議論 de 廃棄物

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建設工事の発注者は建設廃棄物の排出事業者になれるか?

2015年01月09日 20時20分18秒 | 政策提言
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「建設工事の発注者が、建設廃棄物の排出者になれるか」というご質問はかなり
頻繁にいただきます。
以前、環境新聞さんが全国の自治体にアンケートしたところ、なれる、なれない、
ケースバイケースと判断が見事に割れました。

そこで、前回記事の予告通り、経団連が「規制改革ホットライン」でこれを
容認すべきであるとの要望した結果をご紹介します。
なお、規制改革ホットラインは、誰でも規制改革についての要望、提案をだせますので
廃棄物処理法について要望がある方は是非ご活用ください。


「規制改革ホットライン」で受け付けた提案等に対する所管省庁からの回答
があります。


上記サイトから、平成25年の「エネルギー・環境」と、平成26年の「環境省」
の回答を抜粋します。途中私のコメントも挟んでいますので、お楽しみください。


*******その① 平成25年度分 受付日:3月22日********

■経団連より提案
【具体的内容】
建設工事に伴い生ずる廃棄物の処理については、元請業者が排出事業者としての
責任を負うという原則は変えずに、発注者の同一事業場内で再利用されることが
確実であると認められる場合については、発注者が再利用等をしようとする
対象物を明確にし、その旨を工事請負契約において明示させた上で、発注者が
元請業者に代わって排出者責任を負うことができる例外を設けるべきである。
【提案理由】
建設工事に伴い生ずる廃棄物については、2010年の廃棄物処理法改正により、
元請業者に処理責任が一元化された。しかし、大規模な工場内での建設工事に
おいては、同一事業場内で土木建設工事が非連続かつ頻繁に行われることが
多いため、工事の発注者が自らの工場の中で再利用等を行った方が効率的な
場合もある。
たとえば、前の建設工事で発生したコンクリートがらなどは、同一事業場内の
次の工事で使用されることが望ましい。しかし、現行の法制度の下では、
元請業者が排出者となるため、発注者の事業所内に廃棄物を留めておくため
には、元請業者から発注者に処理を委託する必要があり、発注者が処理業
の許可を得る必要がある。そのため、元請業者は、数ヶ月間発注者の工場内に
留めておけば次の工事で使用できる廃棄物であっても事業場外に移動させて、
有効利用先を探すか処分先を探す必要がある。
一方、発注者が元請業者に代わって排出者責任を負うことができれば、
前の工事で発生したコンクリートがらなどは、広大な敷地の同一事業所内で
適切に保管され、次の工事で建設材料として使用できるため、元請業者と
発注者の適切な役割分担により、副産物の効率的なリサイクルが進む。また、
輸送効率が上がるため、地球温暖化対策の観点からも有効である。


■環境省より回答
建設工事に伴い生ずる廃棄物について、当該廃棄物が発生した発注者の
事業場内で当該廃棄物を保管する場合は、排出事業者(元請業者)が
産業廃棄物保管基準を遵守する必要はありますが、御指摘の「発注者の
事業所内に廃棄物を留めておくためには、元請業者から発注者に処
理を委託する必要がある」との規制は、廃棄物処理法上存在しません。
なお、発注者が、同一事業場内の次の工事で当該廃棄物を再生利用する
までの期間、元請業者に保管場所を提供することは、廃棄物処理法上
問題ありません。

◎●◎●堀口よりコメント
これは、質問に対してうまくかわされました。規制改革に対する要望を
見ると、廃棄物処理法の規定を勘違いしていることも多いのです。
今回は、そこの指摘をされて、本来提案したいことに答えてもらえて
いません。


*******その② 平成25年度分 受付日:10月16日********

■経団連より提案
【要望の具体的内容】
 建設工事に伴い生ずる廃棄物の処理については、元請業者が排出事業者
としての責任を負うという原則は変えずに、発注者の同一事業場内で
再利用されることが確実であると認められる場合については、発注者が
再利用等をしようとする対象物を明確にし、その旨を工事請負契約に
おいて明示させた上で、発注者が元請業者に代わって排出者責任を負う
ことができる例外を設けるべきである。
【規制の現状と要望理由等】
 建設工事に伴い生ずる廃棄物については、2010年の廃棄物処理法の改正
により、元請業者に処理責任が一元化された。これにより、元請業者、
下請業者、孫請業者等が存在し、事業形態が多層化・複雑化している
建設工事において、個々の廃棄物について処理責任を有する者が明確に
なったので、資源の有効利用、適正処理が進むことが期待されている。
 しかしながら、大規模な工場内での建設工事では、工事の発注者が
自らの工場の中で再利用等を行ったほうが効率的な場合もある。
同様に、施工区間を区切って発注される大規模な道路工事やシー
ルド工事等の公共工事等も、発注者が廃棄物を自らの所有物として
同一工事の施工区間を越えて再利用等を行うことにより、現場で発生する
すべての廃棄物の有効利用・効率的処理が進む。また、資源の運搬も
最小限に抑えられる。
 このため、排出事業者責任は工事を受注する元請業者が負う原則は
変えずに、発注者が再利用等をしようとする対象物を明確にし、
その旨を工事請負契約において明示させることなどにより、発注者
が排出事業者責任を一部分担できる例外を設けるべきである。
元請業者と発注者の適切な役割分担により、副産物の資源としての
有効利用が効率的に進む。


