見もの・読みもの日記

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熱血少年マンガと見せかけて/中華ドラマ『虎鶴妖師録』

2023-10-22 22:15:05 | 見たもの(Webサイト・TV)

〇『虎鶴妖師録』全36集(愛奇藝、2023年)

 試しに見てみたら面白くて、けっこうハマってしまった。原作は中国の少年マンガだという。調べたら2013年に始まり現在も連載中(雑誌ではなくネットで)というから長い。はじめ物語がどこに着地するのかよく分からなかったり、やたら登場人物が多いのも、そういう事情を知っていると納得できる。「熱血少年マンガ」というのが売り文句だが、実は登場人物がどんどん死んでいく冷血無比の展開で、かなりつらい。しかしどの登場人物も大事に扱われていて、それぞれ見せ場があるのは好ましかった。

 500年前、海の彼方の大陸に「妖」(異類のものたち)が現れ、人々に災いを為していた。伝説によれば、正義の士である祁無極が巔峰谷に住む妖帝を斬り殺したが、妖帝の血が死の海・冥海を生み出した。以来、伏龍国は海岸に聖なる赤珠を祀り、冥海による浸食を食い止めていたが、あるとき、その赤珠のひとつが破壊されてしまう。

 伏龍国の妖師(妖と戦い、人々を守る戦士)祁暁軒は、新しい赤珠を求める旅に派遣される。その途中で出会ったのは、こそ泥稼業の孤児の虎子と、長槍の使い手で男装女子の趙馨彤。虎子は誤って赤珠を吞み込んでしまう。その赤珠を取り出すため、祁暁軒らは一眉仙子という女流の仙術使いを訪ねる。無事に赤珠は取り出したものの、虎子の母親は九尾の虎妖であり、彼の体には虎妖の尾一本が埋め込まれていることが分かる。一眉は、妖尾の暴走を鎮めるため、虎子に金剛橛(金剛杵)を授ける。

 伏龍国にやってきた虎子と趙馨彤は、国御妖師の選抜試験を受けることになり、千羽国から来た王羽千など、受験生たちと親交を深める。しかし最終試験で合格を勝ち取りかけた虎子を、冷酷に突き落としたのは祁暁軒だった。実は、祁家には500年前からある呪いがかけられていた。祁家の子女は1つの身体に2つの元神(人格)を持って生まれ、成長の過程でどちらかを選ばなければならなかった。現在の暁軒(乾)はもうひとりの自分(炎)を封印していたが、なぜか炎がよみがえり、逆に乾を別の世界に封印したのである。裏で糸を引いていたのは一眉だった。

 一眉は炎を連れて冥海を渡り、巔峰谷に飛ぶ。虎子、趙馨彤、王羽千らは、暁軒の身体を取り戻し、荒れ狂う冥海を鎮めるため、伏龍国・千羽国・巨輪国の勇士たちとともに巔峰谷に渡る。そして、祁家の始祖である祁無極そのひとに会い、虎子の母の白虎にも会って、500年前のできごとの真実を知る。

 【ネタバレ】を簡単に書いておくと、祁無極には無双という脚の悪い弟がいた。二人は仲のよい兄弟だったが、兄に裏切られたと誤解した無双は祁無極の身体を乗っ取って妖帝となり、祁家の子孫に「双生元神」の呪いをかける。しかし暁軒の身体を得た炎は、乾が苦しみながら生きていたことを知り、自らの存在を葬って身体を乾に返す。この自己犠牲によって呪いは消え去る。一眉は、妖帝・祁無極(無双)に強いられて、炎を巔峰谷に連れてきたのだが、彼女の正体は、夜箜鳴という女子が可愛がっていた布人形だった。巔峰谷に眠る亡き主人にただ一目会うために、一眉は多くの悪事と殺生を繰り返していたのである。

 本作では、いちおう虎子と馨彤は両想いカップルで、暁軒は序盤で花妖の牡丹姑娘と淡い思いを寄せ合う。だが強く印象に残るのは、一眉から夜箜鳴への一途な思慕や、祁無極・無双の骨がらみの兄弟愛である。他にも主従・親子・同志の間の、愛情・嫉妬・報復・許しなど、涙を誘う熱い関係がたくさん描かれていて、よくも悪くも人間世界を動かすのはこういう感情なんだな、と思った。

 戦いを終えて、序盤で憎らしかった成済年(劉耀元)が、巨輪国の女戦士を嫁に迎えて幸せになったのはちょっと嬉しかった。烏里丹がかつての仇敵を弔う姿には泣けた。虎子の蒋龍と趙馨彤の王玉雯は別の作品で知っていた俳優さんだが、どちらもよかった。蒋龍くん、今時の中国ドラマで求められるイケメン路線ではないのだけれど、そこが好き。祁暁軒の張凌赫と王羽千の陳宥維はこの作品で覚えた。張凌赫くん、ホワイト乾とブラック炎を丁寧に演じ分けていて、二人(一人二役)の対決シーンも引き込まれた。陳宥維くんは声がいいね。一眉仙子を演じた何藍逗さんは、幼げな丸顔にぼんやりした目鼻立ちで、キラキラした美人ではないのだけれど、布人形が生命を得たという設定に納得感があり、激しい立ち回りもカッコよかった。


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