小説の孵化場

鏡川伊一郎の歴史と小説に関するエッセイ

武者の世  その4

2006-07-12 21:05:11 | 小説
 保元の乱の3年後、平治の乱が起きた。保元・平治の乱とセットで語られるのも道理で、またしても朝廷内部の暗闘に端を発している。
 後白河は実子の二条天皇に譲位し、院政をはじめていた。その院政に息子の二条天皇が不満だった。この父子のそれぞれの側近たちに、敵対感情が生じるのにさほどの時間は要らなかった。そこのところに、さらにまた院政近臣同士の権力争いが表面化し、血なまぐさい武力闘争となったのである。乱の原因を詳述するのもあほらしく、『今鏡』の著者のように「あさましきみだれ」と形容しておくのが、いちばんぴったりする。
 ともあれ、平治の乱では、かって保元の乱では同陣営だった源義朝と平清盛が敵と味方にわかれてしまったことが重要だ。
 平治元年の冬12月9日の未明、後白河の院御所三条殿を源義朝ひきいる軍勢が急襲、御所に火を放ったのである。火勢から逃げ惑う者たちは、女房であれ誰であれ斬ってすてた。狙うは院近臣藤原信西とその一族の首であった。
 この日、平清盛は京にいない。熊野詣でのため紀州にいた。清盛の留守をねらったクーデターといわれるゆえんである。


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