■環境省より回答
御提案の発注者への排出事業者責任の転換については、前提として、
建設工事に伴い生ずる物について、当該物を発注者の同一事業場内で
再利用する場合、「行政処分の指針について(通知)」により、
都道府県等が個別の事案ごとに総合判断した結果、当該物が廃棄物
ではないと判断するのであれば、現行制度上、当該物を廃棄物として
取り扱う必要はありません。したがって、このような場合にあっては
当該物を発注者が利用することは可能です。

◎●◎●堀口よりコメント
「いいことやろうとしてるんだからいいでしょ」、と、再利用を強調
しすぎたかもしれません。
有価物だとして、『廃棄物処理法適用範囲外』とうまいこと逃げられました。

*******その③ 26年6月20日********

■経団連より提案
【先の回答に対する再提案】
「当該物が廃棄物ではないと判断するのであれば、当該物を発注者が
利用することは可能」とあるが、当方が求めているのは、廃棄物
としかみなされない物についての特例である。
 例えば、発注者が処理業の許可を得て廃棄物を処理受託している場合、
自工場内の工事から発生した廃棄物であれば、自社廃棄物として
処理受託等の手続きなく扱おうとすることはごく自然な行為と考えら
れる。
 また、同一発注者が工区割している工事(複数の元請業者が参画)
において、同一の廃棄物(例:がれき類、汚泥等)が発生する場合に、
処理業の許可を持たない発注者が、一台の機械を設置し自ら処理(が
れき類であれば破砕、汚泥であれば脱水)することで再利用が可能に
なるケースもある。これを発注者による自ら処理として扱わない場合、
元請業者ごとに機械を設置し自社処理することとなり、極めて非効率
となる。
 これらについて、発注者による自ら処理と解釈する手段を設ける
ことで、廃棄物の効率的な再利用につながることとなる。

■環境省より回答
建設工事は、注文者や元請業者、下請業者等、多数の関係者が存在し、
廃棄物の排出事業者責任の所在が曖昧になりやすいという性質を有
しています。
したがって、廃棄物の処理及び清掃に関する法律第21条の3において、
こうした性質等を踏まえ、責任の所在を明確化・一元化する観点から、
元請事業者が排出事業者責任を負うこととされているのであり、
御提案のような例外を設けることは困難です。
なお、現状の法制度上においても、「「規制改革・民間開放推進
3か年計画」(平成16年3月19日閣議決定)において平成16年度中
に講ずることとされた措置(廃棄物処理法の適用関係)について
(通知)」(環廃産発第050325002号)の第3においても示されて
いる条件により、元請業者の自ら処理という扱いの下で、注文者が
元請業者の廃棄物を処理することが可能であると考えます。

◎●◎●堀口よりコメント
いい加減、ちゃんと答えんかい!!というニュアンスですかね。
いつものとおり、法改正の趣旨を繰り返してオシマイです。つまり、
関係者が多くて排出事業者が誰になるかよくわからなくなるので、
元請を排出事業者として統一したんだから、いまさら発注者
ならOKとは言えないよ、ってことです。

さらに極め付けは、現実味の薄い規制改革通知のご提示を頂いて
しまいました。現実味が薄いとか、思っていないのでしょうけど。

本来これは、発注者が機械を1台設置して、それぞれの元請に
貸与すれば問題解決なんですけど。

ところが、全然別の案件ですが、下記の提案への回答では、
「廃棄物の発生形態は様々だから、廃棄物や排出事業者が誰か
なんて、決めらんないよ。ケースバイケースで検討してね。」
なんて言ってます。

