my favorite things

絵本の話を中心に、好きなもの、想うことなど。

家族のはなし

2005-07-30 16:32:40 | 好きな絵本

 あてもなく、ただなんとなく絵本が見たくて、
大きな本屋さんでぶらぶらしているのは、楽しいひとときです。
色々手にしているうちに、だんだん買いたい気持ちがふくらんできて‥、
最後に候補に残ったのが、「しずくのぼうけん」と
この 犬のルーカス ほるぷ出版 版画家の山本容子さんの作品です。


 その頃私の娘はまだ保育園に行っていたと思うので、子供のためなら
「しずくのぼうけん」を選んだほうがいい、というのはわかっていました。
けれど、欲しかったのは、手元に置いておきたかったのは、ルーカスの方でした。

「犬のルーカス」は、題名の通りの内容です。

 ある夏の夕暮れ 
山本さんが庭先で子犬を見つけるところから始まり、
いかにして家族の一員になっていったかが、淡々と語られています。
なので、声に出して読んでも、特に言葉のリズムがいい、とか
途中ハラハラするところがある、とかそんなのは一切なし。
 子供に読んであげるのはどんなもんだろ? と思いながら、
それでも何度も読みました。それはなぜか、といえば‥ルーカスを飼い始め、
3人?暮らしになった山本さんの家と、娘が生まれて、3人家族になった
自分のところを重ねて読んでいたからでしょう、きっと。


  わたしもパートナー氏も、仕事をしている。それで、
 家族の一員であるルーカスにも、仕事をしてもらうこと
 にした。 -中略ー

  ルーカスは、仕事をおえて、庭からかえってくると、
 いすにすわるようになった。
  ところが、いすがふたつしかなかったのだ。そこで、
 仕事のごぼうびとして、ルーカスにいすをプレゼント
 することにした。
  じぶんのいすにすわると、ルーカスは背中をピンと
 のばして、わたしたちと目のたかさをあわせようとする。
 まるでふたりの会話に、なかまいりするように。

 私たち夫婦の会話に、精一杯「背伸び」して、無理やり参加してくる
娘の様子と、まるで同じです。山本さんの家の大きなテーブルを囲んで、
それぞれが絵を描いたり、文章を書いたりしているのと同じレベルに
ルーカスが居て、同じように椅子に座っている様は、なんかいいなあと
思いました。
 3人が3人とも別々のことを、同じテーブルでできるような、
うちもそんな家族でありたいと、ここを読むたびに思います。

 そして、最後のページに書かれているこの言葉。

  ルーカスを飼っているのはわたしたちでは
 なく、ルーカスが、わたしたちをそだての親に
 えらんだのではないかとおもう。

 とっても娘をいとおしく思うとき、自分が産んだ子にもかかわらず、
子のほうが、こんな私を、母として選んで、この家に来てくれたにちがいないと
しみじみしてしまいます。
 普段なんでもない時、家族は「いてあたりまえ」のものだけれど、
実は、見えないところで、微妙な糸の引き合いや、縒りあいがあって
「今のところは家族という枠」におさまっているだけなのかもしれないと
思います。が、それは決して否定的な意味合いではなく、だからこそ出会えた、
家族でいられる「今」を大切にしようというポジティブな気持ちで。


本物のルーカスは、山本容子さんのHPで見ることができます。

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なんといちばんすきなもの

2005-07-27 17:13:02 | 思い出の絵本
台風が通り過ぎ、今日はとても暑い!です。夏といえば‥、お昼寝ですよね。
その名もずばり



どこでおひるねしようかな
 
 
岸田衿子作 山脇百合子絵
 福音館書店 幼児絵本シリーズ

この本と、これより前にでた 
きょうのおべんとうなんだろな 
2冊セットで、幼かった娘と私の、「1番」といってもいいほどのお気に入りでした。

 私はきっと、山脇さんの絵がとても好きなんだと思います。「ぐりとぐら」のように
ストーリーがある本を読んであげる前に(というか、まだ読むのは時期的に早いかな、
という赤ちゃん期)山脇さんが絵を描いているものなら、どれもこれも手元に置きました。

