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「春琴抄」谷崎潤一郎を読んでの感想

居場所でテレビ番組「100分で名著」を観てから読書会をしていて今月の谷崎潤一郎の特集に興味を持って「春琴抄」を放送の前に読んでみました。
おそらく一般的に佐助がお師匠と慕う盲目の春琴が顔に火傷を負わされたので佐助が自分の目をついて目を見えなくしたのが一番のテーマなのだろうけれど、
僕はその事件の前の師匠春琴と弟子で奉公人の佐助のやり取りがとても面白く感じた。春琴が奉公人で三味線の弟子佐助をきびしく教えるのだが、いわゆるSM的なのだ。
さらに言えばゆがんだ恋愛感情に僕は感じた。

「幾分嗜虐性の傾向があったのではないか稽古に事寄せて一種変態な性慾的快味を享楽していたのではないかと。」と書いてある。
また面白かったのが春琴が足が冷たいと佐助が自分の胸倉で春琴の足を温めているという溺愛ぶりを示していたのだが、ある日佐助が虫歯で頬が腫れて春琴の足を頬にあてて温めた。それに気が付いた春琴が「然るにいかにも忠義らしく装いながら主人の体を以て歯を冷やすとは大それた横着者哉その心底憎さも憎しと。」と書いている。
ここまで来るとシリアスコメディー。僕が昔読んだ筒井康隆など足元にも及ばないシュールな笑いに僕は感じた。
この谷崎潤一郎という人は大作家なのだろうけれど、すごく皮肉屋というか僕には笑わせようとしか思えない文章でこの悲恋物語を描いている。

でも僕も好きな女性に冷たくされても僕は喜んでその女性に喜ばれようとする。何かそんな僕を描いているようにも思えて来ました。
そしてクライマックス。春琴が日頃の自分勝手傍観無人ぶりに敵を作り、何者かに夜中寝ている時にやかんで沸騰した熱湯をかけられて顔がただれる。私の顔を決して見ないでと言う春琴に見ませんと言う佐助。そして自ら自分の目を針でついて失明する佐助。そこにこの上ないお互いの幸せな時間が訪れる。
すごく歪んでいる。でも僕も分からなくも無い。二人の極上の分かち合いがある。
でも僕はどうもそういう感動の話というよりも恋愛の人間の滑稽さを描いている様に感じました。
昔、山口百恵と三浦友和が共演した映画で知った「春琴抄」映画は観ませんでしたが純愛ものと思っていた原作をやっと読んで僕は人生の面白みを感じました。
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