*******平成25年度分 受付日:3月22日********
■経団連から提案
【具体的内容】
(1)有価物として再販売するかが未定の下取り品、(2)二重の
下取りを行う製品(販売業者が下取りを行った製品を、製造業者が
再度下取りするケース等)、(3)顧客に納入した製品のメンテナンス
により発生する交換部品や油脂類、(4)製品の設置工事で発生する
廃棄物について、(a)どの段階から廃棄物処理法上の「廃棄物」に
該当するか、(b)「廃棄物」に該当する場合に排出者責任は誰にあるのか
(製品の販売業者、販売業者から委託された業者、製品の購入者等)、
(c)「廃棄物」に該当する場合に処理業の許可は必要か、具体的な
ケースを想定し、通知等により明確化すべきである。
【提案理由】
製品の販売等に伴って生じる廃棄物については、平成12年9月29日
衛産第79号において、「新しい製品を販売する際に商慣習として
同種の製品で使用済みのものを無償で引き取り、収集運搬する下取
り行為については、産業廃棄物収集運搬業の許可は不要であること」
と通知されているが、上記(1)~(4)の(a)~(c)については明確化
されておらず、自治体によって判断が異なる。
例えば、「(2)二重の下取りを行う製品」について、販売業者が
下取りをした製品を、製造業者が再度下取りをする際、収集運搬を
行う製造業者に収集運搬業の許可が必要かどうかの判断が自治体によっ
て異なっている。
廃棄物の定義等については、様々な通知等が出されているが、
さらなる明確化を行うことで、自治体の判断のブレが解消され、
廃棄物処理法が全国で統一して運用されることが期待される。
同時に、業者等が非意図的に法律違反をしてしまうことが避けられる。

■環境省から回答
廃棄物の発生形態や処理の状況等は事案ごとに様々であり、廃棄物
該当性の判断や廃棄物の排出者の特定等については、各事案に
応じて個別に行う必要があります。したがって、全ての事例を
想定することは困難であること、また、仮に具体的なケースを
想定しても、必ずしも特定の状況に適用可能となるわけではない
ことから、個別の事案ごとに都道府県等と相談をすることが
適切であると考えます。

◎●◎●堀口よりコメント
>廃棄物の発生形態や処理の状況等は事案ごとに様々であり、
>廃棄物該当性の判断や廃棄物の排出者の特定等については、
>各事案に応じて個別に行う必要があります。
という回答ですが、正解だと思います。要は、ケースバイケースで
判断すべし、なのです。

そして、建設廃棄物についても同様「状況等は事案ごとに様々」
なので「各事案に応じて個別に」検討すべきなのです。だからこそ、
法律で排出事業者を一元化したのだとの説明になるのかもしれませんが、
なんかおかしくないですか?
ケースによっては発注者や下請けが排出事業者になるべき
(その方が適正/合理的な管理/処理が期待される)ことも多いのに、
無理やり法律で一元化してしまったために、そこでひずみが
生じているのだと思います。
下請けが排出事業者として動いた方がいいケースというのは、
絶対にあります。

<<発注者=排出事業者となる問題への、一つの解決策>>
自社の製造ラインや社名入りの看板等については、それの取り外し
作業を委託すれば、その作業においては取り外したものは建設廃棄物
という認識にはなりません。そういった整理をすれば、
発注者が排出事業者になることはできると思います。

もちろん、この考え方では建設汚泥は対処しようがないですが。。。

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■□■□■□■□■□■編集後記■□■□■□■□■□■□■□
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一昨年千葉で大爆発を起こしたエバークリーンの事業部門長などが
業務上過失致死傷、消防法違反で書類送検されます。
ガソリンを持ち込んだ輸送会社は、廃棄物処理法違反のようです。

業務上過失致死傷は、5年以下の懲役100万円以下の罰金の対象です。
廃棄物処理法の違反は、5年以下の懲役1000万円以下の罰金、
法人罰は3億円です。
(今回エバー社は、特別管理産業廃棄物廃油の許可はありましたが、
蒸留では許可ありませんでした。従って、無許可事業範囲変更でしょう)

廃棄物処理法の方が重いのですが、なぜ廃棄物処理法違反でお咎め
がないのでしょうか?

廃棄物処理法違反となると欠格要件に該当しますから、そうならない
ようにエバー社が頑張ったのかもしれません。
しかし、委託者側が廃棄物処理法違反で、処理業者が廃棄物処理法違反
ではない、というのは、どう考えても妙です。。。

http://www.asahi.com/articles/ASH1862WGH18UDCB01B.html
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye2390311.html

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1 コメント

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エバーグリーンが許可取り消し (堀口昌澄)
2015-01-30 10:52:41
エバーグリーンの許可が取り消されました。
http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2012/06/20m6e300.htm
エバークリーンではありませんので、念のため。
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