 山脇さんの描く動物たちが「動物」らしくて(擬人化され過ぎていない顔など)、
それでいて、ギンガムの服なんか着ていてかわいいのは、言うまでもないことですが、
私は、植物の絵。草や木や、はっぱや花が、余白を多くとった空間に描かれている
ところがとてもいいと思うのです。

 おひるねの本の中で、動物たちはそれぞれ好きな場所を見つけて、気持ちよさそうに
寝入っていきます。ほんとうにその絵の中には、涼やかな風が吹いていて、周りの木の葉や、
草をそおっと揺らしているのです。最後のページにある

 きょうも いいとこ みつけたね
 ひるねに いいとこ みつけたね  

 
とてもやさしいいいことばだと思います。


 おべんとうの中で、一番好きなフレーズはここ。
 くまさんがお弁当をひろげて‥

 「おや はちみつパンに ぶどうパン 
  なんと いちばん すきなもの」

理由はすごく単純で、私も娘もぶどうパン及びほしぶどうが好きだから。今でも、
ぶどう入りのパンを食べる時や、はちみつをヨーグルトに入れたりする時、
このフレーズを口にしては、笑っています。(絵本を、一緒に楽しんだ時間には、
こんな「おまけ」もついてきて‥たのしいです)


★このブログをはじめてから、今日で1ヶ月たちました。拙いこのページを見てくださった
皆様、ありがとうございます★



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間に合ってよかった

2005-07-25 15:08:07 | 思い出の絵本

 先日、percyさんとコメントのやり取りをしていたら、しばらく見て(読んで)
いなかった、小さな子のための本が、急になつかしくなってきました。


 percyさんのところには、小さなお子様が2人いらっしゃって、まだ本を通して
遊ぶことができる年齢なのが、うらやましくなったのと、ずっと前に、うちでも
あんなことしていたなあ、というのを思い出したからです。

 そこで、いつのまにか忘れていた!ということにならないために、
「思い出の絵本」として残しておくことにしました。もしかしたら、
小さなお子様のいる方のお役に立てれば、という気持ちも含まれています。

 最初の1冊は、ピッキーとポッキー 
    
嵐山光三郎文 安西水丸絵 

 見つけたときの感想は、「安西水丸さんが、絵本の絵を描いていたんだあ!」でした。
うさぎのピッキーとポッキーが、隣に住んでいるもぐらのふうちゃんを誘って、
さくらやまへお花見へ行くという話です。

 お話そのもののは、なんということもない話だと思います。でも、マーカーで
描いたのかな、と思われる絵がとてもやさしくかわいいのです。3人が住んでいる
「はなのむら」の地図や、3人が作ったおべんとうなど、その絵を見ながら、いくらでも
娘との会話は続いていきました。

 そして、なんといっても思い出に残っているのは、最後のページ。
ともだちもみんな集まってきて「おべんとうですよ」となった時、ふうちゃんが
おにぎりを落としてしまうのです。

「早く押さえてあげて! ふうちゃんのおにぎりが
下まで落ちちゃう!」

私がそう大きな声で言うと、娘は必ず両手で、描かれたおにぎりをしっかり、
押さえてくれました。

「よかったね、まにあって」と言ってから、
本のページを閉じました。

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とおいところ

2005-07-22 15:48:09 | 好きな本

 しんとした気持ちのまま、ずっと深呼吸ばかりしているわけにもいかないので、
先へ進みます。引き続き、旅日和 について。


 この本の、主人公「私」の部屋には、「ひとりの女性が海辺で傘をさして
遠くの海を眺めている」絵が飾られていて、その絵を眺めながら、
「私」は思います。

   彼女は何処かへ行きたいのだろうか。
   それは私の気持ちと一緒だろうか。

   私は彼女の気持ちを通り越し
   心をそわそわ躍らせて
   少し旅に出てみようという気分になった。
 
そうして「私」は小さなトランクに荷物をつめて、車に乗って旅に出ます。


 ある日、ふと思いつき、誰にも相談したりすることなしに、何処かへ行かれる
なんて、なんと贅沢なことなんでしょう‥。今の自分から一番「とおいところ」に
あるものが、こういう旅なので素敵さが、さらに増すのかもしれません。


 遠い太鼓 村上春樹著 のはじめのほうにこんな箇所があります。

「ある朝目が覚めて、ふと耳を澄ませると、何処か遠くから太鼓の音が
聞こえてきたのだ。ずっと遠くの場所から、ずっと遠くの時間から、その太鼓の
音は響いてきた。とても微かに。そしてその音を聞いているうちに、僕はどうしても
長い旅に出たくなったのだ。」

