ほほえみ

暑いので
氷を入れた袋を
脇に挟む

この人のほほえみ
あの人のほほえみ

通った幼稚園は
仏教であったから
幼稚園の歌の中で
「みほとけさまのいうとおり」
という言葉があった
そのころは
まったくその意味がわからず
ただその歌詞を聞いて歌うとき
「ほほえみ」のイメージしかなかった
それで大方
間違いではなかったのだ

兄の通った幼稚園は
キリスト教で
「エスさま」だったらしい

白杖の人
南を歩
陽
腹を出して
ひっくり返ったままの
セミ
手に包んで
近くの植え込みに
その直後
なにかを感じた
やわらかいものに
包まれた感じがあった

トンボ
北へ向かう
むぎわら帽の男
西へ向かう
胸に手を当てた女
南へ向かう

男は暑さのため
頭から水をかぶった
赤い階段をのぼる人
降りてくる人
この階段の
たくさんの
物語

静けさを　手に入れた
夜
雷の音
光の中で
電気を消して
静かを手に入れていた

帰る時
自転車置き場で
かばんから
ケータイを落とした
知らずに行こうと思ったら
「ケータイ落としましたよ」
と見知らぬ人が通りすがりに
告げていった
ふう
助かった