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「ホワイトハウスに日本を売り込め」NHKスペシャル第3回日本と米国

2008-11-02 23:07:16 | Nonsense
いよいよ明日は、米国の大統領選挙。「ブラッドレー効果」の信憑性は兎も角、今のところオバマ氏が新大統領に就任する可能性は高い。NHKスペシャルの「日本とアメリカ」の第三回、「ホワイトハウスに日本を売り込め」では、オバマ氏とマケイン氏のいずれが勝利するにしろブッシュ政権に代わる8年ぶりの新政権で、日本とアメリカの関係の方向性を探る日本の外交を追った企画である。

米国のワシントン、マサチューセッツ通り。ここは、各国の大使館が並ぶ別名「大使館通り」とも呼ばれている。その一角に、在外大使館の中でも世界最大になる日本国大使館が日の丸の旗とともに建っている。その大使館に勤務する石井正文公使は、昔のような貿易摩擦などの日米問題がないことによって、逆に米国にとっては日米の存在が薄れていると懸念している。

ご存知のとおり、米国では大統領の交代に伴い、主要な政権ポストも民族大移動(総入換え)が起こる。ワシントンの日本大使館は、今は民間のシンクタンクに所属しているが、政権入りが有望視されるアジア政策のキーパーソンになる人物に接近して、日米関係の重要性を訴えて、日本の存在感を高める活動を精力的行っている。経済面で急失速しているアメリカだが、なんと言っても「やせても枯れてもアメリカ」なのである。

オバマ陣営のマシュー・グッドマン氏は、現在のアメリカには、他の国々のことまで考える余裕がないので、日本の経験でいかせる分野でもっと指導して欲しいと伝える。さらに、ブッシュ政権時代は、一国行動主義の外交政策だったが、これからは世界の国々と協調していく路線転換をせざるとえないし、日本がアメリカに協力することは必要不可欠であると説く。これは、日本にとってチャンスであると同時に試練の時でもある。ここでの「試練の時」が、番組を観ていて現実的に厳しくせまっていくのがだんだんわかってくる。
日本側は、あらたな日米協力の柱として日本の得意な環境問題をうちだし、米国のためにやるのではなく、日本のために米国を利用しようと戦略をねっていくのだが、一筋縄でいかないのがさすがにアメリカである。大使館では「日米同盟タスクフォース」を主宰して、重要人物21人を招待して議論を重ね、知日派からは「世界経済1位と2位が協力すれば、世界に変革を起こせる」という前向きな意見をひきだすが、その”協力”の中身はなかなか日本の思惑どおりにはいきそうにない。インド洋の給油活動問題で追いつめられた福田前首相のさえない顔を思い出すと、そもそもあの方を選んだこと事態が、思いっきりミス・キャストだったことがわかる。米国の求めるこれまで以上の協力とは、結局、平和憲法を採択した日本が安全保障条約に心理的に抵抗があるのがわかるが、これまで以上にその安保面での協力の要請である。
具体的にはアフガニスタンでの勝利のために、日本には今以上の負担を望んでいる。それは、単に金銭的な援助だけではなく、明確には発言していないが、要するに人も派遣しろということである。終始穏やかに粘り強くアプローチする日本に対して、米国のアジア政策のキーパーソンたちの表情は、いずれも友好的な笑顔の中にも厳しさが窺える。

日本の存在が地盤沈下する一方、投資先としてあらたに魅力的なアジアの国として中国が台頭してきている。中国側は、お金をかけて北京に議会関係者を招待して活気にわくが、訪日する関係者は減少傾向にあるという。オバマ陣営のキーパーソンになるジェフリー・ベイダー氏は、新政権では中国の役割が益々重要になると断言する。そんな状況を反映して、こどもたちの授業でも日本語学習者の率は下降して、かわりに中国語がブームになっている。だいたい、日本の現状は、政治的に混乱し不安定であり、外交よりも年金問題などの国内問題が優先されると思われる。政治が不安定なら、国際貢献は難しい。
2008年1月のダボス会議で「Japan: A Forgotten Power?(日本は忘れられた大国なのか)」というセッションが開かれたように、日本は、先進国の中でもトップクラス級の物は豊富でサービス面も充実した便利な国になったが、難しいことは避け、そこそこでよい「パラダイス鎖国」になったと、マケイン陣営のマイケル・グリーン氏は、髭面に皮肉な笑顔を浮かべる。マイケル氏のいやみな苦笑いで私が思い出したのが、森永卓郎さんの「年収300万円時代を生き抜く経済学」である。元々は、勝ち組・負け組なる不毛な競争を回避して低所得でも送れる豊かな人生の提案だった”年収300万円時代”かもしれないが、その発想の根本は自分だけの自分がよければこともなしの小さな4畳半スペースでの平和と暮らしに閉じこもることでもある。日本全体の底上げ、福祉の向上をめざすなら、そのための財源も必要だから、納税額の少ない低所得者が増えても、それも困るのであるが、この年収300万円時代を選択する人は、難しい仕事は避け、そこそこの収入でよいというパラダイム鎖国の住人のようだ。(あれからほんの数年、年収300万円コースを歩こうと考える人は、もはや年収200万円以下でとても厳しい時代を迎えているのではないだろうか。)

米国に主導権を握られているかのように見える日米関係へのアプローチだが、石井公使はアメリカ側の要望を受け入れられる部分と受け入れられない日本の事情もあり、その調整をするのも我々の仕事と語っている。まさに試練の時である。言葉を選び、ねばり強く交渉する日本に比べ、米国のキーパーソンたちは速攻ではっきりと応える。そんな強気の米国におされぎみ?の日本は、やはりパラダイス鎖国なのだろうか。