小説の孵化場

鏡川伊一郎の歴史と小説に関するエッセイ

陸奥宗光と日清戦争  6

2005-06-10 20:25:30 | 小説
 1.朝鮮を自主独立の国として干渉しないこと。ただし、その場合、将来、朝鮮政府の内政がどうなるか成り行きまかせで、日本の出兵が意味のなかったことになるおそれがある。
 2.朝鮮は名義上独立とするが、日本がいろいろの形で保護すること。ただし、これは朝鮮の自主独立のためという戦争目的と矛盾するから、外国と葛藤が起きた場合、どうするかという問題が残る。
 3、日清両国で朝鮮の独立を保障すること。ただし日清両国の調整はたいへん難しい。
 4、列国で朝鮮の中立を保障する。ただし、これは日本がせっかく取ったものを列国に分けてやるようなもので日本国民が納得しないだろう。
 これら4案のうち、一つにしぼることは閣議ではできなかった。陸奥の権謀術数が発揮されてくるのだが、彼の真意は2番目の案にあった。つまり外国との葛藤の起きる前に戦争を片付けようとしたのだ。
かっては陸奥を指導したこともある勝海舟は、日清戦争を評して「不義の戦」と言った。朝鮮の自主独立のためという名分はあっても、朝鮮にすれば大いなる内政干渉である。日清両国ともに、その戦争目的にいかがわしさがつきまとっているのは否めない。
 とあれ日本は勝った。その結果、日本は遼東半島と台湾及び澎湖島の割譲を申し入れ、さらに2億両の賠償金を手に入れた。その賠償金の9割は軍事拡大費用として使われ、やがて日露戦争につぎこまれた。
 遼東半島の割譲がいわゆる三国干渉のひきがねとなるのだが、それはさておき、日清戦争後の不幸な出来事について語らねばならない。朝鮮王朝末期の国母、閔妃(ミンピ)暗殺についてである。ひと言で書けば、日本の公使が指揮をとって、朝鮮王宮に乱入、王妃を殺したのである。


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