写真家である著者は、そのルーツが今井正監督、黒澤明監督などの映画にあると書いています。
若くして写真と関わる仕事につくことを志向し、念願かなって毎日新聞社に入社。写真関係の仕事につくことはできたにもかかわらず、組織のなかでの仕事は、著者の意図することと異なるという意識が芽生え、12年間、勤めたあげくに退社し、フリーとなりました。
以後、一貫して、アメリカ在住の戦争花嫁、中国に取り残された残留孤児、ヒロシマの被爆者(被爆当時広島に居て、現在韓国にすむ朝鮮の人)を訪問し、撮り続けます。
著者の方法論は、テクニックで撮る写真ではなく、対象を見据えたところから浮かび上がってくる真実を撮ることであり、この方法論は方法論そのものとして完結するのではなく、撮影の対象を規定するそれでした。
著者は、戦後の経済成長の繁栄のなかで、日本人は過去を忘却、とりわけ大戦と戦前の15年戦争にまきこまれた人々の不幸を忘れてしまっている、と述べています。驚くべき鈍感さで・・・。
著者は「昭和の負の遺産」を後世に伝えることに生涯と生活をかけ、撮影活動を続けてきました。
本書には、著者自身による写真が多くの写真が挿入されているが、どれもこれもそれらを見る人に訴えかけてくるものがあり、真実そのものです。
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