CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】柳生十兵衛秘剣考

2023-06-19 21:05:12 | 読書感想文とか読み物レビウー
柳生十兵衛秘剣考  作:高井忍

そうそう、こういうのが読みたかったんだ
思わず膝を打ってしまうように、楽しんでしまった
柳生十兵衛がでてくる剣客剣豪話という
いかにもな時代小説なんだが、ミステリ仕立てになっていて
人物であったり、謎の技であったりといったものについて、
十兵衛とバディ役とでもいうような女剣士の二人が謎を解いていくと
そんなお話で、実に今風なのに、それでいて剣客小説になってるのが心地よくて
大変楽しめたのでありました

こういう殺陣が出てくる時代小説というのがそもそも大好きなんだが、
実際の講談とか、伝説めいた話はちゃんと知らないので、
出てくる剣豪の逸話とかが、前知識なしなのでとても楽しく読めてお得だった
塚原卜伝に色々と思うところがあるのかどうなのか、
何度か出てくるし、そこにまつわる逸話の面白さと
それを利用したトリックとでもいうような、事件のあれこれが面白くて
ぐいぐい読まされてしまう

それでいて、ちゃんと剣豪小説としての殺陣もあって
お互いが左を相手側にしていると刀が抜けないという、
ある種の安全の取り方で近づいて、そこから、早打ちガンマンみたいな戦いに移るあたりとか
こういう殺陣かっこいいなーと、ほれぼれと読んだのでありました
時代劇で再現してくれんだろうか、非常に見たい

ともかく、ミステリとしても大変よみやすいので、
あらゆる古典的トリックも含めて、ああ、そういう感じかと
妙な納得感を覚えながら読めるのもよく、
時代小説にあんまり馴染みがない人でも楽しめそうだよなと、
いらん需要の世話を焼きたくなるほどでありました
特に最終話は、ここまで積み上げたものの総決算というところで、
ああ、そんな早いところから伏線というか、ちゃんと下地をならしていたのかと
見事にやられたと思わされたりしたので、大変楽しかったのであります

決まり文句で女武将の名前に、必ず長尾景虎を入れてくるのに、
並々ならぬものを感じないでもなかったんだが、
そのチョイスだと、むしろ、誾千代の方がジャンル違いにも見えるなと
思ったりしながら、まぁ、ともあれ、楽しく読める本でありました
色々と時代違いで似たものを書いているそうなんだが、
よい作家さんと出会ったと思われるのである