感じだと、満足しています。(アイボリーの方を縦に置く
というのは、娘の希望です)



****


ストールや、ピアスや、バッグ‥自分の持ち物が、自分の好きなもので
充実してゆくのは心浮き立つことですが、インテリアというか、実用的なもので
こんなに心楽しいことがあるのだと、昨日の夜からの、みどりさんの椅子敷きに
座るまで、知りませんでした。

どんなお買いものも、ヒナタノオトらふとでは、単なる買い物の域を越えていますが、
今年の秋もそんな「記念」が増えたことが、しみじみと、じんわりと、嬉しいです。



コメント (14)
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