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映画「シルミド」モデルの事件、韓国政府の責任認める

2006-07-14 23:38:55 | Nonsense
【ソウル=中村勇一郎】韓国国防省の「過去史真相究明委員会」は13日、映画「シルミド」の題材になった実尾島事件(1971年)の最終調査結果を発表、金日成主席の暗殺を任務とした特殊部隊内で違法な処刑や過酷な訓練が行われていたことを認め、隊員の遺族に死亡経緯などを公式通知するよう求めた。
調査結果によると、部隊は北朝鮮ゲリラが当時の朴正煕大統領の殺害を図った「青瓦台襲撃事件」(68年)の報復として、朴大統領が創設を指示。中央情報部(現・国家情報院)が民間人から隊員を募集し、実尾島で特殊訓練を施した。

隊員のうち6人が脱走を図って処刑されるなどし、1人が過酷な訓練で死亡。残りの隊員は71年8月、同島を脱出してソウルに向かったが、軍や警察と銃撃戦になり、民間人を含む57人が死亡した。政府は反乱と発表、生存者は処刑された。(06/7/14読売新聞)

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1971年8月のことだった。韓国のインチョンからソウルに向かうバスが、謎の武装集団に乗っ取られた。軍と警察は、彼らを武力で制圧。銃激戦で彼らの20名が死亡。生き残った4名も全員処刑された。この事件を当初韓国政府は、北朝鮮ゲリラによるソウル突撃と発表。しかし、その後韓国軍のある部隊の暴動と訂正して事件は謎に包まれていた。

事件を遡ること3年前の68年1月、北朝鮮の特殊部隊がソウルの大統領府に潜入。警官隊の銃撃戦が起こった。時の韓国政府は死刑囚を含む凶悪犯からなる特殊工作隊を結成し、ひそかに実尾島(シルミド)で過酷な軍事訓練を行う。闇世界で働くヤクザのインチャン(ソル・ギョング)は、抗争に巻き込まれて事件を起こし、死刑を宣告されていた。ところが、空軍のチェ・ジェヒョン准尉((アン・ソンギ)から死刑を逃れるための取引をもちかけられる。それがシルミドで結成される第684部隊への参加であった。

インチャンと似たような事情の凶悪犯たち31名を乗せた船は、シルミドに到着する。

彼らに下された唯一の命令は、なんと「北に潜入して、金日成の首を取ること」だった。

ところがその離島で待っていたのは、訓練を超えた過酷なしごきだった。それでも彼らは、「任務を果たせば犯罪者から英雄になって故郷へ帰れる」という教官の言葉を信じ、過酷なしごきに耐えていた。まもなく、そのしごきに耐えられず7名の人間が亡くなっていった。こうした状況の中で、世間から離れた彼らは奇妙な連帯感で結ばれていく。

やがて政治の流れが変わり、政府の方針も路線変更されると、暗殺計画も中止された。すると国家にとって秘密の暗殺部隊684は邪魔で面倒な存在になっていく。そのため、部隊ごと抹殺することを決断し、彼らを育てた軍の上官に彼らの”始末”を命令したのだったが。。。

この映画での観どころは、二点ある。囚人たちを訓練という名のもとにしごく軍部と、684部隊員たちは立場という関係性では対立している。ところが、軍人も部隊員たちも離島の”閉鎖された世界”につながれた囚人という意味では、全く同じ立場に位置する。毎日朝から晩まで、離島で非現実的であまり効果もないと思われる訓練だけをくりかえし行っていくと、まるでそこだけ時がとまったかのような閉鎖社会がどんどん圧縮されていく。その姿は、滑稽で哀れである。そんななかでストックホルム症候群のように、部隊のリーダー格として頭角を現すインチャンとチェ・ジェヒョン准尉は、言葉にださないながらもお互いを認めあっていく。この部分は、女性の入り込めない、そしてちょいワルオヤジという連中にも参加できない男の世界だ。そして国の軍の幹部として徹頭徹尾、誇り高く上からの命令を忠実にこなしてきた”優秀な”軍人として准尉が最後にとった行動の滅びの美は、インチャンが統率していく第684部隊の凄絶な行動にも合致していく。結局、彼らの末路はどちらの立場であったとしても国の政治がもたらした運命にさからえなかった、といくあまりにも虚しいことだ。ここでの東洋的な悲しみは、欧米人には理解しにくいだろう。

そして何よりもこの映画が国籍を超えて日本人の感情に届くのは、国家のあまりにも残酷なしうちだ。国のため、祖国統一のため、そんな言葉と家族のために過酷なしごきに耐えてきた人々を、外交政策転換のため重い犯罪者とはいえ国民の命を簡単にひねりつぶしてリセットしようという行為。もっともお隣のお国の事情とばかりも言ってられない。ニッポンのカイシャでも、散々働かせて、いざ用済みになったらリストラ、ということもあるだろう。

この映画「シルミド」を観た時はなかば半信半疑だったのだが、このようにほぼ事実であることがあかるみでて、映画の存在が再び脚光をあびるであろう。

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