【岩崎俊夫BLOG】社会統計学論文ARCHIVES

社会統計学分野の旧い論文の要約が日課です。

時々、読書、旅、散策、映画・音楽等の鑑賞、料理とお酒で一息つきます。

藤沢周平『海鳴り(上)』文春文庫、1987年

2011-04-27 00:05:14 | 小説

             

 藤沢周平の世話物です。NHKラジオのラジオ深夜便という番組で松平定知さんが朗読していたので(現在も進行中)、読みたくなりました。

 紙問屋の小野屋新兵衛は46歳、潰れ問屋相模屋孫八の株をめぐって競り合い、仲買から問屋株を買い受け問屋仲間に入りました。商売はそれなりに順調でしたが、体力に生活に疲れがでていることを自覚し始めています。

 妻、おこうは、夫の新兵衛がかつて奉公女中おたみとの浮気をかぎつけてから、冷淡そのもの。夫婦関係は冷え切っていた。倅の幸介はそれにつけこんだのか、おたみに甘やかされ、悪い仲間と岡場所に遊び三昧でした。小野屋を継ぐそぶりもありません。

 生活に陰りがみえた頃、新兵衛はふとしたことで同じ紙問屋丸子屋の女将、おこうの窮地を助けたことがきっかけで、以来、おこうに好意以上のものを感じます。おこうを介抱した場所が「曖昧屋」であったことで、新兵衛はおこうともどもに、この件を耳にした塙屋彦助に脅されますが、百両の取引で口封じをします。

 新兵衛はおこうとその後も逢瀬を重ね、荒布橋の袂から少し歩いたところで抱擁、心を許しあう仲になりました。禁断の道に一歩足を踏み込むことになったのです。

 新兵衛は他方で大店(須川屋、森田屋、万亀堂)業界の世話役たち(おこうの旦那、丸子屋も関わる)が意図した直取引の一手販売に反対しているとの嫌疑をかけられ、呼び出され指弾されます。その場をどうにか切り抜けた新兵衛でしたが・・・。