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大辻伺郎も大映では懐かしい俳優の一人です。お父さんは昭和27年(1952)に、
伊豆大島で墜落したもく星号に乗り合わせていて亡くなった漫談家・大辻司郎
で、息子伺郎は高校を中退して板前修業をした後、早稲田に入学、更に中退し
て新派に加入して勉強していたという変わり種でした。
大映入りは市川崑監督の推薦によるもので、映画やテレビドラマを中心に活躍
しました。
特に昭和38年に放映されたテレビドラマ「赤いダイヤ」の相場師役は評判になり
ましたし、映画も主役こそ無かったものの、役作りに独特のセンスを発揮、いつ
も主役を食ったと言われるほどの怪演技を見せたものです。
私は撮影所で数回、「視界ゼロの脱出」の鹿児島県指宿ロケ(1963、このブログ
では昨年6月17日にアップ)では一緒しましたが、その時は悪役なので眉毛を剃
ってロケに臨んでいて、その役者根性に驚かされました。
私の知っている大辻伺郎はごく普通の青年でしたが、喜怒哀楽が激しい性格だ
ったそうで、結婚離婚は二度しているし、撮影現場などでは他の俳優やスタッフ
たちとのトラブルが再々だったとは後から聞いた話です。
大映での出演作品は20本足らずでしたが、彼の演技をもう一度振り返って見た
いという気になっています。
昭和48年に彼は自動車事故を起こし、その相手との激しいトラブルが原因の一
つと言われていますが、事故翌日の5月21日にホテル・オークラで首を吊って自
殺しているのを発見されました。享年41歳、生きていれば今年で79歳です。
当時彼の死を三国連太郎は、「私は彼に学ぶことが多かった。あの才能にはジ
ェラシイを感じたこともある」と。
そして勝新太郎も「金なんか残さなくってもいい、世間的な常識もいらない。彼
のように鍛えこんだ芸がいくらあっても、ポッと出の新人にペコペコ頭を下げな
きゃならないこともある。それをまた彼は神経が細かいだけにオーバーなくらい
やってしまう。彼の死はそういう自分が見えてきて何もかも嫌になっちゃったん
だろう」と語ったそうです。
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↑ 「視界ゼロの脱出」(監督・村野鉄太郎)指宿ロケで記者会見。大辻の眉毛にご注目!