千の天使がバスケットボールする

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東京クヮルテットの室内楽 Vol.3

2009-02-20 23:43:57 | Classic
今年も来日してきた「東京クヮルテット」。そして、今年も王子ホールに聴きに行った「東京クヮルテット」。しかも「オール・ベートーヴェン・プログラム」という魅力的なプログラム。

かって世界に通用する音楽家は、3人だけと言われていた時代があった。小澤征爾と五嶋みどり、内田光子、そして「東京クヮルテット」と。その後、世界的なコンクールの入賞者に日本人の名前が見つからない時がないくらい、若手の台頭と飛躍がめざましい日本の音楽家の充実ぶりと観客の成熟度ぶりだが、弦楽四重奏団だけで食べていけるかというとそれは現実的にははっきり言って無理。オケやソロで活躍する音楽家がイベントや気のあう仲間で結成して不定期に集うクヮルテットではなく、文字どおり弦楽四重奏団だけで演奏活動と生計を担うことができる音楽家は、世界中探してもそうそういない。演奏の難しさと採算ベースにのせるのが難しいのもカルテットであろう。

しかし「東京クヮルテット」は1969年結成以来メンバーの入れ替わりはあったが、世界に通用するというよりも世界最高峰の弦楽四重奏団として聴衆を魅了し続けている。年間、彼ら4人は世界中で100以上のコンサートをこなす。今夜は、銀座の王子ホールで、明日は川崎。そして何故か、富山をめぐって、来月は、カナダ、ドイツ、イタリア、英国、またイタリアに戻り、4月からはスペイン、ポーランド・・・。まさに「Tokyo String Quartet」は、ハリウッドで言えばセレブな渋い俳優のような知名度と。熱心なファンが各地で待っていることが予想される。逆に四重奏楽団ではひとつの国内を主な拠点で活動していくのは難しく、世界中を旅しなければならないご苦労もありかと思われる。

時差や各国の季節の違いなどに慣れるのもなかなか大変では、そんな余計な気使いも霧散させるかのような第6番の演奏。ベートーベンが30歳を目前とした初期の力作で、ベートーベンらしい野心的な面をのぞかせながらすでに完成度も高いこの曲を、メンバーは高い集中力と緻密さで演奏していく。音のひとつひとつが明晰でありながら、融和して響き、極上のブランデーというのはかくものかと想像される。
次の「セリオーソ」(”まじめな”という意味だそうだ)は、昨年王子ホールで録音され、今般CDとして発売中の曲でもある。
アラ-フォー世代のおじさんベートーヴェン(当時40歳)だった彼は、かかりつけの医師の親類、18歳のテレーゼ・マルファッティと真剣な恋をする。彼にとって、いつでも恋は本気度100%。そんな”オジ”のやる気満々のアプローチにおじけづいたのか、テレーゼは突然、故郷に去ってしまった。何度目かの失恋にうちのめされた彼に、友人ニコラウス・ズメルカルのアドバイスがあったのか知らないが、彼はテレーゼへの想いを整理して、この曲に昇華して封印した。それゆえか、東京クワルテットの憂いをひめた旋律に踊るスケルツォも、一時のなぐさめのような悲しみすら漂う。
最後の第15番は、長丁場の演奏にも関わらず、紡がれる4つの音の旋律の豪華さに、最後の演奏にふさわしい充実感がある。ホールに響き渡る黄金の響きは、結成40周年という円熟期を迎える弦楽四重奏団の実力を知らしめ、そこにたちあえた者の幸福感をあらためて感じさせてくれる。

ところで、来年の2010年2月18~20日まで、王子ホールで創立40周年を記念した企画が催される。1年後の19日(金)の夜は、観客のアンケートによる人気曲を演奏する予定。当日配布されたアンケートに私も3曲チェックを入れて投票!
・「死と乙女」シューベルト
・「皇帝」ハイドン
・「不協和音」モーツァルト
全体のプログラミングは考えず、東京クヮルテットの生演奏でとっても聴きたい曲をリクエスト。
やっぱり来年も聴きにいきたいぞ、「東京クヮルテット」。

--------2009年2月20日(金)19:00開演 王子ホール--------

【プログラム】 オール・ベートーヴェン・プログラム

弦楽四重奏曲 第6番 変ロ長調 Op.18-6
弦楽四重奏曲 第11番 ヘ短調 Op.95  「セリオーソ」
弦楽四重奏曲 第15番 イ短調 Op.132

【出 演】 Tokyo String Quartet

マーティン・ビーヴァー(ヴァイオリン)
池田菊衛(ヴァイオリン)
磯村和英(ヴィオラ) クライブ・グリーンスミス(チェロ)

■アーカーヴ
東京クヮルテットの室内楽