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報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“愛原リサの日常” 「女の戦い」

2025-02-17 20:17:34 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[7月6日01時57分 天候:曇 東京都墨田区菊川2丁目 愛原学探偵事務所2階]

 1階の玄関扉が外から解錠される。
 この建物の1階玄関は、防弾ガラス扉になっている。
 それに、外から見られないように、スモークフィルムが貼られたものとなっている。
 この建物は元々、暴力団の組事務所だったという噂もあり、それが肯定される理由の1つになっている。
 解錠も普通の鍵ではなく、セキュリティーカードによる電子ロックとなっている。
 それが解施錠される時、ウィィンとモーターの音がする。
 高野芽衣子は、その音を聞き逃さなかった。
 彼女は今、事務所横の倉庫で寝ている。
 倉庫だから色々と物は置かれているが、特徴的なのは、前の事務所で使用されていた折り畳みベッドが使用されていること。
 高橋が、ここを仮眠室として利用できると提言したのが始まりだ。
 愛原としては他にも寝る場所はあるし、わざわざ仮眠室にする必要は無いと消極的だった。
 しかし、今は高野が同じ主張をして、ここで寝ている。
 倉庫といっても、そんなに物が置かれているわけではない。
 1階のガレージにも倉庫はあるし、3階や4階にも収納スペースはある上、屋上にはプレハブの物置まであるからである。

 高野「フム……」

 高野は起き上がった。
 こんなこともあろうかと、服は上着を脱いだだけで、あとはそのままで眠っていた。
 文字通りの仮眠である。
 そして、コンバットナイフと銃を身に付けた。
 玄関から入って来た人物はガレージを通ってエレベーターには乗らず、ヒタヒタと階段を昇って来る。
 そのまま3階から上に行くだろうかと思っていたが、件の人物は2階のドアを開けた。
 階段側からアクセスしようとすると、ドアを開けると廊下がある。
 入ると、右手沿いに扉が2つ並んでいる。
 左手側にはエレベーターの扉がある。
 手前の扉が事務所入口、奥が倉庫入口になっている。
 その人物はそっと階段室の扉を閉めると、事務所のドアを開けようとした。
 営業時間以外は、事務所の扉には鍵が掛かっている。
 こちらはカードキーではなく、普通の鍵だ。
 そっと鍵を差して回したつもりだろうが、シリンダー錠の哀しさで、解施錠の際には、『カチッ!』と、それなりの音がする。
 そして、その人物が事務所に侵入する。
 一旦扉が閉まってから、高野はそっと扉を開けた。
 玄関の扉はオートロックだが、事務所のそれは違う。
 普通は扉を閉めた後、敵に侵入されないよう、内鍵を閉めるものだが、その人物はそれをしなかった。
 よほど自信があるのか、それとも、それを忘れるほど焦っているのか。
 それとも、ただのうっかりか。
 その人物は、愛原の机の引き出しを開けた。
 そこから何かの鍵を取り出した。
 それは金庫の鍵。
 それを持って、愛原の机の斜め後ろにある金庫の扉を鍵を差し込んだ。

 高野「そこまでだ。動くな」
 ???「!!!」

 高野は金庫破りをしようとしていた人物の頭に、拳銃を突き付けた。
 そして、空いている左手で頭に付けたヘッドランプを点灯させる。
 そこに映ったのは……。

 パール「チッ!」
 高野「まあ、だろうね。多分、読者もそうだと思っていたでしょうよ」
 パール「……何で私だと分かった?」
 高野「コネクションと違って、正義側のテラセイブが愛原先生を裏切るはずがないもの。いずれは戻って来るものだと思っていた。まあ、さすがにこんな夜中は非常識だと思うけど」
 パール「……見逃してくれない?」
 高野「条件が複数ある。1つは、『どうしていきなり愛原先生の前から逃げたか?』『どうしてこの時間に、それも、この金庫を勝手に開けようとしているのか?』この質問に答えてくれたらね?もちろん、正直に」
 パール「最初の質問の回答。テラセイブに、作戦失敗の報告をいち早くしないといけなかった為。2つ目の質問は、作戦失敗の尻拭いを命じられた為」
 高野「曖昧過ぎるね。不合格」

