CLASS3103 三十三組

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【読書】つげ義春賛江 偏愛エッセイ・評論集

2023-06-07 20:52:10 | 読書感想文とか読み物レビウー
つげ義春賛江 偏愛エッセイ・評論集  編:山田英生

つげ氏と作品について、様々な人が語った内容を集めた本
正直、こういう本を編集できるほど、あれこれ語られているというのが衝撃的で、
一作も、そもそもつげ作品読んでない自分が、これを読んでいいんだろうかと
なんか、気後れしつつ読んだのでありました
作品、どこで読めるんだろうか

「ねじ式」は、メメクラゲに刺されたという腕を抑えているシーンだけはすごく見たことがあるので、
その関係から、台湾遊びにいったときに、眼医者の看板見て、アレだと衝撃受けたりしていたわけだけど、
本当に、台湾のあの風景というか、あの当時、戦前戦後のあれこれの頃の記憶というか、
そういう経験から書かれているものだったのかと、
これを読んで初めて知った次第なのでありますが、
水木先生の優秀なアシスタントだったくらいしか、知らない自分に、
これでもかと、作品群の凄さ、素晴らしさというのが語られる本で、
実物読んでないのに、読んだかのような錯覚に陥るほど、
みんな熱っぽく語っていて、面白かったのでありました

実際、研究論文めいた内容もあったり、
哲学や、詩人の人なんかも、あれこれ書いているから、
ちょっと評論が難しすぎて意味わかんないというところも多々見られたんだが、
そうかと思うと同業の人や、少し離れた感じの場所から知っている、ファンです、みたいな感じで
さらっと書いているところがとてもよくて、
まさに偏愛と呼ぶにふさわしい文章が堪能できて面白かったのでありました
ある種、推し活を見ているようにすら思えるのが、
今っぽい例え方なんだろうかしら

いっぱい書かれていた話の中で、水木プロにいた頃の話が面白くて、
失踪して、水木先生ですら焦って、みんなで探しにいったところ、
何気なく戻ってきたという話がとてもよくて、
このイベントで、つげ氏は普通に帰ってきただけだし、
水木先生は笑って許したという、この二つの所作というか、ありようが見事で
いい話だなと、しみじみ読んだのでありました

芸術家肌ともまた異なりそうだけど、
そう周りが認識してもよいくらいの職業意識というか、
つげ氏の生き方とその表現である漫画というのが
なんとも面白いと思えたのでありました
えもいわれぬ魅力というか、文学めいた何かが内包されている
私小説的なそれというのに、妙に惹かれたのでありましたとさ

せめて、どれか一冊読んでから、もう一度読むべき本ではないかと思うのだが、
はたして、つげ作品に出合う機会があるのだろうかと
自身の人生を鑑みるのであった