当社がワイン機器やワイン用包装資材を海外から輸入して日本のワイナリーのみなさまに販売するようになって10年ちょっと。おかげさまで年々多くのみなさまから引き合いをいただき、それにつれて海外の取引先も多くなってきました。ワイン関係ではやはりヨーロッパとの取引が多いのですが、なかでもワイン機器についてはコストパフォーマンスに優れたイタリア製が中心です。5月初旬、今シーズン向けに発注済みワイン機器の製造状況を確認する目的もあって、イタリアのパートナー企業3社を訪問しました。
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1)カダルペ社 ・・・ タンク、チラー、フィルター、フローテーションシステムなど
まずはカダルペ(Cadalpe)。世界有数の観光地であるヴェネツィアの街から北に約50km、ヴァッゾーラというのどかで小さな町にあります。チラーやフィルター、フローテーションシステム等、ワイン処理に関する機器を中心に製造しており、またワインタンクや蒸留設備でも定評のあるメーカーです。
カダルペは知る人ぞ知る、発泡ワイン「プロセッコ」の産地コネリアーノ・ヴァルドッヴィアーデネ地区にほど近い。これは、カダルペ社近くのブドウ畑。プロセッコ種が急な斜面にびっしり。
最近小規模ワイナリーに好評の「フローテーションシステム」。日本ではまだなじみが薄いですが、マストの清澄化にとても有効です。
最近当社からもタンクの発注が増えているのですが、本社社屋の向かいにあるタンク製造専門の関連会社Cadalpe Service社では世界中からタンクを受注していて、現在非常に多忙とのこと。実際、アゼルバイジャンやイスラエルへの出荷待ちの巨大なワインタンクが屋内に入りきらず、社屋外で保管されていました。
カダルペのアピールポイントは、原材料から仕上げまで、品質にこだわっていること。たとえばタンクは、高品質のステンレス材を仕入れ、あとはほぼすべて自社で加工。溶接部の処理、ジャケットや脚の取付け、組み立てまで、自社の品質基準に従って社内で行っています。設計チームもいますので、特殊なタンクのご相談も気軽にしていただけます。
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2)ラガッツィーニ社 ・・・ チューブポンプ、ピストンポンプなど
次はラガッツィーニ(Ragazzini)。エミリア・ロマーニャ州の中心地ボローニャにほど近いファエンツァという町にあります。この辺りはほとんど起伏のない大平原地帯で、高速道路を走ると小麦畑や果樹園が一面に広がる景色が印象的ですが、ぽつぽつと大きな工場も目に入ってきます。周辺地域の特産品には生ハムやパルメザンチーズ(Parmigiano Reggiano)、バルサミコ酢などがあり、また優秀な機械メーカーが多数あることでも知られていて、イタリア国内でも豊かな地域のようです。
ラガッツィーニは、昔はピストンポンプを製造販売していました(もちろん今でも製造していますし、世界中で活躍中です)が、30年ほど前にPeristalticポンプ(いわゆるチューブポンプ)を世界で初めてワイン業界向けに売り出し、その「超スロー回転」のコンセプトと品質が広く受け入れられ、現在に至るまでワイン用チューブポンプでは断トツの実績とネームバリューを誇っています。20年ほど前からは産業用にもチューブポンプを販売していて、医薬品、建設、印刷、環境衛生等、様々な分野で実績を重ねてきています。
これは今回の出張で立ち寄ったピエモンテの名門ワイン醸造所、チェレット(日本ではサントリ-さんが販売)でのスナップ。やはり、ラガツィーニのチューブポンプでした。当社が扱い始めて8年ほどになりますが、ご使用いただいているワイナリー様からの反応も非常に良好で(追加でもう1台ご発注いただいたケースもあります!)、日本でもじわじわと愛用者が増加中です。
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2)ディエメ社 ・・・ メンブランプレス、除梗破砕機、選果システムなど
最後にディエメ(Diemme)。見にくいですが、5本の旗のうち1本は日本国旗。我々の訪問を歓迎して掲げてくれていました。ボローニャと古都ラヴェンナの中間にあるルゴという町にあります。巨大なロゴを冠した工場はとても大規模で、ルゴでは一番大きな企業だそうです。ワイン醸造機器全般を取扱っていますが、なかでも除梗破砕機とメンブランプレスはその品質とコストパフォーマンスで定評があり、世界市場での年間出荷台数はヴァスラン・ブーハーに次ぐ2番目。イタリア国内はもちろんですが、北米、南米、オセアニアといった主要な新興ワイン産地では近年ではヴァスラン・ブーハーを上回っているとのこと。
工場内では小型からこのような超大型まで様々なメンブランプレスを製作中。シャンパン専用機種もラインナップされています。もちろんバスケットプレスや除梗破砕機等もすべて社内で製造されています。
メンブランプレスの製造は一見タンクの製造工程に似ていますが、ステンレス板の厚みが全然違う。メンブランプレスの製造は非常に大掛かりです。ディエメでは溶接個所をX線で検査して、品質に万全を期しています。
これはフランスの専門誌La Vigneの最近の記事。「自動選果装置(オプティカル)で、ヴァスラン・ブーハー、プルンク、デフランチェスキに続き、ディエメも参入。ボルドーの3つのシャトーで試用したところ、ディエメは極めて評価が高かった」という記事。
実はディエメにはワイン機器メーカー以外に別の顔があります。ワイン機器事業部とは別にフィルター事業部があって、おもに鉱業、化学薬品、環境衛生などの分野向けに、巨大なフィルターを製造販売しています。ワイン業界の方にはオリろ過用のプレートフィルターを思い浮かべていただくと良いのですが、ただそのサイズが尋常ではなく、このフィルターが稼働しているところを想像するのが難しいほどです。もちろん、世界中に輸出されています。
これはフィルター事業部の実証テスト用のパイロットプラント。田舎町(失礼!しかし実際周りには何もない・・・)にある会社ですが、ワイン機器や大型フィルターといった特殊な自社製品を武器に世界中に進出している姿は、同じ「製造メーカー」に身を置くものとして素直に感心します。他の2社もそうですが、国際的には全く知られていないような小さな町にある中小規模の会社でも、自社製品でもって世界市場で競争していくというバイタリティやチャレンジ精神は、ぜひ見習いたいとあらためて思いました。
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海外取引先とのやり取りは最近ではほとんどがEメールで済みますので、一昔前のことを思うと格段に便利になりました。時差はあるにせよ、物理的距離はほとんどなくなったと言ってよいと思います。一方で、電話や手書きファックスでやり取りしていた時のようなダイレクトな感覚は薄まり、人間関係における距離感はむしろ遠くなってきたとも言えます。国内でももちろんそうですが、海外との取引の場合、相手との信頼関係がとりわけ大切ですので、展示会等を利用してできるだけ海外取引先と実際に顔を合わせる機会を作るようにはしています。それでもやはり相手先に訪問して工場を見せてもらいながら、あるいは食事を一緒にしながら、直接会話するというのはよりお互いの距離感が縮まりますので、非常に意義深いことだと思います。
今後も取引先との信頼関係をより深め、日本のみなさまにより多様な製品・サービスを、より高い品質でご提供できるよう、取組んでいきたいと思います。
最後に、これはピエモンテの名門醸造所、エリオ・アルターレでのスナップ。東日本大震災のことを気遣って、折り鶴(!)を作ってくれていました。
企画開発グループ 渡邊 拓也
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