【岩崎俊夫BLOG】社会統計学論文ARCHIVES

社会統計学分野の旧い論文の要約が日課です。

時々、読書、旅、散策、映画・音楽等の鑑賞、料理とお酒で一息つきます。

佐々木隆治『私たちはなぜ働くのか』旬報社、2012年

2012-10-01 00:09:42 | 経済/経営

             

  著者自身の大著『マルクスの物象化論』をベースに、若い労働者、学生に向けて書かれた『資本論』入門のテキスト。


  現代社会が資本主義社会であり、そこで働く労働者は生活のために自発的に雇われて働かざるをえない、賃労働者としてしか自らのアイデンティティを示し得ない、過酷な労働をなぜあえて選択せざるをえないのか、それを可能にしている条件は何なのか、それらを解明することが本書の目的だという。

  「資本論」の概説的な特徴は否めないが、著者は資本主義生産様式が全面的な商品交換社会であり、この社会では私的労働が直接社会的労働たりえず、商品交換をつうじてしかそれを実証しえないとし、物象化の力がこの社会を支配し、成立させていることを自説としてもっているので、そこに力点をおいて議論展開を行っている。

  議論はおおむね次のように進んでいく。商品=貨幣関係論、価値論、剰余価値生産、賃労働と資本、自己増殖する価値として資本、生産手段によって支配される労働者、労働時間の延長、協業、マニュファクチュア、機械制制大工業、資本による物質代謝の攪乱、物象の力を弱める労働者の振る舞い方(労働の社会的形態の変更、アソシエートを通じた労働者の生産手段との結びつきの回復、労働時間の短縮、生産の私的性格を弱める活動、生産手段に対する従属的な関わりの変更)。

  現代社会の困難な実情を見据えつつ、変革の展望をみとおしつつ理論が進められいることに好感がもてる問題提起の書。


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