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見もの・読みもの日記

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2022年8月関西旅行:承天閣美術館、龍谷ミュージアム他

2022-08-23 22:26:33 | 行ったもの(美術館・見仏)

相国寺承天閣美術館 企画展『武家政権の軌跡-権力者と寺』(I期:2022年8月8日~10月6日)

 お盆旅行最終日(この日だけ年休)は京都へ。承天閣美術館では、相国寺とその塔頭に伝来する絵画、墨蹟、古文書等から、武家政権との交流の軌跡をたどる企画展を開催中。創建者である足利義満の肖像のほか、義嗣像(室町時代、林光院)、義政像(室町時代、慈照院)など、初公開の肖像画も複数出ていて興味深かった。義政の真蹟『萬松』は生真面目な楷書で、少し拙い感じがして可愛かった。

 道有印(義満の所蔵印)を持つ牧谿筆『瀟湘八景図巻・江天暮雪図』(南宋時代)が出ていて、ええ?と驚いた。承天閣美術館のホームページには「II期」とあるが、計画変更があったのか、いまI期から出ている。自分のブログで調べたら、いわゆる『瀟湘八景図巻』(京博、根津美術館などが所蔵している)とは違う作品であるらしい。

 第1展示室には、金閣寺の夕佳亭を模した茶室があるのだが、その床の間になんだか気になる軸が掛かっていた。中央の小さな四角形は『平治物語絵詞』残欠(断簡)(相国寺所蔵)である。子どもがクレヨンで描いたみたいに鮮やかな色彩。ぎゅうぎゅう詰めの騎馬武者の中央にいるのは平清盛だ。これ、どこかで(画像を?)見たことがあると思ったが、リストには初公開のマークがついていた。それにしてもせっかくの初公開なのに、観客からかなり距離のある床の間に掛けるなんてひどい。

【注:このときの事実誤認と訂正については、2022/9/27再訪の記事を参照のこと】

 朝鮮通信使関係の資料や明・永楽帝の勅書も展示されていた。徽宗皇帝筆『白鷹図』は、まあそう思って眺めるのも一興だろう。「金渡(かねわたし)の墨蹟」は平重盛が寧波の育王山(阿育王寺)に黄金を送って「我が後世を弔わせよ」と命じたことに由来する。育王山、私は行ったかなあ。行けなかったんだったかなあ。

京都市考古資料館 特別展示『考古資料とマンガで見る呪術-魔界都市京都-展』(2022年7月14日~11月20日)

 墨書人面土器・人面板・人形・土馬など、平安時代から江戸時代の呪術に関わる多様な出土遺物を展示。ミニ展示(無料)だが面白かった。なお、京都国際マンガミュージアムで関連展示が行われている。

龍谷ミュージアム 企画展『のぞいてみられぇ!"あの世"の美術-岡山・宗教美術の名宝III-』(2022年7月16日~ 8月21日)

 龍谷ミュージアムが、なぜそんなに岡山にこだわるのか分かっていなかったが、法然さんが岡山(美作国)生まれと知って、やっと謎が解けた。本展は、岡山県立博物館所蔵の『法然上人伝法絵』(鎌倉時代)のほか、岡山県下の浄土美術をクローズアップする。また、瀬戸内市の下笠加は、江戸時代には熊野比丘尼集団の拠点となっており、複数の『熊野観心十界曼荼羅』が伝わっている。描写が的確なものもあれば、ちょっと素朴絵ふうのもの(西大寺所蔵)もあって、見比べるのが面白かった。

補陀落山 六波羅蜜寺(京都市東山区)

 最後に六波羅蜜寺へ。今年5月に新しい宝物館がオープンしたはずなので見に来た。本堂左手の受付で拝観料を払うと「振り返ってまっすぐ進んで、左に曲がってください」と道順を案内される。言われたとおり、弁天堂の前を左に曲がると、奥まったところに「令和館」の看板が出ていた。

※参考:「空也上人立像など重文ずらり 京都・六波羅蜜寺、新収蔵庫を公開」(朝日新聞デジタル記事 2022/5/21)

 1階には、吉祥天立像、弘法大師坐像。奥に薬師如来坐像と四天王。2階に上がるとすぐ空也上人像、隣に平清盛坐像。奥に慶派の地蔵菩薩坐像、運慶坐像、湛慶坐像。そして閻魔大王・司録・司命・奪衣婆像、定朝様式の地蔵菩薩立像。実に指折りの名品ばかりだが、逆に「名品」でないものは片づけられて、むかしの「ゆるい」雰囲気はなくなった。井伊直政像も仕舞われていた。

 本堂にも上がって参拝。秘仏ご本像のお厨子の前には、大の字のかたちをした燈明台が置かれていた。六波羅蜜寺の萬燈会は8月8~10日とのこと。一度来てみたいものだ。それから、本堂外陣の右隅の暗がりに夜叉神がいらっしゃるのを確認した。東博の『空也上人と六波羅蜜寺』で拝見して、え?と驚いたものだ。何度も参拝している本堂なのに、初めて気づいた。


