CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】海獣学者、クジラを解剖する。~海の哺乳類の死体が教えてくれること~

2021-11-03 20:49:05 | 読書感想文とか読み物レビウー
海獣学者、クジラを解剖する。~海の哺乳類の死体が教えてくれること~  著:田島木綿子

海獣が海岸に打ち上げられることをストランディングと呼ぶそうで、
ひとたびストランディングが発生したら、
現地へ解剖、回収へと向かう、
そんな研究の日々と海獣への思いを書いた本でした
かなり面白かった、やっぱり、好きで仕方ない人がそういう仕事をしている話は
読んでいて、とても心地よいし面白い、いいなぁと思える内容であります

女性海獣学者というのは、思ったよりも少ないようなんだけども、
それもそのはず、相当な肉体労働を強いられる現場で、
臭い汚いは当たり前なうえに、危険も多ければ、しんどいことこのうえないのに、
それでも日本中、なんなら世界のどこかで打ち上げられたクジラがいると聞けば
飛んで行ってしまうという、取りつかれた人ともいえる行動が
まぁ、仕事なんだけども、すごいなと感心してしまった

ストランディングは通報だけでも年に日本で300件ほどあるそうで、
割と頻繁に、クジラやら、イルカやら打ち上げられるもんなんだなと
驚く内容でありました
また、クジラの種類が日本近郊だけで相当数いるというのも
あんまり知らなかった事実であります

博物館に務めているので、博物館人という側面でも語られているのだけども、
やはり、打ちあがった海獣が、どうして打ち上げられたのか、
そもそも海獣は何者なのか、そういった謎への探求心が強い動機となって
困難な現場を衝ききっていく様がかっこいいと思った

北海道、知床でシャチが流氷に阻まれて座礁した事故現場の話なんか、
過酷すぎて死人が出てもおかしくなさそうなところがすごいんだが
そこでの働きっぷりと使命感の強さに、敬意を覚えたのでありました

クジラについても、わかっていないことがかなり多いようで、
その謎を解き明かすためにも、ストランディングの一例たりとも逃がせないというのが
実際のところのようで、予算や時間と闘いながら、
やむなく断念した事例とかのくやしさもさることながら、
何かを得たというときの喜びがまた、ひとしおといった感じで
感慨にあふれているのも印象的でありました

こういう仕事を天職としている人は羨ましいとも思うのだが、
そういう人じゃないとできない仕事なのかもしれんとも思ったりして
頑張ってほしいと思うばかりでありました
とりあえず、ヒレの立ち上がったクジラには近づいてはいけないことだけ覚えておこう
爆発するらしい