CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】渡されたバトン

2016-12-19 21:28:57 | 読書感想文とか読み物レビウー
渡されたバトン  作:ジェームス三木

実際にあったお話のようであります
新潟県巻町の角海浜というところに原発を建てようという話が
ふって沸いたときの狂騒といっていいのか、
結局、これが建たなかったという出来事を描いた
小説というよりは、脚本・台本のような読み物でした
凄い読みやすかったし、面白かった

そもそも作者からして、見事な劇作家であると
知っているのもあってか、普段だったら会話劇的な小説は
好きじゃないとか思うところが、
凄いすんなり、とてもわかりやすく情景や、心情が伝わるようで
いい小説だと感心しきりだったのでありました

なんとなし、原発を扱った本ですよとは聞いていたので、
てっきり、東北震災を扱ったものかしらと
身構えて読んだのですが、まったく別の地域で、
しかも、原発を建てなかったという出来事を扱っていて
こういうこともあったのかと
驚いたというか、興味深い内容でありました

原発の是非について、ここで語るという内容ではなく、
その話があったとき、地元でどう考えた人たちがいたか、
どんな係わり合いがあったのかという点が
とても秀逸というか、人間味、現実感にあふれていて
結局お金であり、打算であり、利権があるんだろうなと
読み知った感じになるのでありました

どこまでが本当かというのも
書かれた当人には重要なんでありましょうが、
こんなこともあったかもなぁと、
断罪のためというではなく、なんとなく
考えてしまうことが、とてもうまく筋だっていたように思うのでありました
ある意味危険なことでありますが、
こんなことは、この件に関わらず
世の中にたくさんあるだろうと感じるわけであります

最終的には、建てないという民意を得たというか
折々、スリーマイル島や、チェルノブイリといった事故事件が起きて
さらに、もんじゅや、ほかの原発が怪しい稼働状況であるという
すったもんだの末に、この話は流れていくというのが味噌で
そうではなかったところもあったり、
また、そうではないという強い流れが、今もってあるというのも
確かだなと思わされたりして
非常に考えさせられる一冊だったのであります

自分が原発についてどう思うかといわれると
その是非が、未だ持ってよくわかってなくて、
なんとなし、ここにある利権、そこに群がっているという状態は
気に入らないね、なんて思うんだけども
それはまた、ここに描かれていたものとは違う見方であり
そういう人がいるのも確かだったりしながら
考えるきっかけになる一冊でありました

いつになく真面目になってしまった

偏屈なことを書くならば、反対派というものが
よそからやってくるフローも、見てとれて
それの良し悪しは語らず、生々しく描かれているのは
いい意味で衝撃的でありました
結局、どっちかに大きくふれるしかないのだろうかと
げんなりさせられるようでもあり
個人的には、読んで自分がどう思うかで判断する
思想の押し付けのない良作だったと感じたのであります