 高野は拳銃の引き金を引いた。
 建物中に、大きな発砲音が響いた。

[同日02時17分 天候:曇 同地区内 愛原家4階・リサの部屋→2階事務所]

 リサ「わあっ!?」

 変な夢を見ていた為に、鬼形態に戻っていたリサ。
 長く尖った耳は、人間形態よりも聴力が鋭くなっている。
 だから、発砲音が聞こえた時にはいち早く目が覚めた。

 リサ「な、なに!?」

 リサはベッドから飛び起きた。
 丸首や半袖に紺色の縁取りがされた体操服に、紺色のブルマを穿いている。
 BSAAに追い詰められてロケットランチャーの直撃を受けるという夢を見ていたので、少し汗をかいていた。
 部屋の外に飛び出すが、そこは何も無い。

 愛原「何だ、今の音は!?」
 リサ「先生も聞こえた!?」
 愛原「銃の発砲音がしたぞ!?どうなってる!?」
 リサ「どこから聞こえた?」
 愛原「分からん。だが、高野君が下の階で寝てるはずだ。行ってみよう」
 リサ「うん!」

 リサは愛原について、4階からエレベーターに乗り込んだ。
 そして、高野が寝ている2階に向かう。
 エレベーターを降りると、事務所の照明が点いていた。

 愛原「高野君!?」
 高野「あ、先生。お騒がせして申し訳ありません」
 愛原「さっき、銃の音がしたが……」

 愛原は、倒れているパールの姿を見つけた。

 愛原「パール!?何でここに!?」
 高野「ご安心ください」
 愛原「まさか、死んで……」
 高野「違いますよ。ちょっと脅かして、眠らせているだけです」

 高野の話では、銃声の正体は空砲。
 それでパールが怯んだ隙に、麻酔注射を打ち込んで眠らせたとのこと。

 高野「そこの金庫を勝手に開けようとしたのです。何か心当たりはありませんか?」
 愛原「金庫だって?札束と金塊くらいしか入れてないが……。あ、いや、待てよ……」

 愛原は金庫を開けると、札束や金塊を入れている棚ではなく、1番下の引き出しを開けた。
 その中には、ボイスレコーダーが入っている。
 これは群馬に行った際、斉藤秀樹とのやり取りを録音したものだ。
 原本はデイライトに渡したが、コピーを保存して金庫に保管していた。

 愛原「これを狙っていたのかな?」
 高野「そうかもしれませんね」

 だが、高野は別の物を注目していた。
 それが札束だったのか、金塊だったのかは不明である。

 高野「私は一旦、ここで消えます。今のテラセイブは敵対したところで大したことはありませんが、そのメンバーが不審な動きをしていると、“青いアンブレラ”に報告しないといけませんので」
 愛原「そうか。キミのことは、デイライトさんには内緒にしておくよ」
 高野「ありがとうございます。それでは、屋上から失礼致します」
 愛原「ああ」

 屋上からエイダ・ウォンよろしく、フックショットを使って近隣のマンションを伝って移動するのだろう。
 フックショットを使う描写があるのかは不明だが、まるでキャッツアイだ。

 リサ「パールさん、どうするの?」
 愛原「取りあえず、部屋に連れて行って寝かせとけ」
 リサ「う、うん」

 

 リサは前屈みになって、パールを抱え起こした。
 さすがは鬼形態。
 女性とはいえ、大の大人を軽々と抱えた。

 愛原「俺は屋上のドアを確認してくる。高野君が去ったら、あとは内側から鍵を掛けるだけだからな」
 リサ「分かった」

 リサ達はエレベーターに乗り込み、リサはパールの寝室がある3階へ。
 愛原は屋上への階段がある4階へ向かった。

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1 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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Unknown (雲羽百三(一代法華))
2025-02-19 02:52:48
https://x.com/JAPANBOY_Dai/status/1891904586379669610?t=kJNNrySRIwb27FBcudjpyA&s=19

私の親族にも大学教員夫妻がいたが、少し風変わりな人達だった。
もちろん甥っ子達である私達には優しかったが。
作中に登場する愛原公一のモデルは、実はそんな私の元・大学教授の伯父である。
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