


今から95年ほど前に作られたラング監督の最高傑作。もちろん無声映画である。
脚本を書いたティア・フォン・ハルボウはラング監督夫人。完成時の上映時間は3時間だったが,公開時に2時間半に再編集され,その後散逸したオリジナル・フィルムをG・モロダーが可能な限り収集し編集した。これが現存版の「メトロポリス」である。
摩天楼が聳え立つ空想未来都市メトロポリスのセット,工場内部のメカニックなセット,人造人間製造の設備など怪奇幻想的でありながら,ファンタスティックでもある。登場する俳優の演技,形相は迫力があるうえ,労働者集団の動きと流れにも唸らされる。サイレント映画とは思えないほどの力感に溢れている。SF映画であるが,社会が支配階級(資本家階級)と被支配階級(労働者階級)から成るという階級的視点がズバリとまずあり,最後に頭脳(精神労働)と手(肉体労働)の間に心の仲立ちがなければお互いに理解し合うことはできないというメッセージが示される。
舞台は2026年を想定した未来都市。ラングは100年後の未来を映像化したのである。機械文明が高度に発展した,ビルが空高く聳え立つとある都市は,二つの社会から成り立っていた。地上は富を誇る支配階級が暮らす街,もうひとつは地下深くにある貧しい労働者階級が住む町,その上層に工場があった。彼らには自由はなく,過酷な労働に従事していた。地下に住むある労働者の娘マリア(ブリギッテ・ヘルム)は平和をとき,その考え方は労働者のあいだに浸透していた。
ラストで正義とは愛の力によるものであり,真実とは心の働きによって導かれることを,1920年代に力のある映像で示したことに驚嘆する。
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