高校1年生の6月。学校での住民たちから聞き取り調査を行なう課外授業で、クラスの枠をはずして作られた3人組として組まれ、知り合った3人……楡崎綾音、戸崎衛、箱崎一。それ以来仲良く“ザキザキトリオ”と称しながら、たびたび遊んでいた仲間達。彼らは、空から蛇がふってくる場面に遭遇したことがあった。
その後同じ大学に通いつつ、やがてそれぞれの道を歩んでいく彼らの軌跡の物語。
東京に行きたいという思いばかりで女子大生になった綾音。しかし何もしなかった学生時代だった。
読書サークルに入っていたが、1作だけエッセイを書いたきり、特に発表することもなかった。
ある日、バイト先である喫茶店兼バーにやってきたお客さんに、学部を答えたところ、“やっぱり、書いてるんでしょ?”と問われ、反射的に“いいえ、まだです”と答えてしまう。それは、無意識のうちに、心の底にあった衝動を正直に認めてしまったのかもと振り返る…第一部 あいつと私、
中学3年生でベースを始め、大学ではジャズ研究会に入った衛。そこでピアノの木島オズマ、ドラムの藤川雅也と出会い、一緒に“オズマバンド”を始めた。研究会におけるレギュラー・バンドを目指し、彼らとの演奏に熱中する日々を送っていた衛だったが……第二部 青い花、
証券会社、金融機関に勤務した後、映画監督に転身した一。三大映画祭と言われるV映画祭のコンペティション部門で無名ながら招待された彼は、大学の後輩だという女性ライターにインタビューを受けつつ、大学時代を振り返る。
大学ではシネマ研究会にいたが、鑑賞班でもっぱら手伝いだけ。サークルの誰も監督になるとは思っていなかった……第三部 陽のあたる場所の3部構成。
特に大きな事件が起こるでもなく、それぞれの道を歩んだ3人が大学時代をそれぞれに振り返る(3人の絡みもあまりない)青春小説。
綾音の話は、何となく恩田さん自身の体験なのかなぁ、とかなのかなぁとか思ったり。
<09/02/2>