 遠くから聞こえてくる太鼓の音にいざなわれて、村上春樹さんは、ギリシアへと
出かけて行きました。そして、このエッセイを読んだ当時の私もまた、心のざわつきを
抑えることができず、それまでの日常生活から離れた、別の場所へ行く事を選びました。
 そんな思い出があるからなのか、それとも、それが「思い出」のくくりの中に、
いまだに入っていないからなのか。とおいところにいる自分を思ってみたりします。
それは決して、現実からの逃避でも、日々の生活の否定でもなく、ただ想ってみるだけ。

でもいつか、2度目の「とおいところ」があるかもしれないので、そのための準備?
だけはしておこうと思います。

★おまけ★

山本祐布子さんの、切り絵を用いたイラストはとても素敵です。紙の切り口は
シャープなのに、使っている紙に温かみがあるせいか、とてもやさしい図柄に
仕上がっています。ところどころに使われている英文字のロゴとか、本物の消印等が
とても効いています。紙を貼ることによってできる、ほんの少しの高低が作品に
陰影を与えているような(実際に影などできてませんが)気がします。


 







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香り玉

2005-07-21 16:43:34 | 好きな本

 こういう本を「好きな絵本」の中で紹介していいのかなあ。
やっぱりちがうよね、と迷いながら‥。


 旅日和 
COTO 
絵と文は、山本祐布子さん
切り紙の手法を用いて作られたイラストと文章の本です。

本の帯にはこんなふうな文が添えられています。


  これは風の中にふくまれた記憶の香りのこと。
  自分のあの日にもそんな香りがあったことを
  絵の中に身を置きながら、思いにまかせ
  深呼吸した。


 そもそも、山本祐布子さんの絵を知ったのは、学生の頃ころからの友人と、
この春15年ぶりに再会し、そのあとで互いにカードを送りあった時、その友人が
選んで送ってくれたのが、山本さんの絵のカードでした。
 白く切り取られたボトルの中に、小さな玉が入っている‥といった感じの絵。
いただいたその時は、この本の存在はまるで知らなかったのですが、図書館に
リクエストを出し、やっと手にしてみたら、帯に↑こんなふうな言葉があって‥。
あのポストカードの中の「玉」は思い出の香り玉なのかもしれないと、
勝手に思ったりしています。

 思い出の中にも、匂いがあること。
 香りそのものが、思い出の「もと」であったりすること。

 本を開く前から、胸の中がしんとしてきて、ひとり
「思いにまかせ深呼吸」したりしました。

   ‥つづく‥

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重なる“ふこう”

2005-07-20 15:02:46 | 日々のこと

 忙しい時に限って、子供が熱を出したり、親戚が遊びに来ると決っている週末に、友だちから誘われたり‥。だいだい何かある日には、何かが重なって来ることが多いのですが。


 新しい炊飯器にも慣れてきた頃、でもまだたけたたけおの記憶は新しいまま‥。ついに家電最古参の部の長ともいえる冷蔵庫。その中の冷凍庫の氷が、ある日解けだしてきていたのです。

 翌日、いったんは息を吹き返したかのように、氷は固まり、でも、またその翌朝には解けだし‥、という一喜一憂に疲れ果て。新しい冷蔵庫を迎えることになりました。

 今度は娘自らではなく、私が頼みました。「なんか名前をつけてね」って。冷蔵庫はどうやら女性だったらしく、ついた名前は
       
    れいの ぞうこ(そのまんまです

かなり長い間がんばってくれたのですが、やはり寿命だったのでしょうか。

 新しいのを納品してくれた、電気屋さんのデリバリートラックに積み込まれていくところを、見送りました。なんかに似ているな、なんかひっかかる‥‥と思っていて、今日それがわかりました。
 ♪ドナドナ♪ です。
あの唄の中で、子牛が連れて行かれるのを見ているような、そんな気持ちだったんです。‥‥


アイロン・電子レンジ(オーブン付)・オーブントースター。
残る嫁入り家電は、この3台。

 

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ぐりとぐらのかいすいよく

2005-07-19 12:59:11 | ひらきよみ(読み聞かせ)

