黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『虚栄の肖像』北森鴻(文藝春秋)

2008-10-16 | 読了本(小説、エッセイ等)
冬狐堂からの仲介で、絵画修復とともに墓前で小備前の甕に桜を活けて欲しいという、仕事を受けた佐月恭壱。依頼人は、旧家である加賀美家の信一郎。先代・信介をモデルに、その妻・佳代子が描いた肖像画の修復を依頼したいというのだが、その画に執着していた叔母・蒼井清子が入院していた病院で起きた火事で亡くなり、画にも焼け焦げができてしまったのだ。その仕事への報酬は、件の甕。早速聞きつけた、朱明花の父で、貿易商で美術品コレクターの健民が、それを欲しがっているらしい。
一方、政治家・渡瀬泰三からピカソの未発見作品の修復も依頼された佐月だったが……『虚栄の肖像』、
京都の亀岡市にある大道寺家本家から藤田嗣治の作品の修復の依頼を受けた佐月。その帰りに思い出のある桔梗寺を訪れた彼は、そこで15年ぶりにかつての恋人で、袂を別った恩師の娘・倉科由美子に再会する。依頼人・大道寺正臣から預かった画には黒カビが繁殖していたが、その周辺で何故か硫酸銀の成分が検出され、さらにビチュウムが使われているそこには指紋が残っていて……『葡萄と乳房』、
女性の緊縛姿を描いた秘画が冬狐堂から持ち込まれた。無名の絵師・英斎による縮緬画だが、何故かその魅力に惹きつけられる佐月。作風や名前から暁斎の孫弟子ではないかと疑う。
そんな中、前畑がある店で知り合ったという若い女性・九条繭子がやってきた。花屋に憧れていたという彼女を、佐月は受け入れ、彼の元で働くことに。
やがて画の謎を解く為、縄師・神坂夜郎の元を訪れた佐月は、描かれた女性の縛り方が神坂の師匠が考え出したものだと知るが……『秘画師異聞』の3編を収録。

“花師”と“絵画修復師”という2つの顔を持つ佐月恭壱のシリーズ・第2弾。
3編ともそれぞれに面白かったのですが、特に『秘画師~』が印象的。
題材のインパクトがかなりアレですが(笑)、そこに秘められた彼女の思いが切なく…;

<08/10/16>