ちょっとランチに行ってくると言って、あれから何時間(スペインの昼食か)。ラウラもジェリーも置いていかれているから、あっちをふらふら、こっちにふらふら。もう、待ちくたびれている。
源太郎は、オペラ「ドン・ジョヴァンニ」をレーザーディスクで見ていた(古い)。音楽はともかく、ストーリーは知っての通り、色ごとに精力をつぎ込んだドン・ジョヴァンニのお話だが、従者のレポレッロとの掛け合いが一番面白い。彼が歌うアリア「お嬢さん、その目録がこれです」は何度聞いても笑える。それは、ご主人様の恋の武勇伝を、レポレッロが女性ドンナ・エルヴィーラに聞かせる場面。
「金髪の女性には、あのお方はいつも決まって、その優雅さを褒め称えます。黒髪の女性にはその操を、そして色白の女性にはその穏やかさを」なんてフレーズが歌われている。
どんなオペラでも、脇役の存在が欠かせないのだ。
「ラウラ、お前の脇役は誰だい」
「アタシの脇役、それはね。源太郎。おかぁしゃんもそう言っていたよ」
「はいはい、おとうしゃんが脇役ですね。じゃ、おやつはもうもらえないね。ご主人様からもらいなさい」
「えぇ、それなら、・・・・」
「解ればよろしい。ほら、おかぁしゃん(影のご主人様)が帰ってきたよ」
嬉しそうに、ジェリーもラウラも玄関にお出迎えに行った。