 今学期最後の「読み聞かせ」は、7月8日、2年生のクラスでした。
パートナーさんは、どうぞのいすを選び、私は、ぐりとぐらのかいすいよく 
読みました。

 
 ぐりとぐらの本。たくさん出ていますよね。私が子供だった頃は、一番最初の
『ぐりとぐら』しかなかったと思うのです。その1冊さえも自分の家にはなく、幼稚園で
先生に読んでもらったことがあるようなないような‥。そして、時はどんどん流れ、
娘が生まれて絵本のコーナーへ通う日々が始まり‥、ぐりとぐらにこんなに続きが
あったなんて!!!うれしさと驚きがほとんど同時にやってきました。

 「ぐりとぐらの魅力」ってなんなんだろう? どこなんだろう?と、今回「読み」の
練習をしながら漠然と考えました。もちろん、山脇百合子さんの描く絵の魅力と言って
しまうこともできますが、こんなところかな‥と思いました。   

    
    うみは はじめて ぐりと ぐら   
    なみに ゆられて   だいぼうけん   
    あわてちゃ だめだめ ぐりと ぐら   
    のんびり いこう   

 
 どこまでも波打ち際で遊んでる二人のところへ、うみぼうずから手紙が届き、二人とも
全然泳げないのに、うきぶくろがあれば大丈夫、としんじゅとうだい目指して出かけて
しまいます。ぐりとぐらは、素直な心の持ち主で、しかも好奇心のかたまりです。
ここのところが、二人の最大の魅力なのではないでしょうか。

 この2つさえ備わっていれば、多少のことにはへこたれずにやっていかれます。
もしかして、子供たちも(うちの子もよその子も)ぐりぐらのようであってくれれば‥
という気持ちが、私のどこかにあるのかもしれません。

 肝心のクラスでの「読み聞かせ」のほうは‥、滞りなく済んだという、ちょっと
もの足りない感じで終わりました。

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たけた たけお

2005-07-19 11:18:36 | 日々のこと

 嫁入り道具の家電たちが、次々と去っていった中、とてもがんばってくれていたのが、この炊飯器。


 ワンプッシュで蓋が開くようになる前の「とって付」タイプの生き残りだったんです。蓋の形が変わり、厚がまが全盛を誇り、IHが現れてもなんのその。それなりにおいしいごはんが炊けてました。

 ついに、スイッチが入らなくなり、もうだめだね、とコンセントを抜いた日に、娘が、たけたたけおという戒名?をつけてくれました。

   長いことお世話になりました。

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最初に映るもの

2005-07-15 15:40:20 | 好きな絵本

 赤ちゃんがしだいに大きくなっていって、文字に興味を持ち出したなら、
こんな本で、ひらがなを覚えていってくれたら、と思います。


 あいうえおの本 
安野光雅 福音館書店

 ページを開くと、左側には大きくひらがなが「木」で作ってあるように描かれ、
その右側には、その文字から始まるものの絵が描かれています。そして、
両ページの周りを、やはりその文字ではじまる花や、鳥が縁取っています。


 写真にある 
ね だったら、その隣には、ねことねずみ、といった具合です。

 大きく描かれたひらがなの美しさ。
 絵を指しながら、子供と語り合うことの楽しさ。
何度見ても、いろんな箇所に新しい発見があります。

 そろそろ文字を教えないと、という義務感からではなく、ごろんと横になって、
なぞなぞ遊びでもするような気持ちで、それでいて、いつまでも覚えていてほしい
美しさも備えていて‥。

 大きくなるうえで、色々知らなければならないことがあるのなら、
(たとえそれが親の自己満足だとしても)美しいものを、自分にとっても、
素敵だと思えるものを、最初に子供に手渡したいなあと思います。




★おまけ★

信号機の意味を教えるのなら、『あかいひかり みどりのひかり』が私のおすすめです。

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ブルーガーデン

2005-07-13 15:12:40 | 好きなもの・グリーン
 いつ頃からか紫の花にとてもひかれるようになりました。
切花はそうでもないんですが、鉢植えで売られている花は‥。


 去年、偶然花屋さんでイソトマを見つけ、その花のかわいらしさと、すてきな色に
やられたのかも、しれません。今年はもっと増やしたいと思っていたのに、なんか今のところ
花の付はいまいち‥。

