CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】落陽

2016-10-24 20:54:11 | 読書感想文とか読み物レビウー
落陽  作:朝井 まかて

明治という時代、とりわけ、明治天皇を描いた小説でした
いわゆる歴史ジャンルの小説なんだけども、
今まで読んだことないというか、歴史小説というでもなく、
ドキュメンタリのごとく、明治天皇と明治神宮について
その精神性に迫ろうとした意欲作であります
かなり面白かったというか、うなった
考えさせられるというではないけども、
この小説で描き出された明治というものが
なんとも、ぐっと心に刺さったように感じたのであります

時代は明治も後半から、大正の初めにかけてでありまして
主役というか、主題となるのは
明治神宮についてであります
明治神宮の神宮の森をどう作るか、そもそも、神宮を東京に造るかどうかと
そのあたりからの活動といえばいいのか、
東京に神宮があるということに重要な部分があると
このあたりは、まったく語られなかったのだけども
明治天皇の、明治神宮が初めて、京都ではないところに
ゆかりの神社として建立されるという
とんでもない事業について、新聞記者が肉薄していくという
そんなお話であります

勝手に読み取ったといっては、なんでありますけども、
明治という時代を描きだそうという苦心が
とても伝わってくるようで、この苦心が、
この小説の著者なのか、あるいは、描かれている主人公たち
新聞記者たちなのかが、わからなくなるような
不思議な熱量みたいなのがあって
なんだかわくわく読めたのであります

正直なところ、さほどに派手な事件を扱っているわけでもなく
サスペンスや、ミステリーなどは現れないで、
ただただ、明治神宮を作るにあたり
その森をどうしていくかという部分を
これも、そんなに詳しいというか、大変な部分の緻密な描写などなく
記事として現れる、その時代のその新聞、記事を読んでいるという
そんな読書体験をしているだけなのに
なんだか、気になって仕方ないという
不思議な気分になったのでありました

万人に受けるのではないのだろうかなと
思ったりもするのでありますが、
非常に興味深い、明治のありかた、明治天皇の姿、
そして、明治神宮について
様々、知るというでもなく、わかったような
不思議な気分にひたれる、よい小説でありました