【岩崎俊夫BLOG】社会統計学論文ARCHIVES

社会統計学分野の旧い論文の要約が日課です。

時々、読書、旅、散策、映画・音楽等の鑑賞、料理とお酒で一息つきます。

大竹しのぶ『私一人』幻冬社、2006年

2011-04-01 00:05:50 | 評論/評伝/自伝

                      

 今や日本を代表する女優である大竹しのぶさんの自伝です。

 高校生のときに浦山桐郎監督の「青春の門・筑豊篇」でデビュー。その後、NHKの朝ドラ「水色の時」で主演に抜擢されました。素晴らしい演出家、監督との出会いが、彼女の女優歴で異彩を放っています。宇野重吉、山田洋次、山本薩夫、新藤兼人、野田秀樹、蜷川幸雄、井上ひさし。

 結婚生活では、最初の夫がTBSディレクターの服部晴治さん、男の子ひとりに恵まれましたが彼を癌でなくしました。その後、明石家さんまさんと結婚。女の子を授かりますが、価値観があわず離婚。そして、野田秀樹さんとの同居生活と破綻。

 俳優として、女性として、また母親として生きてきた半生が赤裸々に綴られています。

 幼少の頃は貧しい生活をしいられ、生活保護を受けていたほどであったらしいです。しかし、ご両親は誠実な方でした。そのあたりの叙述は細かく、彼女がいかにご両親を尊敬しているかが窺えます。

 振り返って、浦山監督の「大竹しのぶさんは、女優として充分やっていけます。普通の人間としても、社会の中できちんと生きていけます」という言葉がその後ずっと彼女の心のなかにあり、彼女の人生を左右したと自ら告白しています。

 わたし個人としては、明石家さんまさん、野田秀樹さんとの関係に興味をもちましたが、著者はまじめに人生を考え、人生を選択したようです。憎しみ合って分れたのではないので、いまでも家族ぐるみで時々あって、なごやかに話をしているようです。

 彼女は子ども離れができないようで、それが現在の悩みと言えば悩みのようです。しかし、こと女優業にかんしては、蜷川「マクベス」をこなし、ニューヨークのBAM(ブルックリン・アカデミー・オブ・ミュージック)でも上演し、好評をえ、冒頭に述べたように今では押しも押されぬ大女優で、女優になるために生まれてきた人です。そのことが、本書を読んでよくわかりました。

 カバー写真は、シアターコクンでの「エレクトラ」。