黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『血液と石鹸』リン・ディン(早川書房)

2008-10-26 | 読了本(小説、エッセイ等)
一人の若者が牢獄に放り込まれ、独房で一冊の外国語の辞書を見いだした。何語かさえ不明なそれの、解読を試みる彼は…『囚人と辞書』、
9年前、私が遭遇した出来事。中華料理店でたまたま見た、わが国の北の果ての州の知事の新聞記事。その写真に写る知事が、あまりにも父にそっくりだった為、見せようと切り取るが……『わが国北の果ての知事』、
偽英語教師として逮捕されたホー・ムオイ。彼は苛つくたび、「!」と叫ぶ。偽の英語を人々に教えていた彼は……『!』、
ノイ・エンのどこかには、町同士のいさかいから埋められた空っぽの棺桶があるという。それは次々に死人を呼び、町は無人に。車で通りかかった男は、運転手からその話を聞くが……『隠された棺桶の町』、
ホテルの部屋でたびたび幽霊に遭遇する私。いろんな幽霊がいて……『もはや我らとともにない人々』、
結婚式は、ノートルダム教会堂で始まって、マジェスティック・ホテルで終わった。死ぬまで共に在ることを誓った2人は……『私たちの新郎新婦』、
一人の男が、一人の老婆が、十代の若者が、厳めしい顔の学生が、やもめの男が…。8つの光景を描いた8つのプロット……『八つのプロット』、
“息を引きとる直前、人々は彼を外へ連れ出し、太陽を最後に一目、生まれて初めて見せてやった。”“旅行書に夢中になるあまり、男は一生涯机に釘付けになって、カーテンを閉めきり旅行書を読んで過ごした。”一文だけで完結する物語……『一文物語集』 、
無学の自転車修理工ピエール・ブイは、人々の敬意を集めるため、出費を切り詰め本を買い、持ち歩いていた。その信念は、やがて思わぬところで報われて……『本を持ち歩く男』、
“VCUの卒業です”と私が言うと、たいていベトコン・ユニヴァーシティですか?と訊かれる……『ベトコン大学』、
1975年4月30日のことは、いまも忘れない。それは、ベトナムのロックンロール史において重要な存在であったエルヴィス・フォンが自殺した日……『エルヴィス・フォンは死んだ!』 、
初めて飛行機に乗る夫婦たちの騒動。そんな彼らを乗せて、飛行機は飛ぶ。戦争も病気もすべて下にある。不幸な者たちはすべて下にいる。私たちはついに雲の上に出る……『飛行機に乗る』、
2049年、グアムの沖合い13キロの地点で、浮かぶ共同体が発見された。ボートに乗った国籍不明の99名は……『浮かぶ共同体』、
無気力な市民たちに活力と意欲を吹き込もうと、政府はセンテンス一つひとつの終わりに感嘆符をつけることを義務化し……『キーワード』、
君はしばしば膝掛け椅子に座って背を丸め、誰かの横顔に甘い言葉をささやいている……『13』、
書物のなかで語られた、素晴らしいご馳走についてあれこれ考えるのが何よりの愉しみだという、私の友人は……『食物の招喚』、
アメリカに住んでいたときはベトナムの、ベトナムに住んでいたときにはイタリアの食べ物を夢想する彼女……『食物の招喚 Ⅱ』、
大金持ちのなかには自分が金持ちだったということをわかっていない者がいる。そんな人のための寓話。金持ちと貧乏な人間の間で起こる、金をめぐるエピソード……『$』、
昼のあいだ彼らは幸福な夫婦。けれど夜は……『幸福な夫婦』、
毎晩、夫婦の顔の上を一ダースの蟻たちが這う……『この蟻たち』、
2人の女性を同時に愛した男。妻の他にも好きな女性がいるのだ。悩んだ末、男がたどり着いた結論とは……『道徳的な決断』
彼は、ごく狭い空間にいることを好む大男。狭いところを見つけては潜り込み……『ごく狭い空間』、
ニューヨークで暮らしていたときの隣人は、外国人。夜になると、英語の練習の為、センテンス単語を区切って、新聞を読み上げるのが彼の日課だった……『自殺か他殺か?』、
酒浸りのペンキ職人の俺がつるんでいる、負け犬連中。ジャックは靴に憑かれ、ジムはプラスチック製の恐竜が好き、ジェフはハンサムだがWではじまる単語を発音できない……『負け犬』、
階下に住む女性M・アダムズに恋をした私は、非常階段を下りて、密かに彼女を観察する……『非常階段』、
“偶然の恋人たち”“午前三時の三人”“、猿の惑星”……映画の内容紹介と選評あれこれ……『ただいま上映中』、
同じ牢の中の相棒は、非有機的インテリで、俺は有機的インテリ。非有機的というのは彼の論理は、論理と整合しないという意味で……『二人のインテリ』、
ただひとつの崇高な、あるいは偽善的な、決断によって永久にその名をアメリカ史に刻んだスチュアート・クレンショー。彼は自分が買った奴隷たちを館に住まわせ、自らは彼らの奴隷となって……『スチュアート・クレンショー』、
私たちの家には何もなくショッピングセンターには何でもある。だから私の妻はショッピングセンターにいる方を好み……『家をめぐる観念』 、
フィレンツェにある通りコスタ・サン・ジョルジョはトンネルのように出来ている。一度としてほかの通りに遮られることなく、えんえんと果てしなく続いていて……『コスタ・サン・ジョルジョ』 、
シーニャのカフェで、自画像ばかり描いている男物の靴を履いた女性を見かけた私は…『シーニャの自画像画家』、
ルイーザは夫を心から愛しているが、シャワーを浴びているときなどに、ほかの男たちについてつかのま夢想にふけることを自分に許す……『ルイーザは夫を愛している』、
パルマに1週間滞在したオトラント在住のマッシモ・エピファーニは、パルミジャーノ・チーズをおみやげに買ったが、それが思わぬ悲劇を生み……『パルミジャーノ・チーズ』、
美を崇拝する私にとって、フォルテ・ディ・マルミで開かれる“眠り姫コンテスト”ほどわくわくさせられるものはない……『美の崇拝者』、
私は爬虫類の展示業者である。父も祖父も同じ仕事に携わっていて……『移動爬虫類展示会』、
1923年、パリの地下鉄で、私は一人のベトナム人を見かけ、それがカイ・ディン王だと見てとった。思わず彼に声をかけるが……『二人の王』、
私の祖父をめぐる実話。祖父は故郷の村から千マイルの距離を歩いた……『人と違っていたわが祖父』の37編収録。

アメリカ在住ベトナム人作家による掌編集。
ブラックだったり、シュールだったりするバラエティに富んだ内容で楽しめます(短い上に数が多いので、あらすじを書くのが大変ですが…/笑)。
『13』は、何故このタイトルなのかがちょっと意味不明…。
個人的には『一文物語集』『食物の招喚』『美の崇拝者』あたりが好きかな。

<08/10/25,26>