![富山城とお堀](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3d/0f/5bed684260ac6bb753defa4d74271a61.jpg)
国際会議場の前に富山城址がある。天気も良く、日差しはきついが、木々が色づき始めている。後ろ立山連峰が飛行機の窓越しに綺麗に見えた。
場所は実在ですが、登場人物のErikaは想像の姫様です。ヨーロッパの秋の一コマ。
石畳みの道は朝方の雨で濡れてた。秋風が路地に吹き抜け、色づいたマロニエの葉は枝から今にも落ちそうになっている。Erikaは愛犬のCocoを連れて、レジデンス広場の水飲み場まで散歩するのが日課だが、今日は道の真ん中に建っている甲冑姿のモニュメントには寄らず、アーケードの坂を下って行った。
朝早いアーケードは、人通りは少なく時折、道の幾つものモニュメントをよけながら牛乳配達の電気自動車が、タイアと石畳みから発するキュキュという音だけを残して過ぎて行った。Cocoはしばらく歩いては止まり、あたりをキョロキョロして、Erikaの顔を見て又歩き出すことを繰り返していた。お肉屋のショーウィンドウの前で彼女が止まっても小さい犬のくせに早く広場に行こうとリードを思いきり引っ張ている。色々なハムのブロックが綺麗に下げられている店だが、朝が早いので店員は誰もいなく、気兼ねなくショーウィンドウを独占して見ることが出来るので彼女はこのアーケードを通る時は必ずでここで時間調整した。
広場に着くと、オープンカフェの店員が足の細いテーブルを店先に並べ終わっている。すでに常連の白髪の老夫婦や、トラムで新市街に行くビジネスマンが朝食を取り始めようとしていた。彼女は店員に手を少し上げ、このテーブルでいいかと合図した。すると店員は首を横に振り、貴女のテーブルはここだと言って、椅子を引いて待っている。
「チャオ」と挨拶して座ろうとすると、彼は手を添えた椅子を丁度の位置に運んだ。「ボンジュール、マドマゼル」と彼はここでは紳士のフランス人を演じ、ここが貴女にさもふさわしいテーブルだと強調しているが、単に自分の運ぶ距離が短いだけの位置だろうと思いつつも、甘いフランス語の響きで満足している自分が滑稽だった。Cocoは濡れた石畳みが嫌そうで、お喋りしている彼女に助けを求めたが、それは無視され、こいつのコロンは嫌いだと言うように気合いを入れて一回吠えた。それも無視され、仕方なく椅子の脇に伏せた。
「マロッキーノ」とカフェを頼んだ。彼はなぜそのように複雑な飲み物を何時も頼むのかと言わんばかりに、聞き直した。「モロッココーヒーじゃないのよ。いい、溶かしたブラックチョコレートに熱いエスプレッソを入れて、生クリームを乗せて。わかった」「ウィ。マドマゼル」
「パン ドウ カンパニュ、ジャンボン」と田舎パンとハムをフランス語で追加すると、透き通る緑の目がキラキラ輝き、「ダコール、ビアン スユール」と言って店内に戻って行った。
イタリアでは朝食はカプチーノ、食後はエスプレッソと相場が決まっているが、バールなら、任しておけと言って対応する。このフランス人にはこの繊細さが分からないといつも彼女は感じていた。明日も少し困らせようと思い、一人微笑んだ。
「チャオ」「チャオ。コメ スタ」「グラチェ。ベネ」と言ってビジネスマンが座った。Cocoは尻尾を振って見つめている。彼はポッケットからご褒美を出すと、Cocoは嬉しそうに近寄りお座りした。こいつは彼をいい男だと思っているに違いない。
苦労して作ったカフェを先ほどのカメリエーレがテーブルに持ってきた。そしてEikaの隣に座る彼に挨拶をした。
「ボンジョルノ。セニョール」
「チャオ」
「プオ ポルタルミ カプチーノ エ ポザ チューネレ」
「スイ オカピート」こいつは男にはイタリア語、私にはフランス語何て嫌味奴だと彼女は思ったが、隣に座る彼の目はブラウンで、それだけはカメリエーレのあいつの方が好みだった。
広場の下にはゆったりした流れのアーレ川が流れている。
「スイ ブ プレ」と言うと彼は飛んやってきた。
「スイ。セニョール」
「ズッケロ ペルファボーレ」と言って砂糖を要求した。カメリエーレは直ぐ隣のテーブルから砂糖をとり、テーブルに置いた。彼女はそのくらい自分で取ればいいのにと思いながら、イタリア人の男はマンマがすべてやってくれるので、こんな大人でも何一つ出来ない。それに比べれば、カメリエーレの方がよっぽどいい。彼とはたまたま朝声をかけられ、朝食を共にしてから、普通に隣に座るだけで、これと言って、話すことはない。そして朝食が終わると必ず「Ti saluto Erika」と言ってトラムに乗り込んで行った。
Cocoはさみしげに尻尾を振って見送りしたが、彼女はその後ろ姿も見なかった。
カメリエーレはすぐに彼の器を片付けたが、彼が使わなかった灰皿だけは持って行かなかった。Erikaは、食事が済むと煙草を燻らした。イタリア女性の喫煙率は世界でもトップだ。あのフランスもどのアベニューでもリュであって歩きタバコの人がいた。いつからか、それも悪のように、言われたが、誰も個人の自由を奪うことは出来はしない。
彼が去った後も、彼女は自分の時間を楽しんでいる。
石畳みは相変わらず、乾かないがCocoを連れて自宅にErikaは戻って行った。
秋の日の朝の一コマだ。アーレ川は朝日に光輝き、一日が始まる。
ErikaとCocoはアーケードを戻って行った。
今日は秋分の日。昔は9月24日もあったらしいが、天文学の計算では、生きている間は22日か23日だけのようだ。で、その計算方法は次のとおり。だから今年は9月23日
西暦年数の4での剰余が0の場合 : 2012年~2096年までは9月22日
西暦年数の4での剰余が1の場合 : 1921年~2041年までは9月23日、2045年~2097年までは9月22日
西暦年数の4での剰余が2の場合 : 1950年~2074年までは9月23日、2078年~2098年までは9月22日
西暦年数の4での剰余が3の場合 : 1983年~2099年までは9月23日
今日から夜が長くなる。食欲の秋、読書の秋・・・・・というのは一昔。時間に余裕を持った人の発想だから、今はなんと表現したらいいのか解らない。
あの、烏瓜が色づいていたので、写真を一枚。秋だな・・・・