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平治物語絵詞断簡について (鴨脚)
2022-08-28 21:47:42
いつも楽しく拝読させていただいております。
この絵は、私の師匠の受け売りですが、昭和18年に金沢の旧家から出た「六波羅合戦巻」の残欠14枚(画帖1帖)のうちの1枚だと思われます。発見後分割され、東京国立博物館、アメリカ個人蔵、大和文華館等に所蔵されるもののうちの1枚でかもしれません。原本が損傷したらしく鑑賞に堪えられる部分を切り取った(中にはニ場面を巧みに繋いだとか。)ことが摸本(東京国立博物館蔵他)によって確認されます(他に原本の詞書断簡が数行あるとの事です)。承天閣美術館のものは、恐らく前田青邨先生がお持ちだったものではないかと思いますが、相国寺にあるのですね。かなり前にNHKで個人蔵の断簡をお持ちの方が何人か紹介されていたのですが、ビデオテープが破損してしまいもうわからないのが残念です。
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平治物語絵詞断簡について(追加) (鴨脚)
2022-08-29 09:39:25
私も画面の真ん中に「清盛」という小札がある断簡を見た記憶があるので、家にあるカタログを片っ端から見ていったところ、1974年10月の『特別展 絵巻』(東京国立博物館)で出品(個人蔵)されていました。小さな断片だったので覚えていたようです。なお、分割した際に前田青邨先生の他、安田靭彦、小林古径、安井曽太郎の各先生がお買いになられたと聞き及んでおります。
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平治物語絵詞断簡について<訂正と追加> (鴨脚)
2022-08-29 10:00:58
申し訳ありません。この六波羅合戦巻の断簡は、東京国立博物館には、所蔵していないようです。
ネットで検索したところ、MIHO MUSEUM、アーディソン美術館にも断簡を所蔵しているようです。なので14枚中、5枚は美術館等が所蔵しています。なお早稲田大学には、彩色した摸本の画像が公開されていますが、残念ながら原本から模写ではないようです。
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御礼 (jchz)
2022-08-29 20:31:23
鴨脚さま、いつも詳しい情報をありがとうございます。まさに「画面の真ん中に『清盛』という小札がある断簡」です。床の間が遠くてはっきり見えませんでしたが、そう確信しています。
いろいろ調べていたら、Youtubeで「国宝『平治物語絵詞』の探訪とデジタル復元」という動画を見つけました。
https://www.youtube.com/watch?v=ymTKg46bkaQ
この38:40あたりに、私の見た断簡と思しきものが登場します。ちょっと色合いの印象が異なるのは、本物ではなく番組内で色付けしているせいではないかと思います。むしろ51:22あたりの画像(デジタル複製絵巻の完成版)のほうが本物の断簡に近い気がします。
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御礼と訂正 (鴨脚)
2022-08-30 11:05:33
Youtubeで「国宝『平治物語絵詞』の紹介ありがとうございました。
これを見て相国寺の断簡は、場面が違うことに気が付きました。このビデオを元に現在の断簡の所蔵状況を別に作成してみましたので、御笑覧ください。なお、2004年閉館した萬野美術館の国宝・重要文化財を含む約200点は、相国寺承天閣美術館に寄贈したとのことです。
ただしすべてのコレクションではないそうなので、③が含まれるかは不明です。
存在が確認されていない断簡が2点ありますが、戦中だったので空襲などで焼失していないか心配です。
なお、断簡は鑑賞に堪えるように補筆、塗りつぶしが多いので注意が必要です。また東博摸本は、断簡と明らかに写し間違いがあるので、原本から移したものとは言えないようです。
それにしても相国寺さんはいけすですなあ。
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六波羅合戦巻断簡の所蔵状況 (鴨脚)
2022-08-30 11:07:12
第一段
①清盛の出陣に従う武者たち 個人<A>
②清盛邸に攻め込む義平兵たちを迎え撃つ平家軍 安井曽太郎→個人<B>→アーティゾン美術館
③④の直前の画面 萬野美術館→相国寺?
④清盛の出撃 前田青邨→萬野美術館→相国寺

第二段
⑤鎌田正清の諫言 小林古径→個人<B>

第三段
⑥義朝軍を追撃する清盛軍たち MOA美術館
⑦⑥の下部分 MIHO MUSEUM<B>
⑧決戦に向かう清盛の軍勢 個人<A>
⑨⑧に続く場面。(画面斜め右下の屋根は、第四段の門の屋根を繋合) 不明
⑩三条河原の死闘 アメリカ個人
⑪武者の髻を掴んで首を落とそうとする乱闘場面 不明
⑫敗走する義朝と金王丸主従 大和文華館<B>

第四段
⑬信頼邸の門前の武者たち 安田靭彦→個人蔵
⑭⑬の左隣の場面、歩兵1名 安田靭彦→個人蔵

註<出品暦>
A.『特別展 絵巻』(東京国立博物館 1974)
B.『名画を切り、名器を継ぐ』(根津美術館 2014)
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重ねて御礼 (jchz)
2022-08-30 21:39:03
鴨脚さま、
分かりやすい整理をありがとうございました。Youtubeの動画も、あらためて見直してみました。今後は『平治物語絵詞』断簡について疑問を感じたら、ここを見にこようと思います。

それにしても、私が見たのはほんとに④だったのか、できればもう一回確かめに行きたいと思い始めており、9月のカレンダーを見ながら検討中です(そのときは双眼鏡を持っていきます)。
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