 そんな折、デュランタ(写真参照)を見つけました。

 小さい花(シルバーの縁取りつき)が、ぽちぽちと咲いてくるところが、かわいいです。

 たくさんのブルー&紫色の花の中に、ところどころ白い花が目をひく‥みたいなのが、
理想のお庭なんですが。


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祈るきもち

2005-07-11 17:00:01 | 好きな絵本

 好きな絵本のどれもが、娘の成長過程で、一緒に読んできた本ですが、
久しぶりに新しい本に出会いました。


 はっぴぃさん 
荒井良二作 偕成社

 荒井良二さんがリンドグレーン記念文学賞を受賞したことで、書店フェアが
開催されていて、それで最近知ったのです。

 明るい黄色に、手書きの黒文字でタイトルがあって、そこにはかわいい鳩の絵があったのに、
見開きは一転して、シルバーメタリックな紙に、戦車や嵐の絵が鉛筆で描かれています。
まずはそこに驚かされ、驚いた気持ちのまま、ページを繰ると‥

  はやい あさです
  ぼくは はっぴぃさんに あいにいきます
  でも はっぴぃさんには
  まだ あったことがありません

と突然男の子は言いながら(実際には台詞にはなっていまぜんが)、
朝もやが
立ち込めている、いなかみちを歩いていきます。
 次のページでは、今度は帽子に花を飾った女の子が、同じように言いながら、
足早に通り過ぎて行きます。遠くに見える山の上の大きな石の上にはっぴぃさんは
ときどき くるのだそうです 
山のふもとには倒れかけた電柱や戦車が
描かれています。

 どう考えても、平和な風景ではありません。何か一大事が起こっている場所なんです。
二人の子供も、その一大事のためにはっぴっさんに会いにゆくところなのでは?と思いました。

 山道に入ったあたりで、男の子と女の子は出会い、どこへ行くのだろう?と
互いに意識します。そのあたりからの、絵の描き方がとてもすごいと思いました。
 それは作者の視点なのでしょうか? それとも山へ降り立つという「はっぴっさん」
の視点なのでしょうか?手前に大きく、枝にとまっている
緑の鳥が描かれ、その鳥が、
山道を行く二人を見てるんです。
 山のてっぺんで雨に降られたときも、雨宿りをする二人を、遠いところから見下ろす
誰かがいて、その誰かのあたりでは(ページの左側)、もう陽が射しているのがわかります。

  はっぴぃさん はっぴぃさん
  ぼくのねがいを きいてください はっぴぃさん

  はっぴぃさん はっぴぃさん
  わたしの ねがいを きいてください はっぴぃさん

  ふたりは おおきな たいように むかって
  たくさん ねがいを いいました

  たくさん ねがいを いいました

 何を、誰に向かって言っているんだかわからないけど、漠然と心の中で祈っている時があります。
それは、自分や自分の家族が健康であることに対してだったり、優しい言葉が染入った時だったり。
そのなんだかわからない祈りの気持ちが、この本の最後のページで、二人が山を降りて
いくところから伝わってきて、沈みかけた太陽に、この二人が住む場所にも、平和が
訪れますようにと祈りながら本を閉じました。

★おまけ1★
いつか、ずっと昔 江国香織作 荒井良二絵 も大変おすすめです。

★おまけ2★
荒井良二さん受賞記念原画展が7月6日から18日まで、東京・護国寺の講談社Kスクエア
というところで開かれるそうです。ぜひ、出かけてこようと思っています。

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まめじかカンチルが穴におちる話

2005-07-10 15:22:27 | ひらきよみ(読み聞かせ)

 3回目の「読み聞かせ」は、6月の3週目、6年生のクラスでした。
私が選んだのは まめじかカンチルが穴におちる話


 おおきなポケット7月号(福音館書店)
に、松井由紀子再話 柚木沙弥郎絵 で
載っていましたが、おはなしのろうそく8に入っている、インドネシアの昔話だそうです。

 6年生のクラスに、昨年度3回程入る機会がありましたが、やっぱり一番本選びに
悩みました。上の学年へ行けば行くほど本が好きな子と、そうでもない子がわかれて
くるので、あきらかに飽きてしまっているなあというのが、読んでいる最中にも
伝わってきます。

