【岩崎俊夫BLOG】社会統計学論文ARCHIVES

社会統計学分野の旧い論文の要約が日課です。

時々、読書、旅、散策、映画・音楽等の鑑賞、料理とお酒で一息つきます。

週刊誌というメディアのレーゾンデートル

2009-11-27 09:19:11 | 評論/評伝/自伝
元木昌彦『週刊誌は死なず(新書)』朝日新聞社、2009年
              週刊誌は死なず
 週刊誌というメディアがピンチです。売り上げの減少、休刊、廃刊に追い込まれています。著者は、このまま雑誌というメディアは消滅していいの? と疑問を発しています。

 確かに雑誌記事に「勇み足」は多く、品の悪い記事があとを絶たないのですが、雑誌の存亡を左右する背景に権力の側の企みがあると言います。

 その根拠はあげれば多くあるのでしょうが、たとえば現行裁判では名誉棄損でメディアが訴えられた場合には、メディアの側で事実の立証をしなければならないことになっているとか(p.214)、慰謝料が桁外れに高額になっていることとか、です。この危機意識が、かつて週刊現代の編集をつとめた経験のある著者の問題意識です。

 それでは、雑誌のレーゾンデートルとは、著者によってどのように押さえられているのでしょうか? 著者は端的にそれは「スキャンダルで権力者の首を取ること」(p.129)だと言いいます。この観点からかつて雑誌記事は確かに成果をあげました。72年3月の「沖縄密約事件」での毎日新聞・西山記者と女性の関係の暴露、73年ごろの青山学院大学教授の教え子暴行事件のスクープ、89年の時の首相であった宇野首相の愛人スキャンダル、オウム事件での麻原被告の『自白調書』の全文公開(警察・検察は調書は存在しないと隠していた)などなど。

 テレビでも新聞でもできないことをする、体制内化したメディア世界の異端児ではあるが、真実を暴く役割が、雑誌規制というファシズムのなかで損ねられてはならないというわけです。

 知らない業界の知らない話がたくさん書かれていて面白く読めました(雑誌にも新聞社系統[週刊朝日、週刊読売など]と、出版社系統[週刊文春、週刊新潮など]があるということなど)。

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