千の天使がバスケットボールする

クラシック音楽、映画、本、たわいないこと、そしてGackt・・・日々感じることの事件?と記録  TB&コメントにも☆

小泉今日子さんの本棚

2005-10-27 22:39:14 | Nonsense
女優のキョンキョンこと小泉今日子さんは、読書好きで有名だそうだ。そんな噂と自伝風エッセーの評判から、今年の7月より読売新聞の読書委員のメンバーに白羽の矢がたち、読者に彼女の新鮮な書評が届くようになった。その書評(よみうり堂)が実に素適なのだ。私とは読書傾向が異なるが、忘れかけた、どきどきわくわくするような、また胸がときめく洗いたての真っ白な文章が綴られている。本の選択は、月に一回評者が集まり、積まれた本から興味をひいた本を持ち帰って読むそうなのだが、10代なかばから芸能界でタレントとして虚構の世界を生きてきて、家庭をもち、やがて再びひとりにかえった、いかにも小泉さんらしい静かで繊細な感受性がうかがえる本の選択である。

今日から読書週間ということで、小泉さんと彼女が主役を演じた映画「空中庭園」の原作者である角田光代さんの対談が掲載されていた。そこに小泉さんのご自宅の本棚(本人撮影)の写真ものっていたのであるが、所謂作家のような壁一面の天井まで届く本棚でもなく、また芸能人的なハイセンスなインテリアでもなく、ごく普通の通販で購入したような女の子の部屋の本棚という趣なのが、ちょっと微笑ましい。

作家の中で小泉さんの初恋の人は、太宰治さんだとか。アイドル時代、テレビに映るお調子ものの自分と、本当の自分との違いに苦しんでいる時に太宰の「人間失格」を読み、一時期恋をしたそうだ。女性は、一度は落ちる太宰である。その後向田邦子さんの小説を読み、恋愛って秘密だからすてきなんだ、秘密自体もすてきなんだなあと感じる。(私だったら、”素適”という字を使いたいところだが、小泉さんは”すてき”。その表現が、実に彼女の選ぶ本の雰囲気にマッチしている。)
そして読書の魅力は、小泉さんに言わせると、

「一人なのに興奮したり、うれしくなったりと、感動が動くのは不思議で楽しいこと。それには、本が一番向いている。」

何故、自分は読書が好きなのか。あまり考えたことがないのだが、体を動かさなくてもよい娯楽、という横着ものだからと漠然と考えていた。それに好きか嫌いかに理屈は不要。けれども改めて考えてみると、読書をすることによって多くの数え切れない登場人物の感情や理論、喜びや悲しみ、愛情、失望につきあってきたことになる。小泉さん的な表現では、”感動が動く”この体験は、本のなかの架空の人物、または実在の人物に自分を同化し、それぞれの人生の濃密な部分を自分の人生に重ねることによって、太くて確固たる内なる樹木を育てていることにつながる。それに作家の柴田翔氏も、自分が生きてる宇宙のことも、体のことも知らないまま死ぬのは残念だから、東京大学を定年退職した残りの人生は、本をたくさん読みたいと語っているように、あらゆる分野で知的好奇心をこれほど手軽に満足させてくれるものもない。

にも関わらず、若者を中心として読書離れはすすんでいることが世論調査で判明した。この一ヶ月間、本を読まなかった人は52%。残念なことだ。世界には、字を読めない人も多いのに。そして、読めば9割の人が満足するという。そうだ、やっぱり読書は、楽しい。だから今夜も金曜日だから、夜更かしして本を読もう。