 でも、今回のカンチルの話は、ちょっと自信がありました。なにしろ、話が
おもしろいのです。

 大好きなドリアンを食べて、満足して駆け回っていた小さな「まめじか」のカンチル。
突然、ジャングルの中の大きな穴に落ちてしまいました。地上にもどるためには、
どうしたらいいのだろう?と考え、とてもいいアイデアが浮かんだのです。

「ホーン、ホーン」となき、初めにサルを誘いいれます。誘い文句はこの通り。

「たいへんなことがおこるんだ。今日、世の終わりがくるって、アラーの神の
お告げがあったんだぞ。地上にいるものはたすからないけど、この穴の中に
いるものだけが生きのこれるんだって。だから、ぼくはここにはいっているんだ」

 同様の手口で、トラとゾウも穴の中に引き入れます。誘うときに、クシャミをしないか
どうかも確かめておいたことが、最後に役立ち、カンチルだけが、みごと穴の外に
出られるのです。

「やあ、穴からだしてくれて、どうもありがとう。じゃ、みんな元気でね」

 太字に変えたところの、カンチルのせりふが読みたいばっかりに、今回この話を
選んだのでは?と自問してしまうほど、ここを読むのは楽しかったです。一体、この先
どうなるの?と思わせておいて、最後の最後で、あっけらかんとジャングルの中に
カンチルだけが消えていきました。

いつものように、「おしまい」と言った後、しーんとしていた教室が一瞬ざわめきました。
その場にいた子誰もが、あっけにとられ、インドネシアのジャングルから教室に戻ってきた
ことが、それでわかりました。こうなると、「今日の本大成功!」 だと思います。


 ところで「おおきなポケット」は昨年の4月号よりリニューアルされて、和田誠さんが
表紙を担当されています。ふくやま美樹館で和田さんの展覧会があるそうです。
広島県および、西の方にお住まいの方、うらやましいです。

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イエペはぼうしがだいすき

2005-07-08 16:54:01 | ひらきよみ(読み聞かせ)

 2回目の「読み聞かせ」は、6月の最初の週に、4年生のクラスへ行きました。
私たちの持ち時間は、朝の読書タイムの15分間で、基本的に2人組で入ります。
(前回は私のペアの方が初めてだったので、一応先輩の私が2冊読みました)

 この日は、ペアさんの選んだ本がおはなしだけのエパミナンダスだったので、
私はビジュアル系?でいこうと思い、
イエペはぼうしがだいすき 
石亀泰郎写真 文化出版局
にしました。    
 
 写真家の石亀さんが、デンマークの公園でイエペという名の男の子に出会い、
その子がコレクションしている帽子を中心に、彼の生活の様子を写真に撮らせてもらい、
本にしたものです。
 この本の魅力は、なんといってもイエペのかわいらしさ!!!魅力的な主人公が描ければ、
その作品はそれだけで、成功したも同じ、というようなことを何かで読んだことがありますが、
ほんとうにその通りだと実感できます。
 それに加えて、何度もページをめくりたくなるのは、イエペ自身や、イエペの保育園で
お友達が着ている服がとてもかわいいということ。なんてことはない服なのに、色の
組み合わせ方がいいのかなあ。レゴブロックを思わせるような、赤・青・緑・黄色を
上手に合わせています。
 忘れてならないのは、イエペの家の中や、保育園を撮った写真。朝食のテーブルに
並んでいる、牛乳パックは、薄いブルー地に大きく白いデイジーの花が描かれていて、
すごくかわいいんです。保育園の庭にある三輪車も、長年使われていて赤のペイントが
はげてきてはいるけれど、余計な装飾などいっさいなしで、とてもすっきりしています。
 デンマークという国に行ったことないんですが、この本を見ているだけでも、
生活デザインに対する意識が高い国なんだなあということがわかります。

 かんじんの「読み聞かせ」の方は‥。前の方で聞いていてくれた女の子の何人かには、
イエペのかわいらしさが通じているのがわかりました。
 ある日、帽子をかぶらないで保育園に行ったら元気が出なくって、かわりにつぶれた
サッカーボールをかぶったら、気持ちが落ち着いた場面とか、一番のお気に入りの、
茶色の帽子をかぶって行ったら、その日は遠足だったので、うれしくってスキップしちゃった
場面とか。

 私にとって、とっても遠い国だったデンマークが、この本を知ったことで、
ひとつ身近に感じられるようになりました。

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そらいろのたね

2005-07-07 17:47:20 | ひらきよみ(読み聞かせ)

 今年初めての読み聞かせは、4月の最後の週に、1年生のクラスでした。
選んだのはこの2冊。



ゆかいなかえる  そらいろのたね

 どちらの本も、「読み聞かせ」としては初挑戦の本でした。っていうか、
まだ「読み聞かせボランティア」を始めてから日にちが浅いので、たいていの本が
大勢の前で読むはじめての本なんですが。

 「かえる」の方は、春に1年生のクラスがまわってきたら、ぜひ読みたいなあと
思っていました。
 自由に泳ぎ、遊ぶかえるたちが、なんか1年生の姿と重なって‥。ちょっとうすのろで
意地悪な感じに描かれている、亀の甲羅の上にかえるたちが乗ってしまう場面も
おもしろいし。(亀はまったく気がつかないし)

 「そらいろのたね」は、家では何度読んだことでしょう‥。
 なんといっても好きな場面は、たねから芽生えたそらいろの家が、ページを
繰るごとに大きくなっていき、中に入れる動物たちがしだいに大きくなって、
数も増えていくところ。
 掲載した写真のページには、ぐりとぐらもいるし、こぐまのこぐちゃんだって、
赤いバケツをちゃんと持って来ています。

 1年生のクラスでこの本を見せたら、半分以上の子が「知ってる、知ってる!」と
言ってくれて‥、でもちょっと驚いたのは「見たことない」という子も5,6人は
いたかなあ。クラス中の子が必ず1度は見たり、読んでもらったりしているはずだと
思っていたので。

 実際に読み始めてみると‥、1年生の真剣さというか、言葉は悪いけど、食いつきの
よさを感じました。
 みんなひよこになったり、ブタになったり、ゆうじくんのともだちになって、
実際に家に入って来ているような気分になっていたんじゃないかな。読んでいる私も、
「一体感」を覚えました。

 きつねがやって来て、それはぼくのたねだったんだからみんな家から出て行って、
とい場面。
それはだめだよって、小さくつぶやく声も聞こえ、もうすぐ、次の次のページで
このお話はおしまいで、家もなくなってしまうんだよ、ごめんね、という気持ちで
最後のページまで行きました。


自分の娘に読んであげている時、それはそれですごく楽しい時間だったけれど、
小学校での「読み聞かせ」は、クラスがひとつになったように思う(自分だけなのかも
しれませんが)時間が訪れる時もあるし、臨場感みたいなものも味わえるし、
癖になってしまいます。

 

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わたしは、わたし

2005-07-04 15:36:10 | 好きな絵本

谷川俊太郎文、長新太絵 でもう1冊好きな本は、
わたし 
福音館書店 かがくのとも傑作集


 わたしは、私自身であることに変わりはないのに、
かかわる人(動物や宇宙人も含む)によって、呼び名が様々に変わっていく。

 お母さんから見れば、「娘」のみちこ。
さっちゃんから見ると、「お友達」。先生から見れば、「生徒」だし、
レストランへ行くと「おじょうさん」と呼ばれる。
外国人からは「日本人」、宇宙人からは「地球人」。

すごいなと思うところは‥


   きりんからみれば「ちび」
   ありからみれば「でか」

人間対人間、の関係だけでは終わっていないところ

(この場面は、読んでいると一番「うける」所でもある。)

  
   わたし

   しらないひとから みると
   だれ?

   ほこうしゃてんごく では
   おおぜいの ひとり


 非常に哲学的で、
「深いところ」まで降りていってしまう、
最後のページ。

そして、こういう詩の本を『かがくとも』のカテゴリーで
発行してしまう福音館書店!!

★おまけ★
おかあさんから みると おとうさんから みるとのページで
お母さんが新聞読んでて、お父さんが料理をしている絵、
とてもいいなあと思います。これは長新太さん、独自の
アイデアなんでしょうか‥‥。

それと、この話には続編があることをこのはなさんのところで、知りました。
『あなた』というタイトルとのこと。読んでみたいです。

コメント (7)
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